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8th 「三悪襲来」

 あれから三日。ようやく、俺の精神も安定してきて、皆とも少しだけ家族になった自覚がでてきた。

 旅のほうは、まぁ順調である。


 この大陸「ルベル=テッラ」の形は、通称「巨人の掌」と呼ばれていて、中央の手のひら部分に手相のように主要幹線道路が何本も走っている。俺たちがいた「アルカン」は、東南地域の薬指の付け根あたりにある。かつての「ザンゲ公国」は、小指の付け根部分だ。もう少し指先方面へ向かうと、険しい山間部となり、人の生息域ではなくなる。


 かつては離れていた中指、薬指、小指に当たる半島は、長年の変動により、一つにくっつき、その衝突部分が山脈となった。三指連峰である。標高は、俺たちの世界のエベレストなんか山じゃねーよ!って位高いらしく、一説には標高一万五千メートル級の連山であるという人もいる。これが、この世界の最高峰かというと、さにあらず、神聖帝国のある親指の付け根部分から親指を登っていくところに二万メートル級の連山がある。しかも、こちらには、国があって、人が住んでいるという話だ。


 ともあれ、俺たちは、街道沿いに「アルカン」のある薬指街道から、手のひらの真ん中あたりにある、「自由都市国家群」を目指し、そこから北上して、「パーパス神聖帝国」の首都「パラティウム ゲムマ」へと至る予定である。街道が整備されているおかげで、必要以上に揺れないし、道に迷うこともない。これらの街道は、神聖帝国が遠征のために作った軍道なので、それなりに幅も広く、ゴーリーヴォーグが走るのにも何ら障害がない、いい道路である。 

 これは、寝物語にスーさんから教えてもらった地理の知識で知った。こっちでは、地図なんてなかなか手にはいらないし、カーナビなんて役立たずの箱だからな。こういう時、受験勉強の鬼だったスーさんは頼りになる。


 しかし、車旅とはいえ、余分な荷物を背負った上、燃料のままならない中、旅を続けるのは、意外に時間がかかる。「魔水」自体は、大体東京で温泉施設を探す程度の頻度で、何とか入手できるのであるが。

 問題は、精製に掛かる時間が大体二十四時間。まる一日掛かることである。つまり、一日走って一日休んでというローテーションとなる。

 そう、あの結婚式 (と呼んでいいのならだが)の時も精製待ちで逃げ出すに逃げれなかったのだ。

 それで、周りで祝福してくれた人たちに、お菓子をふるまったり、酒盛りをしていたせいで、話が領主様のところまで届いてしまったらしい。わざわざ早馬まで使って、祝い状が届いたときは愕然とした。


 いずれにせよ、「自由都市国家群」まで約2500キロ、通常なら、十日位で走る計算だが、今回は、首都まで届ける大荷物がある。足が鈍っている。しかも、自動車初体験組が八人だ。初日、二日目は、大事をとって一日五~六時間しか、走ってない。三日目からは、少しペースを上げてきたが、燃料切れ寸前まで走るのが丁度いいくらいなので、結局二日で良くて500キロくらいの移動である。あと、一週間といったところか。これでも馬車なら一か月、徒歩なら三か月近くかかるので、早いことは早いのだが。


 ともあれ、本日は、町で宿泊することとなっていた。街道の交差点であるマカンの町である。薬指街道の終着地点。ここから、北へ行くとサムシングロイヤル領シュガーレイポートまで、南なら、ナニワ合衆国。西へは、俺達の通過する、「自由都市国家群」の各都市がある。

 今日は、ここで疲れを癒す予定である。


 しかし、トラブルは、招かざる客を連れてやってきた。

 

 あと、一時間程でマカンに到着するという所で、強烈な殺気を感じとった。足を止めて車外に出ると、アルカンに来る前に見知っていた顔を見つけてしまった。

 着流し姿に二本差し。頭に結わいた丁髷野郎。面倒な。

「よぉっ! 久しぶりじゃねぇか。白堡 千糸。ここであったが、こんにちは。首と胴体さよおなら、と行こうじゃないか!」

 そう、言っていきなり大太刀を抜いてきやがった。

「てめぇはぁっ!」

「そうさ、俺だ! 狂い咲きにて、死を朗らかに喜ぶと書いて、〝狂咲 喜死朗〟様だぁぁぁぁっ!」

 俺はアポートしたドッヅランサーで辛うじて受け止める。そのことがカンにさわったらしい。

「てめえぇぇっ、またか、またしても、ドリルかぁぁぁっ! 漢の決闘は刀対刀だって、あれほど言ってきかせたじゃねぇかぁぁぁぁっ!」

 付き合いきれるか。ドリルの回転を増やし、刀の腹を削り取ってくれる。

 白堡流の極意は、相手の嫌がることを徹底してやる事だ。刀が痛むことをやる事で、神経をささくれ立たせるのだ。どのみち技量は互角。あとは、いかにこういうことを積み重ねるかだ。だから、

「アヤメ! 手貸してくれ」

「承知!」

 以前は使えなかった手。古刀「豪快」と、その使い手アヤメの存在である。

「尋常の勝負に助っ人とは、この卑怯者!」

「嫁の力は主の力、でゴザルよ」

「何、だと?」

「! アヤメ、避けろ!」

 無拍子で脇差を使った抜刀術だ。大きく避けていなければ、腹を抉られていた。

「てめぇはぁ! こんなかわゆい娘と結婚しただとぉぉぉっ!」

 えらい所に喰いついてきた。そういや、こいつロリ……

 バシュン!

 ゴン! と奴の側頭部に水の塊が直撃する。

「ぉぉぉぉぉぉ」

 うん、いたいよなぁ。

 見ると、スーさんと、アナさんが、インパルスを支えて立っていた。

「貴様ぁぁぁっ、まだおにゃのこ隠してたなぁぁぁっ!」

 え、そっち?

「ふふん。仲間の居ない貴君の負けでござる。公務執行妨害で大人しく縛につくでござる」

 いや、こいつは、一人じゃない。

 どかん! と爆発。慌ててゴーリーヴォーグの方を見ると、間一発、アコが爆弾を蹴り飛ばしていた。

「おひさしぶりね。この脳筋娘」

 そう、問う女、盛り髪に着崩した着物姿。やっぱり居たか。

「剛力 殺女!」

「げ! 拙者と同じ名前でゴザルか?」

 心底嫌そうに言う。それも当然、それ位けばけばしい。

「某もおるぞ!」

 筋肉達磨が白衣を着た状態。説明終了。

(みなごろし) 煉獄(れんごく)!」

 ポージングを決めながら迫ってくる。可愛い嫁たちが怯えるだろう!

「……させない!」

 二刀のアイナが、前に立はだかる。

「まだ、かわいこちゃんがぁっ!」

「あれは、ヒロシのだ!」

「なにぃっ! あいつもかぁっ!」

 もう、目的とか絶対忘れてるだろ。あ、件のヒロシが出てきた。

「これを使えっ!」

 そういって、俺にゴーリガン変身ベルトを投げる。

「それを装着してアポートしろ。変身できるから!」

 普通アポートしても、手元に物がくるだけだ。変身は出来ない。

「そのベルト内に座標情報を入れた。多分、大丈夫だ」

 多分かよ。やってみるか。

「アポート!」

[X.OK Y.OK Z.OK 変身!]

 ベルトから声が出た。電子音だろうが、凝ってやがる。

 俺は光に包まれ、

 そして、

 変身した。成功だ。

「どうだ?うまくいったか?」

 問うヒロシに、

「股が、違和感ある」

「……成功」

「やった!」

 ヒロシとアイナちゃんがハイタッチ、というか、ヒロシがしゃがんでロータッチ?した。

 だから、股がね。うん、乗っておくか。

「天衣無縫!」かきぃーん「攻略不可!」しゃきーん「ご当地ヒーロー ゴーリガン!」どっかーん!

 ゴーグルの中にディスプレイがある。下の方にVer.3 と出ていた。

 股間をいじって調節する。うん、なおった。

「随分軽くなってんな」

 そう、軽い。今までの力を使うたびアシストがしていた悪さがなくなっている。

「今度はこっちから行くぞ! 喜死朗!」

 バビューン! 背中から推進力を感じる。ちょっとビビった。

「背面のエアベントシステムの応用でねぇ、推進力を得るラムジェットエンジンを仕込んでみたよ」

 流石にこれには奴もビックリしたようで、

「ぐ、ぐぅぅぅ、お、圧される、俺がぁぁぁっ!」

ドッヅランサーの回転と、俺の推進力をまともに受けやつの刃が欠けた。

「ぎぃやぁぁぁぁっ。俺様の大事な 〝浦斬り〟 がぁぁぁっ!」

 一気に下がると、他の二人に合図して、引き下がる。

「おぉぉぼぉぉえぇぇてぇぇろぉぉぉぉぉぉっ!」


 どうやら、去ったようだ。

「なんて,嫌な敵でござろう。勝手で、独り善がりで、人の言を聞かず、それでいて強い」

「あいつには、俺達のような、背負う武門も、決まった師も居なかった。ただ独学で俺と同じ処に立っている。正直、俺はあいつが怖い。出来ればやりたくない相手なんだよ」

「天才でござるか。まったく、厄介な」

「すまんな」

「主様が謝ることではござらん。あれは、〝災害〟でゴザル」


 ややあって、みんなが心配して出てきてくれた。嬉しいものだ。我ながら現金だと思うが。

 この光景を見てたら、奴ら、また煩かったろうな。


「さあ、残りあとわずか、マカンまで、急ぐぞ!」



 余談であるが、Ver.3の欠点が判明した。

 取り外しが面倒になっている。結局嫁全員でかかってやっと外れた時は暗くなってた。




 次回予告


「くっそう! よくも俺様の〝浦斬り〟をぉぉぉっ」

「しっかし、おぼこいのばっか一杯連れてあいつら、どこに向うんだろうね」

「ふんっ! それは、〝エロトピア〟どこかにあるこの世の楽園」

「「〝エロトピア〟?」」

「そこで、奴らは幸せに、淫らに暮らすつもりだろう」

「うぉぉぉっ! 行きてぇっ! 〝エロトピア〟いきてぇぇっ!」

「あんたら……」


 次回 「ゆきゆきて、エロトピア」


「「嘘だっっ!!」」

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