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14th 「三悪再来」

 坊ちゃんこと、エルノス少年は、目的を果たし、ギルドを後にした。

 本当は、自分も連れて行って欲しいと頼んだのだが、流石に訓練を受けていない素人を連れていくことは出来ないと、きっぱりと断られたので、後ろ髪を引かれる思いではあったが引き下がったのだ。

 町中を歩いていると、突然、子供たちの集団に鞄をひったくられた。例の大金貨が入った鞄である。

 慌てて追いかけるも、どんどんと離されるばかりでとても追いつけない。

 エルノスは、諦めたかのように歩き出すと、まるで知っているかのように裏道を何本も経由してとある建物の裏庭にやってきた。

 そこには、何人かの少年、少女たちがたむろしていた。

「やっぱり、君か。テリー」

 浅黒い肌の少年が、ひったくられたはずの鞄を持って待っていた。

「金貨が減っているってことは、守備は上々ということか? エルノス」

「ああ、聞いてくれ。なんと、あのフッカー卿が引き受けてくれたんだ」

 ヒュー♪ と、口笛を吹くテリーと呼ばれた少年は、仲間に合図すると、

「それで浮かれてたわけか。お前、もうちょっとで裏町の大人共に誘拐される所だったんだぞ」

「なんだって?」

「お前がギルド前で騒いでるって噂がたった頃から、大人たちの中でお前を攫って連れてくるよう依頼を出されたって教えてあったよな」

「ああ、忘れてた」

「ったく、今日は本当に危なかったんだぞ! 次のブロックに待ち伏せしてる奴らがいたし、別件だけど、やばい三人組が帰ってきてたんだからな」

「やばい三人組?」

「例のいかれた落ちもの様三人組だよ」

「げ!」

「幸い、あいつら迷宮の方に行ったらしいけどな」

「それって、フッカー卿たち危ないんじゃ?」

「流石に多勢に無勢じゃないのか? 11人もいるんだろ?」

「でも、大体女の子だぞ!」

「あの、ロリコン相手にか?」

「「う~ん」」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 唸っていると、地面が揺れた。まさか……





 四階層に辿り着いたとたん、迷宮が揺れた。

「気を付けろ! 迷宮の羽化が始まりそうだ!」

 俺の言葉で、みんなの間に緊張がはしる。

 幸い、このサイズの迷宮が羽化するにしても、あと、一日、二日程度の余裕はあるはずである。

 しかし、88階層の迷宮である。羽化したベヒモスのサイズの方も規格外であろう。恐らく、350m級の大型獣となるはずだ。そうなれば、坊ちゃんが言ってたように六都市全部が危ない。何としても、羽化前に喰い止めねば。




 この先に、五階層に続く階段があるはずだ。そう思った処で、思わぬ奴らに出くわした。待ち伏せのつもりかっ?

「いよぅ、白堡 千糸。ここであったが」

「百年目だぁぁぁぁっ!」

 ドッヅランサーを引き寄せながら俺は狂咲 喜死朗に突撃する。

「「「えええっ! いつもと逆だあぁぁぁっ!」」」

 三人とも驚いてやがる。知らんがな。

「てめぇらぁぁぁっ、よくもよくもぉぉぉっ! 俺達の個人情報を売ってくれたなぁぁぁっ!」

「こぉぉのBBAぁぁぁっ! いつもいつも、爆弾投げつけてきやがってぇぇぇっ!」

「汚いポーズばっかみせるなあああぁぁぁっ! このだるまぁぁぁっ!」

 アコとヒロシも便乗してそれぞれ攻撃を開始した。よし、先手とれた。

「「「ばれてぇぇぇぇら!」」」

 泡を喰って防戦する喜死朗たちに、俺は嫁たちに聞こえないよう細心の注意をしながら、

「てめぇらのせいで、俺はあの子ら七人を嫁にするはめになったんだぞぉぉっ! 俺の独身生活を返せぇぇぇっ!」

「な、なんだとぉぉぉっ!」

 叫ぶと、Orzのポーズを取り、

「するってぇと、俺っちがあの娘らとお前のキューピットかぁぁっ? 俺が余計な事言っちまったせいか?」

 超本気で凹んでる。


「あ~あ、ああなっちまうと当分使えないね~」

「んむはぁー、と、いうことは、白堡の、あの娘たちと既に……」

「はいっ。みんな、とっても優しく教えていただきました♡」

 スー、余計な事をいうなぁぁっ!

「があぁぁぁぁぁん!」

 いや、自分でガーンって。

「てめぇぇぇぇっ! 散々いい思いしといて俺様を責めるとはぁぁぁっ! 許さん!」

 げ、立ち直った! 奴め、今日は二刀かよ! スラリと抜いた二刀を同時に撃ちつけてくる!

「どうだぁ、生まれ変わった〝浦斬り+2〟と、新兵器〝妖刀 極楽蝶〟の威力はぁぁぁっ!」

 キン、キン、と、つばぜり合いしているが、刀を削れる手ごたえがない。

「無駄無DAMダムだ無駄無駄だぁぁぁぁっ! 魔法でコーティングした二刀だぜぇぇっ!」

 なんだとぉぉぉっ! ならば、ビームキャリバーで狙い撃つ! 

 バシュッ、バシュッとレーザービームの雨あられに撃たれて、さしもの喜死朗も、慌てて避ける。

「てめ、こら、この、避けるな!」

「避けるだろー、てめ、撃つな、こら、いやん」

 ギャース、ギャース、となじり合う俺たちを見て疑惑の目が八つ。


「なんででござろう? 今日は、えらく子供の喧嘩っぽいでゴザルな」

「……恐らく、引っ込みがつかないだけとは思うけど?」


「今までが素敵でしたのに、なにか残念なものを見せられているようですわ」と、ドン引きのブーケ

「さ、流石にこれはないかなー」と、汗ジトのチヨ

「でも、これはこれで、可愛いかと♡」と、不動心のスー

「ふふふ、殿方の子供っぽいところこそ、大好物ですわ。じゅる」と、よだれを垂らしたミナミ

「さ、さすがはミナミ。悪食だ」と、引きぎみのジュン

「え~? かわいいのに~」と、いつもどうりのアナ


 や、やばいっ! 亭主の尊厳が! 


 そうするうちに、またしても迷宮が揺れた。

「……ちょっと待って。今回はちょっと大きい」

 アイナが注意を促してくれたが、時既に遅し。なんと、床が崩落した!


「「「「「「「「きゃぁぁぁぁっ」」」」」」」」

「「「おーたーすーけー」」」

「ぐぅぅぅっ! こなくそぉぉぉっ」

「粉末うんこ?」

「おちるねぇーっ!」


「……アヤメが!」

 やばいっ! 俺たちは、一階層下に落ちただけだが、アヤメだけは更に下まで落ちていく

「アヤメぇぇぇっ!」


「なんの! 忍法、岩石雪崩渡りの術ぅぅぅ!」

「な、なんとぉぉぉっ」

 全員口あんぐり。アヤメの奴、崩落する岩を踏み台に次々飛び跳ねて上がってくる。

 物理法則どうした! とか、もうどーでもいいわ。

 なんとか、無事俺たちの元へ帰ってきたアヤメに対し、リスペクトと共に、

「アヤメって、本当に本物の根来忍者だったんだなぁ」

 と、しみじみというと、

「えええっ! 今まで信じてなかったでゴザルかぁぁぁっ!」

 と、驚かれた。

 ※根来忍軍の技、忍法 岩石雪崩渡りの術については、白泉○のコミック「パ○リロ」を参照のこと。


 ふう、俺達は、何とか立て直し無傷である。

 嫁たちも、大事ないようだ。


「あいてててっ、よくもよくもぉぉぉっ」

「いたた、なんだい、なんだい」

「ん? むはー。痛くなーい?」

 くそう、三バカは無傷か。

 しゅたっ!

 剛力 殺女の首筋にアイナがナイフを突きつけた。

「……お前たち、愚かすぎる。迷宮が羽化したら、町ごと全滅する。巻き込まれて死にたいのか?」

「えええっ! お助けーっ!」

「……助けて欲しくば、我々に協力せよ。不可様の個人情報を売った件、それでチャラにする」

「こ、断ったら?」

「斬る」

 そこだけは、躊躇なしに断言した。ほんとに殺る気だ!

「わ、わ、分かった! 分かったから、おたすけぇぇぇぇっ!」

 ふん! と、ナイフを引くと、手のひらを剛力の額に当て、展開した魔法陣をぶつける。

「……これで、この迷宮を出るまでは私たちに危害を加えられない。もしも逆らったら体内の血が沸騰する。一瞬で死ねるぞ。試してみるか?」

「わ、わかった。あんたらも、わかったね!」

 こくこく肯くおっさん二名。

 ひえええっ怖っ! もう、誰もアイナ様には逆らいません。後ろでスーたちも、がくぶる震えてる。




 こうして、三悪を加えた俺達は、六階層から、ワープゲートを通り、40階層まで一気に下りてきた。

 さて、この後どうなることやら。


 次回予告


「ちくしょう! おっかない娘っ子だねぇ。あんたらも、今日の処は逆らわないようにしとくれよ」

「くっそぉぉっ! 悔しいです! ホントに呪いを受けたんですか? 姐御!」

「ふんっ! まず、間違いなく強力な呪いだ」

「くぅぅぅぅっ! 神は死んだのかぁぁぁぁっ!」

 次回 「呉越同舟 仲悪し」

「もう、神の声は聞こえない」




「あ、神様があんたらに神託だって」

「ケッ! なんだよ、神官様よー」

『ここは、空気を読んでシッカリ務め上げるように。逆らったり、失敗したら、おしおきだべぇ~』

「ま、まさか、その神様のお名前は?」

「滝○順ぺ」

「「「まさかの本物() 降臨!?」」」

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