表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集

無題-989b0

作者: 談儀祀
掲載日:2011/01/17

「やあやあはじめましてお客さん。こちら贋作展にようこそ。世界を唸らせる世紀の贋作から奇な奇妙な贋作までよりどりみどり取り揃えさせていただいておりますよ。ってそんな話に興味ないみたいなお顔でいらっしゃいますね。まぁそう言わないでくださいよ。こっちもお客さんが少なくて退屈なんです。よろしければ私がご案内差し上げますよ。何せ暇なのです。……ありがとうございます。それでは早速一品目でございます。なんとかの高名な『源氏物語』……の贋作でございますよ。これは希少です。今やこの作品も性的刺激を与えるキワモノ文学作品のひとつで発見次第即回収となるようになりましたがこちらは当局の取り締まりをくぐり抜けたたったひとつの贋作なのです。古臭さ、それからこの鼻につんとくる黴臭さまで出せたのはこれはもう僥倖としか言いようのない出来栄えでございますよ。是非是非お目に焼き付けて……、おっと、くれぐれもカメラの方には焼き付けぬようお願いいたします。最もここに来るお客さんであればそんなことはわかっていらっしゃるとは思いますがね。

 さてさて、お次の品は芸術大国として誉れ高い仏蘭西から取り寄せた数々の贋作図画でございます。中には意図的にポーズを変えたものや不自然に塗り潰さざるをえないような物も多かったと聞いていますが、これらの贋作を見ているだけでもその崇高さがわかるというものでしょう。宗教絵画ですらこの程度の修正が必要なのです。はは、当然我が国に本物など持ち込みようがございませんのでね、こうして贋作を展示しているのですよ。そうしてほら、あなたのような酔狂なお客様だけが、この価値を理解して帰っていかれるのですよ。ん? ああ失礼、お客様に対して酔狂だなんてこれはまた私も失礼なことを言ってしまったものだ……。ふふ。それだけあなたが熱心に見入っていたということなのかもしれませんね。興味がない? それもまた結構。

 さぁ、お次のお品物は……、おっとこれは懐かしい。バタフライナイフ、ブルマ、ポールダンス用のポールに……、これは何でしょうね? 私も全部に目を通したわけじゃないのですよ。あなたは何か御存知ないですか? そうですか、ふむ。まぁこの部屋にあるのは所謂「有害」とされ隔離されていった品々ですよ。どれもこれも、時代の流れに逆らえなかった哀れな小道具たちですね。それ自身の有能さと、それ自身の有害さは別物だというのに。そうは思いませんか?

 こんな話を聞かせてしまって申し訳ありませんね。さぁ、最後の部屋ですよ。この部屋にあるのは世界各国から集められた大量の創作芸術品です。過去にはアニメやら漫画やら小説やら写真集やらと呼ばれていたようですが、今となっては紙の染み。心に染みますね。ふふ、さぁ見ていってください。時代が排除した作品の贋作たち。セクシャルな描写、グロテスクな描写などは法にかからないよう、可能な限り削除してありますがその隙間からだけでもその作品の価値を理解することは十分可能です! この世界から排除されてしまった今となっても、彼らは、否、私たちはここに存在しているのです! 地上に亡骸を、記憶に残害を。そして地下にて永遠の生を手に行進せよ、交信せよ、更新せよ! ……失礼、熱くなってしまいましたね。こうして現存しているのは今となっては一部の贋作のみになってしまいましたが、これらによる表現の息吹は今も地下に芽吹いているのです。それが途切れることは決してないでしょう。我等が表現を欲し、表現したいと願う限りは!

 ……さぁ、展示はこれでおしまいです。如何でしたか? 退屈? それも結構。感激? それも結構。不快? それももちろん結構です。私の暇を紛らわせてくれたお礼に御代はただにして差し上げますよ。ひたすらにお客のいない商売なんでね。

 これからどうするかって? さぁて、考えていませんがね。恐らくまたどこかへ行くのでしょうね。私たちはどこかでひっそりと、そして永遠に表現を求めるのでしょうから。それは誰が何と言おうと普遍的に変わらぬ唯一のことなのです。我ら表す、故に我ら有り。そう言えばいいでしょうか。ふふ、それではまた、お会いできるのを楽しみにしていますよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ