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~秋~『はるぶすと』物語  作者: 縁ゆうこ
第1章 喫茶『はるぶすと』本日も営業しております。
3/28

知り合い

 大忙しのランチタイムがすぎると、すこし幕間のような時間がうまれる。こんなふうにぽっかりと時間が空くと、鞍馬くんはナイスタイミングでお茶をいれてくれる。

「今日はカフェラテを入れてみました」

「わあ、ありがとう…!」

 従業員用のマグ(と、言っても私しかいないので、好きなカップを持ち込んだだけ)に入れてくれた心づくしのラテは、泡立てたクリームたっぷり、おまけにそのクリームにネコの絵が描いてある。

「すごーい!鞍馬くんバリスタみたいなことも出来るんだ!このネコちゃんかわい~い」

「いえ、お客様にお出ししようかと思って。練習中のものなので、恐縮なのですが…」

 練習中とはいえ、以前こういう絵を描くコンテストに出た、バリスタのラテをテレビで見たことがある。それと遜色ない出来映えにただびっくりするやら、感心するやら。本当にこの人はなにをやらせてもそつがない。


 しばらく鞍馬くんの入れてくれた美味しいカフェラテを味わっていると、喫茶店の扉が開いた。

「ひとりだけど、大丈夫かしら?」

「いらっしゃいませ」

「あ、いらっしゃいませ」

 あわててカップをカウンターの向こうへ隠し、水の入ったコップをトレイにのせる。綺麗な人!私は初めて見るお客様だ。

 どこへ座ろうかと思案顔をしていたその人は、カウンターの鞍馬くんの真正面に陣取った。うんうん、『はるぶすと』初心者のたいていの女性ひとり客はまずカウンターに座るのよね。これも鞍馬くん効果かしら?カウンターなら私が注文をとらなくていいので、そっと横から水とメニューをお出しする。カウンターから鞍馬くんが声をかけた。

「いらっしゃいませ、ご注文がお決まりになりましたらおっしゃって下さい」

「うーん、全部美味しいのはわかってるから、何にしようかなー」

 あれ、初めてじゃないのかな。私がお休みの日に来たことがあるのかもしれない。

「それでしたら、今ちょうど練習中のカフェラテなどいかがですか?」

「ふふっ相変わらずねぇ。かりにもお客なんだからもっと良いもの勧めてよ」

「あなたなら喜んで練習台になって下さるでしょうから、お久しぶりですね、依子よりこさん」

「ほーんと。しばらく見ないうちに立派になっちゃって。マスターきどり?先代は」

「その呼び方は…」

「?あ、この方…」

と、私を見てちょっと失敗したような顔をする。また先代?ほんとになんで誰も彼も鞍馬くんの事を先代、先代って。


 え、でもちょっと待って、じゃあ夏樹が言ってた先代ってせんだいさんじゃなくて…と言うことは、夏樹と鞍馬くん、やっぱり知り合いなのかな。なぜ私に隠すんだろう。わたしってそんな事を隠すほど信用されてないのー?と、どんどんネガティブ思考に陥りそうになったその時、また店の扉がカラーンと開いて、

「にゃーおんー」

と、とても人間とはおもえないあいさつが聞こえた。


「え?ネコ?!」

 そのネコはスタスタと店の中を横切ると、当然というようにカウンターにひらりと飛び乗って、うーんとノビをし、コロンと横になってわたしの方を見た。その目がいたずらっぽく笑っているような気がする。

「あら、ごめんなさい。さっきそこでお友達になっちゃって。まさか入ってきちゃうなんて。だーめよ、貴女は外で待ってなさい」

「にゃー」

 まるで依子さんと呼ばれた人の言葉がわかるように返事する。いやだーと言ってるよう。とっても毛並みの綺麗なトラ猫だ。なにを隠そう、私は無類のネコ好きだ。ネコがいると性格まで変わると言われるくらい。

「わー、かわいいー。今はお客様がいらっしゃらないから、あ、いえ、そちらはこの子のお友達なので…」

「依子って呼んでもらっていいわよ」

「え、はい。じゃあ依子さんとこのこはお友達なので、他のお客様が来るまでいていただいていいんじゃないでしょうか?ね、鞍馬くん?」

「ええ、いいですよ」

 ちょっと苦笑気味に鞍馬くんが言う。そして、

「でも、意外でした。由利香さんはネコ派なんですね」

「え、そうですか?犬っぽいかな?でもねーネコなんですよぉ~。んー、キャワイイー」

 下あごをなでながらとろけるような声で言うと、鞍馬くんは本当に意外そうな顔をして見ている。依子さんはうんうんとうなずいていた。


「良かったわ、貴女がネコ好きで。じゃあ、人のいない時間に来るのよ。えーと、なんてよぼうかしら、名前つけなきゃね。せん…じゃなくて、シュウ。何か良い名前ないかしら。」

「雄ですか?雌?で、ネコなら…そうですね、ネコ子というのはどうですか?」

「!」

「!」

 私と依子さんはそれを聞いた瞬間、顔をみあわせ・・。次の瞬間、大爆笑していた。ええっ、いくらネコで女の子だと言っても、ネ・ネコ子って、ネコ子って~~

 しばらく二人ともまともに口がきけず、鞍馬くんは顔中に疑問符をつけて首をひねっているし。くだんのネコだけが、知らん顔して黙々と毛繕いしていた。

 ようやく落ち着いてきた依子さんと私が、

「鞍馬くんって、鞍馬くんって何でもすごくデキル人だと思っていたけど…ネーミングセンスの方は」

「センス、ゼロだわね」

 依子さんは容赦ない。

「そうでしょうか?」

 肝心の鞍馬くんはぜんぜんピンと来ないらしく、いったい何が可笑しいのかがわからず、いつまでも首をかしげていた。


 でも、その日からそのネコはめでたく「ネコ子」という名前をつけてもらい、ちょくちょく店に遊びに来るようになった。とても賢いネコで、ランチの時間は絶対入ってこない。ネコ嫌いの人がいるときも来ない。誰もいない幕間の時間や、ネコ好きが来ているときだけ、コロンとカウンターで気持ちよさそうに寝ている。

 依子さんも時を同じくして『はるぶすと』の常連になった。依子さんが来ると、なぜかやってくるネコ子が店に入りたそうにするので、依子さんはランチタイムを外して来てくれる。「シュウの料理はもう食べ飽きちゃったから、お茶だけで良いのよ~」と、申し訳なさそうにする私に言ってくれたが、料理を食べ飽きたと言うことは、鞍馬くんは昔も料理人だったのかな?それとも…もしかして、もしかして、二人は結婚していたとか?はははーまさかねー。



「お!ネコ子ちゃーん、今日も美人だねー」

「にゃ」

 夏樹が入ってくるなりネコ子を見つけて遊びだす。

 私が意外だったのは、夏樹もネコ好きだと言うこと。まあ、夏樹は犬も好きだと言っていたな。動物なら何でも良いのか。

「いらっしゃいませ、ご注文をお伺いしますわ」

と、にっこり極上の笑顔で注文をとる。

「え、なんだよ由利香さん、えらく親切じゃない、気持ちわりぃ」

「失礼ね、私はいつでも夏樹には親切よ、なーんて。ホントはね、夏樹がネコ好きなのを知って見直したのよ」

「それはそれは、由利香さんもやっと俺の良さに気がついたか~。良かったねーネコ子ちゃん」

 などと、冗談を飛ばしながらネコ子にちょっかいを出して引っかかれそうになっている夏樹をほほえましく見ていた。


ふとネコ子が外を伺って、ひょいとカウンターから飛び降りるとどこかへ行ってしまった。

「あれ、ネコ子ちゃーんどこ行くの」

「あらぁ振られちゃったわね」

「うぇー、また由利香さんがいじめるー」

「違うわよ、お客様よ」

と、小さい声で教えると夏樹はえっと言って感心したように、ネコ子の行方を見やっている。

「ホント頭良いって言うか、賢いって言うか」

「そうよ、貴方も見習いなさい。―いらっしゃいませ」

 たぶんネコ嫌いのお客様なのだろう。営業妨害をしないように気を利かせてどこかへ隠れているのだ。

「えーと、ホット一つね」

「かしこまりました」

 鞍馬くんに注文を伝えて、奥まったカウンターに座る夏樹に言う。

「そういえばまだ注文聞いてなかったわ。ごめんねぇ~」

「これだ!あーもう由利香さんは、俺なんてお客じゃないと思ってるっしょ」

「なにそれ。コホン、あらためまして、ご注文は?」

 姿勢を正してちゃんと注文をとってやる。

「へえへえ、ありがとね。えっと何にしようかなー」


 夏樹はなにを隠そう、無類の甘い物好きだ。うちのメニュー、スイーツはケーキしかないけど種類はいつの間にか増えていて、毎日だいたい三種類はある。それも鞍馬くんの手作りだ。なにをどうすれば、開店が十二時とはいえランチの仕込みとケーキを三種類も作れるんだろう。恐るべし鞍馬 秋!

 本日のケーキは、季節のフルーツタルト、モンブラン、それと定番のイチゴショートだ。

「早く決めなさいよ」

「またいじめる~。うえーん、シュウさんのケーキ美味しくてひとつに決めがたいんだよぉ。ああーどれも食べたい!」

「なら、全部注文すれば?」


 などと軽口をたたいていると、すっとホットコーヒーが差し出される。

「入りました」

「はい」

 先ほどのお客様にそのコーヒーを持って行く。私だってお手伝いとは言え、いちおうちゃんとお仕事はしている。

 その間に夏樹のケーキも無事決まり、鞍馬くんに伝えたようだ。

 今日はフルーツタルトにしたもよう。季節のフルーツがふんだんに使われていて、盛りつけもそれはそれは美しい絵のよう。それと温かいアールグレイ。あー美味しそうだな、帰りに私もいただこう。


 夏樹が幸せそうにケーキをつついている間にお客様も帰られ、また静寂の時間が流れる。ネコ子はもう飽きてどこか他へ行ってしまったようだ。と、その時、

「今の時間ならあまりお客様も来ないと思うので、少しだけ用事を済ませて来ても良いですか?すぐ帰りますので」

 と鞍馬くんが言った。

「あ、いいわよ、今なら夏樹もいるし」

 私は二つ返事でOKする。実は、この間から夏樹が来るたびに考えていたことがあって、それは鞍馬くんが留守でないとまずいのだ。

「おう!任せとけ。コーヒーも紅茶もお手のもんだぜ」

 鞍馬くんほどではないが、夏樹のいれるコーヒーや紅茶もなかなか美味しいのだ。前にもこういう事があって、そのときはじめて鞍馬くんが夏樹にカウンターを任せたので、驚いて「大丈夫なの!」と知らない私は失礼な事を言ってしまった。

 あとで聞くと、夏樹はコーヒーや紅茶のインストラクター資格を持っていると言う。いつの間にそんな話をしていたのだろう。それにいくら資格を持っていても、ただのお客様にお店を任せるなんて事は普通しないだろう。こういうところが疑問なのよね。だから…。


 いつもなら、その用事私がかわりにと言う所だが、今日はちょっとね。

「それでは、行って来ます」

「「いってらっしゃーい!」」と、夏樹と私の二重奏に送られて、鞍馬くんは出て行った。

 よし、これで邪魔者?はいなくなった。と、私は悪魔のほほえみを浮かべて夏樹を振り返る。

「ねえー、夏樹ぃ。私ね、前から夏樹に聞きたいことがあったのよねー。教えてくれる?」

「?え、何だよ藪から棒に…」

 怪訝な顔をしていた夏樹は、私のほほえみを見たとたんにズズッとあとずさった。

「あなたさぁ、鞍馬くんとは初対面だって言ってたけど、本当は知り合いなんでしょう?」

「ええー!なんで今頃になって?!」

「この間ね、貴方と同じように鞍馬くんのことを先代って呼んだ人がいたの。依子さんって言う、とっても綺麗な女の人」

「よ・よりこ…?」

「依子さんの事も知ってるんじゃない?白状した方が身のためよ~」

 私は指をポキポキならしながら夏樹に近づいていく。

「ちょっと待った!」

「?」

「今さ、今ちょうどケーキ食べてるんだよ。ケーキは盛りつけたその時が一番美味いって言うじゃないか。全部食べさせてくれよー」

 そんな理屈あったかしら、でも、ケーキ好きに目の前のケーキを我慢させるのはちょっと酷ね。そんなわけで、夏樹がケーキを食べるあいだは黙っていた。夏樹は「あー」だの「うー」だの言いながら、この窮地を抜け出す手立てを考えていたようだが、私から逃げようなんて十年早いのよ。

 とうとう最後の一口を食べ終わった夏樹に、

「さあさあ、はっきりカタをつけてよねー。鞍馬くんとは知り合いなんでしょ、で、どこで?いつから?」

と、不敵な笑みを浮かべググッと顔を近づけていく。夏樹は冷や汗タラタラでのけぞりながら、怖そうに目まで閉じて「言った方が…よさそう、かな…」とか言っている。あと一押し!とその瞬間、足が地上から離れた。


「!え?!なに?!」

 不自由な感じでギギッと振り返ると、なんとそこには鞍馬くんの顔。

 驚いたことに私は、鞍馬くんに首根っこ(正確には首のあたりの服)をつかまれて、宙づりにされていたのだ!まるでネコのように。ええっ!?これでもいちおう私は成人女子で、標準的な体重だってあるのよ。それをいとも軽々と…

「く・くらまくん?」

「何をしているんですか。お客様はいないとはいえ、いちおう外から中の様子は伺えるのですが…」

「何って…?ちょっと話を聞きたくって」

「シュウさーん、良かったー」

 夏樹は泣き笑い、私はチェッという顔、それを見た鞍馬くんはほうっと息をついて私をひょいと床へ下ろす。

「夏樹、あんなふうに男のほうがせまられるのは情けないですよ。それにKissするならお二人とも、もっと違う場所でお願いします」

「「!き!Kissう~?!?!」」

 二人同時に叫んでいた。

「バ・バカなこといわないでよー!なんであたしが夏樹と!」

「そうだよ~よりによって由利香さんなんかと、ひっ!」

 ギロッと私に睨まれた夏樹がまたズズッとのけぞる。

「え?でも外から見たかぎりでは、由利香さんが夏樹にせまっていたとしか、お見受けできなかったのですが…」

 そりゃーせまっていたと言えばそうなんだけど、ひどい誤解だわ。


「シュウ、相変わらず貴方ってトンチンカンねぇ。どこをどう見たらこの二人が良い雰囲気に見えるのよ」

と、声がした。

「依子さん」

「こんにちは。またお邪魔するわね」

 依子さんが来たと言うことは、とカウンターを見やると、もうネコ子はのんびりとくつろいでいる。いったいいつの間に。


 でも、役者はそろった。もう、ひとりでウダウダと悩むのは嫌だ。この際この三人の関係をハッキリさせてもらおう。

「鞍馬くん、依子さん。今私が夏樹に迫っていたのは、Kissとかそんなうわついたことではないの。前々から聞きたい聞きたいと思っていたんだけど、なかなか聞き出せなくて。あのね、どうかお願いだから本当のことを話して。私だけ仲間はずれなんて嫌だもの」

「どうしたの?」と、依子さん。

「ハッキリ言います。三人は前から知り合いだったんでしょう?それから、鞍馬くんを先代と呼ぶのは何故なんですか」

 あら…と依子さんは鞍馬くんや夏樹と顔を見合わせる。困り顔の鞍馬くんや夏樹を尻目に、依子さんはしっかりと私と向き合った。

「いいわよ、もう二人とも良いでしょう?シュウは彼女のこと、そんなに信頼できない?」

「いえ」

「なら、お話ししちゃうわね」

「……仕方ありません、お任せします」

 やった!やっと胸のつかえがおりる。私はワクワクしながら依子さんの前に座った。あまりに簡単に事が運んだので、私はこのとき、鞍馬くんと依子さんがかわした微妙な合図に気づけずにいた。


「私たちは、貴女が言うとおり昔からの知り合いなの。ヨーロッパのとある国にある、王室の血をひく方の邸宅で、三人とも働いていたの。そこは、日本の常識ではまず考えられないほどの規模なのよ。お屋敷がひとつの街ほどもあるの。だから、働いている人は数知れず。シュウはそこの当主の料理長をつとめていて、彼の師匠が初代料理長。で、彼は二代目を引き継いだのよね。そして夏樹。彼は三代目候補の一人だったの」


 話を聞いているうちに、頭がクラクラしてくるのがわかった。ひえー!?いくら金持ちとはいえ、お屋敷が街一つ?しかもヨーロッパ。三人とも見た目も名前も日本人なのに、なぜ?それに、夏樹が三代目候補って?!コーヒーや紅茶のインストラクターどころの話じゃないじゃない!おどろいて夏樹を見る私に依子さんは言った。

「その顔…フフッそうよねー夏樹が料理長なんて、ちょっと笑っちゃうわよねー」

「あ、依子さんひどいッス」

 夏樹がすねて言う。

「ごめんごめん。でも、容姿端麗なのに、すぐ調子に乗って言わなくても良いことまで言っちゃうでしょ?夏樹って。だからってわけじゃないんだけど、ライバルの三代目候補が何人かいたんだけど、その中のひとりがひどいことをして、夏樹はあやうく命を落としそうになったの。全く!たかだか百年ほどしか寿命がないのに、なんで殺し合いばかりするのかしらね!情けないったらありゃしないわ!だいたい…」

「依子さん」

 鞍馬くんがたしなめると、依子さんははっと我に返り、

「あ。ごめんなさい。それでね、このままでは夏樹がダメになっちゃうと思ったシュウは、三代目を夏樹の次に良くできた子に任せて、夏樹とともにお暇をいただいたの。それでその時の呼び方の名残があって、今でも私たちは先代って呼んじゃう事があるのよ」

「え?じゃあ本当なら夏樹が三代目になるはずだったの?!」

「そうよ。」

「夏樹って…すごい人だったのね!だって鞍馬くんのいわば跡継ぎって事でしょ。ホントに?」

「由利香さんそれはひどいよー」

 夏樹はぶーっとふくれた。まったく、黙っていればいい男なのに。


 そうなのだ、依子さんが言ったように、夏樹は見目麗しい好男子である。初めて店に来たときは、うわっいい男!と思ったもの。でもね、何かの拍子で私の歳を知ったときに「へえー、由利香さんて意外に年増なんだね~」はないでしょ!年増ってなによ年増って!(死語よね)まだ、オバサンの方がまし。その時の私の殺気たるや、自分でも怖かったのだから、夏樹は相当恐ろしかったのだろう。それ以来、夏樹は私には太刀打ちできない。


「でも、鞍馬くんと夏樹はそのあと一緒じゃなかったの?」

 と質問した私に鞍馬くんが答える。

「ええ、お屋敷をやめてしまえば、お互い独立した料理人ですから。自分一人食べていけるくらいの腕は夏樹にもありましたので、心配はありませんでした。でも、まさか夏樹も日本に来ているとは思いませんでしたが…」

「お、俺だって!でも、先代の顔を見たときは嬉しかったよー。夢かと思ったもん」

 お屋敷をやめたあと、鞍馬くんと夏樹がどこでどんな暮らしをしてきたのかは聞かなかった。それは私が今聞くことではないし。また話したくなったら二人とも話してくれるだろう。

 でも、依子さんはなぜ日本にいるのだろう?まあそれもおいおいでいいか…。

 やっぱり知り合いだったんだ。これでやっとスッキリした。鞍馬くんたちも、私がこの三人が知り合いだったとわかってる方が、何かと都合がいいと思うんだけどな。なんで隠してたんだろう。


 なんだか色んな事があるけれど、今日も『はるぶすと』は通常通り営業中だ。




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