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うさぎとかめ

作者: ニケ
掲載日:2014/03/14

ウサオは空を見上げていた。星がキラキラと瞬き、美しい幻想的な空を彩っている。


ウサオのいるこの場所は動物たちのなかでも人気が高く、少し高台にある。この場所への道はひとつしかなくてウサオのようなうさぎや鹿や鳥たちにとってはすぐたどり着ける絶好のリラックススポットになっていた。


なにしてやがんだ。。!かめのやつ。


ウサオは一人空を見上げながら呟いた。


太陽が大きく傾いて周りを赤い光で包み込んでいる。このちょうど同じ風景を背中で受けながらウサオはかめと話をつけていた。


今のこの太陽の傾き具合を見ていると、かめと話をつけた刻限から、丸一日が経っているのだろう。ウサオはため息をつく。


今から一日前、博識な動物たちは昨日という、ウサオはあるかめと競走することを決めていた。


おい!かめ!俺と勝負しろ!いいか、ゴールはあの高台、ロマンチック日和だ。


ええ!!やりましょう!そんなに言うのなら、私も甲羅の中央部分を括ります!


ふん。覚悟を決めると口で言うのなら誰でもできる。それを行動で証明してもらおうか。


望むところです!


そうしてうさぎとかめは競走を始めたのである。しかし。。


ウサオがこの高台、ロマンチック日和でかめを待っているのだが、一向に来る気配がない。元々やさぐれていたウサオはさらにその他のものを圧倒するやさぐれ感を出していた。


ウサオのお腹の方から何かそわそわしたものがわき上がってくる。やがてそれは大きくなり無視できなくなってしまった。ウサオはおもむろに立ち上がった。


手足を伸ばして体操をしてみる。。。落ち着かない。腰を振って踊ってみる。。。落ち着かない。逆立ちをして腕立て伏せをしてみる。。。落ち着かない。


落ち着かない。。あーーー!!ウサオはたまらなくなって奇声を上げた。


もう待ってられねぇ。かめに文句を言ってやる!!


ウサオは地面を何度か踏み鳴らしたあと、元きた道の入り口を見つめた。


かめと競走を決めた滑走路である高台への道を逆走する。走り出したら止まらない。坂道だから余計止まらない。ウサオはどんどん駈けていった。


このコースを走っていればきっとかめに出会えるだろう。やつはどこを走っているのだろうか。逆走していくうちにウサオはすぐに出会えるだろうと思っていたが、走っても走ってもかめは現れない。もう高台への道の半分を越えてしまった。


な、なに!?やつはまだ現れないのか!!


ウサオはだんだん心配になってきた。あのかめは動物たちの間で真面目で優しいと評判だ。どんなに時間がかかっても決めたことはきちんと成し遂げる。地味で目立たないやつだが、そういった信頼は厚い。その時間がかかり過ぎる点と約束事を決めるまでの時間がかかり過ぎることがあのかめの欠点と言えば欠点だった。


俺にはないものだ。。。


ウサオは秘かにそのかめの粘り強さが好きだった。


ウサオは動物たちのなかでも、ウサオの家族のなかでも、素早いが最後までやった試しがない、というありがたくない評価を頂いている。作業をするスピードと技術は見込まれているのだが、約束事は守らない。守らないというより、途中でやる気がなくなりしなくなって結果投げ出してしまうのである。


やつはどこだ!?あのかめめ!!


しばらく逆走するとウサオにギャアギャアと騒いでいる声が聞こえてきた。


やめてください!!私は今、大切な競走をやっているのです!!


あのかめの声も聞こえる。いやがった!!


ウサオはかめに出会えたことと、かめが競走を続けていたことへの喜びがわき上がってくるのを感じた。かめの声が聞こえた方へと駈けていく。


やっとかめに出会えた。。。じーんとしたものがウサオのなかで駆け巡っている。かめはなんと!!人間の子供たちにいじめられているではないか!!


人間はウサオたち動物にとって大きく知能が高い生き物だ。子供と言えども力があり侮れない。しかし、ウサオは怯まなかった。


やめろ!!くらえ!!ラビットキーーーク!!


安易なネイミングだ。もはや誰も突っ込まない。


ウサオはかめを棒でいじめている子供のお腹めがけて体当たりをした。キックではない。体当たりだ!ボゴっ!!という鈍い音がしてその子供は倒れてゆく。


なんだ!このうさぎ!!邪魔すんじゃねえ!


かめをいじめていた子供、あと二人いた、がかめをほったらかしウサオへと標的を変えた。お返しだ!よくもやったな!口々に叫びながらウサオに突進してくる。


ふ!甘い!!


ジャンプ力と瞬発力には自信がある。子供二人の攻撃を難なくかわした。子供二人は、あー!!だとか、くそー!!とか言っている。


つまんねぇよ。全然当たんねぇ。。


子供二人の攻撃を次から次へとかわしていくウサオに飽きてきたらしい。疲労とやる気のなさが垣間見えて、子供たちは攻撃をやめてしまった。


帰ろうぜー。お腹空いたしさー。うん。そうだね。このうさぎ可愛くないし。


ぶつくさと言いながら去っていく。ウサオはほっと力を抜いた。体のあちこちを触ってみる。痛くはない。怪我はないようだ。そんなウサオにかめが寄ってくる。


あの。。大丈夫ですか。?お怪我はないようですね。


あんな攻撃で怪我などしてたまるかとウサオは思ったが、かめが暗い顔をしているので口に出すのは思い止まる。


。。すみません。。こんな恥ずかしい失態を。私が鈍くて遅いからこんなことに。


かめは甲羅から顔を出し下を向いているのだが、わかりづらかった。


やはり。。競走なんて無理だったのですね。ウサオさんに言われて頭にきて受けましたが、私には無理だったのですよ。あんな高台まで登ったことないのに安請け合いして。。私が馬鹿でした。もっと身をわきまえればよかった。


下を向いていた顔を上げ、ウサオを見つめている。


申し訳ありませんが、この競走、辞退させていただきますね。ウサオにも待たせた上にこのように迷惑をかけてしまって。

私はウサオさんの言う通りのろまなかめでした。高台なんて登れなかった。あなたの、ウサオさんの言う通りですよ。


寂しそうに笑っている。ウサオはしばらくかめの声を聞いていたが、ふん!とひとつ大きな鼻息をした。


馬鹿だな。高台なんてな、こうやって歩いていれば着くんだぜ。のろいとか関係ないだろ。


ウサオはかめを見つめている。


歩きゃあいいんだよ。なーんも考えず、速度とか考えず、ただ歩く。歩いて歩いて、疲れたら休んで。また歩く。。。高台に行ってみたいんだろ。あほが。


つまらなそうにそっぽを向きながら呟いた。その言葉にかめは驚く。


どうして私が高台に行ってみたいと思っていることを知っているのですか!?誰にも話したことなかったのに!!


目を見開いてウサオを見つめるかめに、ウサオは照れ臭そうに、見てればわかる、と鼻をかきながら言った。


行きたいんだろうが。諦めんな。俺のことは気にせず、憎いやつだと思っていっぱい迷惑かければいいんだよ。


お前よりも不真面目で軽いんだから。そう付け加えながらウサオはかめの手を取った。かめの手は平たくて分厚い。ウサオは思わずそれをしげしげと見つめた。ほー!こんななってんだなーとぼやくウサオを気にせず、かめはウサオに告げた。


ウサオさん!!!


かめはウサオに全体重をかけてきた。ウサオは反射的に後ろへと下がる。


ウサオさん!!!私、諦めずに歩きます。ありがとうございます。ウサオさん!


満面の笑みのかめ、やはり笑っているかどうかはわかりにくかった、に見つめられてウサオはさらに照れる。このかたありがとうなどと感謝されることがなかったため、その言葉はウサオにとって温かい気持ちにさせるには十分だった。


うるせぇなぁ。いいから、歩くぞ、ほら。


かめの手を離して少し前に行く。両手を頭に当てながら受けましたは歩き出した。その後ろをかめが着いて歩いていく。


夕日が大きく傾き、ほどよく暗くなってきたがウサオとかめは気にしない。高台への道をゆっくりと歩いていった。

競走話~。初の短編でございます。やさぐれたうさぎを書きたかっただけなのです。うさぎもかめもとても可愛いですね。

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