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#004 「SPさん現る」
廊下の混乱はさらに増していた。
「はるな様ー!」
「美弥先輩ー!」
体育祭並みの声量が響く。
その渦中に、黒服が割って入った。
新人SP。
サングラスを押さえ、短く告げる。
「下がってください。安全距離を保って」
声は震えていない。だが群衆は止まらない。
人波に押され、書類の束が落ちた。
バサッ。
床に散らばったのは
『特別教室警備配置図(更新版)』
要が拾い上げる。
「……準備はしてたんだな」
「返してください。それ、内部資料です」
SPは素早く回収する。動きは慣れている。
「がんばれー!」
黄色い声が飛ぶ。一瞬だけ、彼の表情が揺れた。
はるなが小さく呟く。
「……ちゃんと守ろうとしてる」
その一言で、数人が足を止める。
SPは深く息を吸い、
「俺は任務でここにいます。守ると決めたから、守ります」
ほんの一瞬、空気が締まる。
――が。
「新人くんかっこいいー!」
黄色い声で即座に崩壊。
「守られるどころかスターになってない?」
想太が頭を抱える。
要が淡々と告げる。
「人気分散、進行中」
「いらない分析!」
6人の声が揃った。
SPは書類を抱え直し、立ち位置を変える。群衆の流れを読む目だけは、冷静だった。
「……やっぱり、二年目も騒がしいな」
隼人が苦笑する。6人は顔を見合わせ、ため息をついた。




