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ご当地ヒーローになった俺が異世界で無双してウハウハな件  作者: 拝 印篭
聖王都到着編 オークションと御褒美の日々
22/42

19th 「ふたりはぶち凶悪!?」

 ロサをようやく出発するその前に、テリーのいた孤児院に行って事情説明とともに、エルノスとテリーを聖王都に連れていく許可を取りに行った。孤児院を経営しているのは、以前アコが世話になったことがあった人だったとかで、話がやたら脱線ばかりしていたが、火事見舞いを含め、金貨二枚ほどの寄付をしたり、火事場で助けられた人がお礼を持ってきたり、テリーが居なくなると聞いて泣き出した小さな子をなだめたりと、結構大変だったんだ。


 それから、ランクが上がったので冒険者カードの更新があった。

 俺たちは、先のザンゲ公国の件と、今回の迷宮討伐、さらに、下町の火事消火の件、計三件の功績により、「抜群」の評価をいただき、一気にAランクになった。

 また、スー達「ゴーリガンガールズ」も、一気にCランクになった。これは、俺達「プロジェクトG」と一緒の仕事を請け負うことが出来るようにとの配慮もあるが、仕事としても、迷宮討伐、下町の消火活動の他に、「三悪」の件で素晴らしい事務処理をしてくれた事へのギルド員たちの感謝もあり、俺達同様「抜群」の評価を貰い、この昇格は満場一致で祝福されてのものとなった。


 こうして、大勢の人達に感謝され、惜しまれつつロサを後にしたが、懸案も残ったままである。


 その一つ、俺とアコ宛ての手紙の件、教皇選挙(コンクラーベ)への投票のための召喚状である。

「教皇選挙への投票権など、名誉の極みじゃありませんか♡」

 などとスーは言うが、正直、そんな生易しい物ではないと思う。

 実際、この投票権を巡りエルノスの誘拐事件にまで発展していたのだから。

 過去には、投票開始後の閉鎖された神殿宮(パラティウム ゲムマ)において、多数派切崩しの為に、虐殺事件が起こったこともあったそうだ。実際、決めるものは、世界で一番偉い人である。名目通り決まるなら、そもそも選挙なんていらないのである。

 とはいえ、当事者として、参加が決まってしまった以上は、なんとしても、無事に済ませたいものだ。まして、幼い子供まで召喚されているのである。無事是名馬ではないが、全員生きて帰ることが、取りあえず大目標である。


 今回の選挙に出馬する主な陣営は、


皇帝派  ウィリアム=フィエラ=ミェスク二世 今生皇帝 

(って、皇帝自ら出馬するとか、変だろ!)


教会派  ラトワンヌ=トロイエンヌ 

(前教皇の孫娘で現職の大司教。ただし、過去女性の教皇は現職の継承者であるジーン=キニスカヤ以外に二千年以上なし。今回も微妙)


 同   フランディック=ゴーディッシュ 

(筆頭教皇 ル=セッヅの秘蔵っ子。他の情報なし)


ギルド派 アルテウス=マリス=ミェスク 

(現皇帝の弟、以前ドメーヌが言ってたコレクター公爵の本名)


他、泡沫候補が約百名

その中に、エルノスの名前があった。


「エルノスを押している勢力があるらしいな。或いは、この間の連中はこの勢力かな?」

「さてねぇ。ところで、我らが押すべき御仁は、どちらさまかねぃ」

「まあ、ギルド派としては、皇帝の弟さんだろうな。ついでに、この人に伝手を作っとくと、オークション以外での大金貨の購入先になってくれるかもな」

「あたしとしては、ラトワンヌさんにも頑張ってほしいけどね。面識もあるし。ギルドにも、悪い影響はないと思うけど」

「問題は、この、ゴーディッシュかな。どういう人物か、皆目見当がつかん」

「今のところ勢力としては、誰が強いかねぃ」

「ま、皇帝は無いかな。毎回出てるみたいだけど、周りが絶対許さないだろうし」

「普通なら、教会派は強そうだけど、一番判らない人かぁ。ホントにラトワンヌさん、来ないかな?」

「ラトワンヌ様なら、ドメーヌ様のまた従妹になるはずですわ。スーとしましても、彼女に一票です♡」


 実際の投票の際は、一回目の足切りで泡沫候補の大多数が消え、そこから、得票数の九割以上を一人が独占するまで、再投票される。その際、候補者が、別の候補者に自分の得票数を全て献上することで、辞退することもできる。大体の場合は、二名ないし、三名程度が残り、決戦投票で、どちらかが譲る形で決着するのが常である。

「乙僕」のエルダー選挙のような形式といえば判りやすいだろうか?


 ただし、この世の全ての栄誉と権限を手に入れる選挙である。簡単に譲渡する筈も無く、投票者総がかりで説得する為、選挙が終わるまでは、たとえ何日かかっても、候補者も、投票者も、誰も投票所から外へは出られない。正に「根くらべ」である。


「一応聞いておくけど、エルノスは、本気で教皇狙ってみるか?」

「冗談ではないですよ。テリーのことだけでも頭痛いのに」

 その、テリーは、説明の途中で知恵熱でもでたのか、ダウンしている。ジュンと一緒に。

「ま、冗談はともかく、マスターからは、皇弟殿下を押してくれみたいな事は言われたけどな」

 普通は、教会派とギルド派が決戦投票するのが常らしい。


「いずれにしても、聖王都に着いてからの話だねぃ。それよりも、ちょっと、寄り道をしてもらいたいのだけどねぇ」

「朝日町か?」

「すぐにどうこうではないと思うけど、タイヤの張替えをしてもらっときたいしねぇ」

「一日分くらいの遠回りか……」


 この世界では、新品のタイヤはほぼ手に入らない。燃料以上に深刻な問題である。しかし、かつての「落ちもの様」の中に、タイヤの再生が出来る人がいる。

 彼の住む〝朝日町〟は、約八年前に、大規模転移災害によって、町ごと三万人の人が転移してきた地区であり、現在でも、教会と対決している独立地域である。そのため、町はまんま日本の一地方都市を防衛用の砦で囲ったような町である。


 そして、この町の特徴がもう一つ。「妖精に愛された土地」として有名で、町中にようせいさんが溢れているのだ。彼らは、見たことの無い技術が大好きで、日本のあらゆる産業や技術を身に付けようと、毎日人々のお手伝いをしているのである。現代日本の光景と、ようせいさんの働く姿というある意味他の地域よりもファンタジックな光景に巡り合える異色の地域である。


「よし、朝日町に寄ろう。そこで、タイヤの件と、整備もお願いしよう」

「おやっさん、元気だといいねぇ」

「ゴーリーヴォーグの時は無茶聞いてもらったしな。やっと、まともな報酬払えるよ」

 ゴーリーヴォーグ、というか、後ろのキャンパーはここで手に入れたものである。それに伴ってレンジローバーのチューンもしてもらったのだが、流行に逆行するチューンの希望におやっさん、半ギレで仕事してくれたっけ。しかも、出世払い! ……門前払いされる気がしてきた。




 さて、朝日町に寄ると決めてから二日後、朝日町の防壁前にある関所に着いた俺達を見て、門番が

「あああっ! お前たち、三か月前に大騒ぎ起こしたバカップル!」

 と、言いだした。失礼な奴め。

 しかし、あの時の事を覚えているとなると、やっかいだなぁ。っていうか、

「おいっ! あの時大騒ぎ起こしたのは、〝三悪〟であって、俺達じゃねぇ!」

「やかましい! 爆弾だのビームだの散々ばらまいておいて、それが、堅気の人間のやることか!?」

 くっ! こいつ、日本の常識で今も生きてるタイプか? 

「取り敢えず、知人の所を訪ねるだけなんで、通してはいただけませんか?」

 と、スーが助け船を出してくれると、

「サー イエッサー!」

 と、簡単に通ることが出来てしまった。奴め、ロリコンか。

「バカっぽーだって。えへへ♡」

 アコよ、にやけてる場合か?

 いずれにせよ、通行許可が下りたので、ゴーリーヴォーグを町中に入れる。

 程なくして、古い車やらが積みあがっているストックヤードが見えてきた。

 奥の方には、二階建てのトタン屋根が見える。シャッター前につなぎ姿の中年男が煙草を吸っているのが見えた。おやっさんだ。あ、手振ってる。建物前で車を止めると、待ちきれないのか、近寄ってきた。

「よう! 久しぶりだな。レンジの調子はどうだ?」

「御無沙汰してます。今日は、タイヤの張替えと、点検整備お願いしたいんですが」

「ほう! 張替えが必要なくらい走ったのか。結構、結構。おいっ! 野郎ども! 作業の準備だ!」

 そう、後ろに向かって吠えると、

「「「あいさー」」」 「「「あいさー」」」 「「「あいさー」」」

 と、顔だけを覗かせていたようせいさんが、一斉に動き出した。

「……また、増えましたねぇ」

「ああ、今二十三人いる。こいつら、覚えは早いし、飯は食わせなくていいし、助かってるよ」

「人間、出る幕ないですね」

「まあ、頭の俺だけ居れば十分だわなぁ。ところで、頼みがあるんだが」

「何です? 大概の事なら、出来る限り協力しますよ」

「じゃあ、お前とアコちゃんの最凶カップルを見込んで、町長どもを一発シメて貰いたいんだよ」

 え? 荒事!?


 次回予告


「大変だ! エルノス!」

「うわっ! なんだよテリー。藪から棒に」

「おれが知恵熱で倒れている間に違う町だ!」

(そりゃ、ゴーリーヴォーグは動いてるからな)

「話の前後からして、プチ凶悪なのは、おれとエルノスだったはずなんだ!」

「そうかなぁ~?」

「出番を取られたんだぞぉぉぉぉっ!」

「おまえ、フッカー卿と神官様に勝てるとでも?」

「ふふふ、テリーちゃん。また、言葉が乱れてますわよ?」

 次回 「ふたりはぶち凶悪 MAXはーど」

「さあ、言葉遣いの授業の時間ですわよ」ごごごご

「「ひー! 怖いっす! ロッテンマイヤーさん!」」

「ろって……誰?」

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