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#030 「それぞれの言葉」

 改めて、体育館。六人がステージ中央に並んだ瞬間、空気が爆ぜた。


「はるな様ーー!」

「想太くーん!」

「お姉様ーー!」

「天使ーー!」

「兄弟ーー!」

「ともり様ーー!」

 歓声が波のように押し寄せ、天井の鉄骨にぶつかって跳ね返る。拍手が重なり、床板がわずかに震えた。

 SP26人が両脇に壁を作る。黒いスーツが一斉に光を反射する。


「では、順番に一言ずつ」

 校長がマイクを差し出す。マイクのコードが、床に細い影を落とした。


 トップバッターは、はるな。スポットライトが彼女を包む。

「……勉強の邪魔はやめなさい!」

 頬を真っ赤にして叫ぶ。その声は、思ったよりまっすぐだった。一瞬の沈黙。


「ツンデレだーー!」

 男子たちが泣き崩れる。うちわが一斉に揺れた。


 次は想太。マイクを握る手が、わずかに震えている。

「俺は普通だから!……放っておいてくれ!」

 その叫びは半分本音だ。


「普通が尊いーー!」

 体育館が再び揺れる。想太は思わず目を閉じた。


 三人目、美弥。マイクを持つ姿勢が、どこか優雅だ。

「落ち着きなさい。あなたたち、冷静さを忘れてるわ」

 低く、澄んだ声。


 女子たちが一斉に膝をつく。

「お姉様ぁぁぁーーー!」

 フラッシュが光る。


 四人目、隼人。スポットライトの中で、静かに息を吸う。

「……俺たちだって、ただの生徒だ」

 短い言葉。でも、体育館の空気が少しだけ静まった。


「カッコよすぎーー!」

 歓声がまた押し寄せる。


 五人目、要。眼鏡のレンズが光を反射する。

「統計的に、混乱は長続きしない。必ず収束する」

 淡々とした声。だがその安定感が、群衆の不安をほんの少し削った。


「分析カッコいいーー!」

 拍手が波のように広がる。


 最後は、いちか。スポットライトの中で、小さく深呼吸。

「えっと……みんなと仲良くなりたいな」

 言葉は短い。でも、体育館の空気がふっと緩んだ。


「天使ーーー!」

 歓声が、今までで一番大きく跳ね上がる。


 六人は並び、同時に深く頭を下げた。

 その瞬間。閃光。カメラのフラッシュが一斉に光る。白い光が視界を焼く。


「……マスコミ?」

 はるなが顔を上げる。体育館の後方。テレビ局の取材班が三脚を並べている。赤い録画ランプが点滅していた。


「全国に流れるかもしれないな」

 隼人が小声で呟く。

 その言葉の重みが、六人の背中に落ちる。


「えええ……!」

 想太の顔が一気に青くなる。


「でも、仕方ないよね」

 いちかは小さく笑った。その笑顔は、フラッシュの中でも変わらない。


  《……未来はもう、動き出してる》

 ともりの声が端末から静かに響く。

 歓声、拍手、フラッシュ。その中心で、六人の姿は、鮮やかに焼きつけられていった。

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