表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/42

11th 「ロサの涙」 Aパート

 

 マカンの町を出発して一週間。ついに、「自由都市国家群」は、ロサの町に到着した。したのだが、以前俺がいた頃とは様子が全く違っている。


 なんというか、すごいことになっている。

「ロサ名物ドメーヌ饅頭、うまいよ」「ロサに来たら、これ買わなきゃ。銘菓ドメーヌの涙」

「ドメーヌせんべい」「ドメーヌ羊羹」「ドメーヌ栗最中」「ドメーヌお好み焼き」「ドメーヌ金時」

etc、etc。


 あれ? たしか、半年ほど前に俺が来た時は、こんなことにはなっていなかった筈だ。

 あの事件は一年前。たしか、ドメーヌ云々という話は、一般人相手にはオフレコだった筈で、俺が来た半年前の時点では、事件のことを知らない人の方が多かった。

 それから半年でコレか。

 これは、教会の差し金かな? 突っ込み所は山ほどあるが、いずれにせよ、俺たちは、冒険者ギルドへ寄り、迷宮入場の手続きをしなければいけない。とりあえず、スルーして先を急ぐ。

 ……すでに買い食いしてる奴がいた。

「アコ! 後にしてくれ」




 冒険者ギルドは、重厚な建物を数種類の植物で飾った小洒落た雰囲気のままだった。ああ、おばちゃんも元気なんだなぁと、少しだけホッとして、扉を開けると、かつての俺を助けてくれた面々が、当時と変わらずに働いていた。

「いらっしゃいませ。って、ああら、あんた! フッカーちゃん。どうしたの? 一体!」

「相変わらずだな、おばちゃん。マスターと話がしたいんだが、居るかい?」

 そう言って、カウンターの中を見渡すと、いたいた。坊主頭に顎鬚のおっさん。

 十人中十人がギルドマスターしか職業が浮かばないと言いそうないかつい男だ。

「俺がどうしたって? うぉっ! おまえ、フッカーか! よく来てくれた。おおっ! シスターにひょろいのまで、一体どうした風のふきまわしだ?」

「依頼の途中で寄ったんだよ。そんで、ちょっと訳ありの連中を〝迷宮〟で鍛えてみたくってさ」

「訳ありの連中?」

 俺の後ろに控えている嫁たちが目に入ったようだ。

「べっぴんさんばかりじゃないか。お前のヨメか?」

と、言われると冷や汗がだらだらだらだらと

「おいおい、冗談のつもりだったんだが、マジか?」

「んまぁ、お嫁さん連れてきてくれたの? うれしいわぁ。あの、フッカーちゃんがねぇ」

 ここは、公式な用事ということにした方がいいかな?

「今、俺達はアルカン領主に雇われてる身で、この娘たちは、アルカン の幹部や幹部候補生だ!」

 あえて、私的部分ははぐらかすと、後ろから嫁のプレッシャーが……

「アルカン ってことは、聖女様の秘蔵っ子かよ。おまえ、えらい仕事引き受けてんだなぁ」

「そうそう、その、聖女様の件だが、町の様子が変わっちまったのはどうした訳だ? いつの間に教会はあの事件を公にしたんだ?」

「三か月ほど前かな。聖女様が襲爵して、アルカン に行くことが決まった時から、情報が解禁されてなぁ。こんな事件があって、我々の生活が風前の灯火だったって、教会の神父たちがあること、ないこと市民に吹き込みだしてなぁ」

 ふーん、つまりは、アコの時と一緒か。逆に安心したな。

「と、いうことは、商売してる連中は?」

「ああ、神父や司祭の家族や息がかかった商人たちだけだ」

 生臭坊主共め。

「とりあえず、詳しい話は、奥に行ってからにしよう」

 よく見るとカウンターが詰まってるな。人数も人数だし、お言葉に甘えるか。




「改めて、ようこそ、ロサの冒険者ギルドへ。俺がここのギルドマスターのゴルド=アリーニンだ」

「俺たち三人は知ってるからいいとして、こっちの娘が、一行のまとめ役で、アルカンの一等書記官で領主様の腹心だ」

「スカーレット=ディガー=コオリヤクでございます。どうぞ、お見知りおきを」

 にぱぁっ、といつものステキな笑顔で自己紹介してくれた。嫁として。

「やっぱり嫁じゃないか、このヤロー! どこのモテモテ王国だ!」

「陰謀なんじゃよー!」

「で、他の娘さんたちは?」

 それぞれ自己紹介する。もちろん、俺の嫁として。あ、アイナちゃんは、ヒロシの嫁としてだが。

「いったい、何人囲えば気が済むんだよお前は~」

 頭ぐりぐりされてる。いたいいたい!

「陰謀なんじゃよー! 領主様の陰謀なんじゃよー!」

 うわーん! 誰かたすけてー。

「マスター! フッカーちゃんをいじめないの!」

 お茶を持ってきたおばちゃんに助けられた。女神様はここにいたんだー。




「それで、本題なんだけど」

 陰謀呼ばわりしたせいで不機嫌な嫁~ズをなだめながら、切り出そうとしたら、

「ちょっと、待ってくれ。その前に最近の迷宮の事情を説明させてほしい」

 と、言われた。

「じつは、最近迷宮内の魔物が狂暴化している。数も段々増えてきているらしい」

「なんだと?」

「帰ってきた冒険者たちからいくつも同じ報告を受けている。ここ数日のことだが、明らかに通常の階層よりも強い魔物が出現しているらしい」

 やべぇな。予定は中止した方がいいかな?

「そこで、プロジェクトG にギルドからの指名依頼だ。ロサの迷宮を〝討伐〟してほしい。この地に迷宮ができてから二十二年。そろそろ、羽化を遅らせる手段も限界に近づいてきているはずだ。幸いお前さんたちには、ビームキャリバーっていう迷宮内の魔物に滅法強い武器がある。既に何組かのチームを派遣しているが、国の連中が非協力的でな。どうか、助けてほしい。頼む」

 そう言って頭を下げるマスターに

「それで、依頼料は?」

 と聞くと、

「受けてもらった時点で、一人金貨五枚。成功報酬が金貨十枚。迷宮内で討伐した分は、別途支給する」

 そいつは剛毅だな。

「問題は、コアの回収だが、国に掛け合ってはいるんだが、現時点では通常通り、あれを傷つけたら〝死刑〟だからなぁ」

「コアを持って帰って換金できるなら、いくらでも仕事したい奴はいるだろうに」

 うーん、と唸る俺たち。


 その時、外から子供の声が聞こえてきた。

「迷宮 に潜って仕事をする冒険者に依頼をしたい。私の頼みを聞いてくれる勇者はいないか?」

 かなり、大声でがなっているので、ここまで聞こえるのだが、

「あのガキ! またかよ」

 と、言ってマスターは外へ出ていった。


 ややあって、一人の子供を吊り下げたマスターが戻ってきた。

「はーなーせーっ! 無礼者ぉー」

「頼むから、静かにしてくださいよ。坊ちゃん」

 あのマスターが敬語? 余程身分の高い家の子か?

 年の頃は、十歳くらいか?

「ぼく、お姉さんたちに、お話聞かせてくれないかしら」

 これを言ったのは、なんと、アコである。ああ、神官モードね。

「ああっ! 貴女は、異界より来訪された神官さま!」

 よく知ってんな。

「ああっ! 異界のプロフェッサーまで! すると、こちらにおわすのは」

 ヤベ、俺のことも知ってるのか?

「やっぱり! ロサの迷宮を単独で制覇したフッカー卿! 〝黒の勇者 聖ゴーリガン〟まで!」

 ええっ!? と、俺の顔をガン見する嫁一同。

 あちゃー。

 次回予告


 ばれた。ぼっちだったのが、嫁にばれた。

 いや、そこは本当はどうでもいいんだが。

 それにしても、この坊ちゃん、何を依頼したいのか?

 どうする、どうなる、迷宮探索


 次回 「ロサの涙」 Bパート

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ