エピローグ
伊織がはるぶすとへ来てちょうど二週間。
京都へ帰る伊織を駅まで送っていくべく、また駅までの道をのんびり歩く。二週間前にはまだ固くつぼみを閉ざしていた櫻が、今は満開である。ひらひらと花びらが舞い散る並木道。
伊織と夏樹はふざけながら先ヘ行ってしまっていた。
「よろしかったのですか?イギリスへ行く話を断っても」
「ええ、樫村さんの言うとおり、軌道に乗ってきた店をほうって行くのはあんまりよね。それに、はるぶすとも長くてあと五年?くらいでたたまなきゃならないでしょう?」
「?」
「だって貴方たちはずっとそのままのすがただもの」
「よろしければあと二十年でも三十年でもおつきあいしますが」
「え?イヤよ!だってあと二十年もしたら私だけオバサンよ!夏樹や伊織がきっと面白がって由利香おばあちゃんーとかいうわよ絶対!そんなのお断り」
鞍馬くんはぽかんとして私の話を聞いていたが、急に片手で顔を覆ってうつむいてしまった。肩がゆれている。と思うと身体を折って笑い出した。
「なによ!」
「あっははは、由利香さんは…やはり、由利香さんですね、はは…」
あ、久しぶりに見た。大笑いする鞍馬くん。なかなか笑いが止まらない。すると、前を歩いていた夏樹が、
「あー、なに二人で楽しそうなこと話してるんすかー?」
と、駆け寄ってくる。
私は夏樹にするいいわけを考えながら、いつまでも笑いやまない鞍馬くんを、あきれて見上げ続けていたのだった。
了
ここまでお読み下さいまして、ありがとうございます。
なんと言うことのない日常を、つれづれと綴っていくような物語が、読むのも書くのも好きなので、
こういう形になりました。
ほわんとしていただければ幸いです。
ちょっと前に書き上げていたので、奈良や京都の情報は変わっているかもしれません。
それと、ここに出てくる喫茶店、料亭、カフェは当然ながら実在しませんので、ご了承のほどを。




