#028 「大集会準備」
翌朝の校長室。厚いカーテン越しに差し込む朝の光が、重厚な机の表面を淡く照らしている。壁には歴代校長の写真。空気は、どこか張り詰めていた。
六人は呼び出され、一直線に並んで立っている。革靴の先が、同じ方向を向いていた。
「君たちの人気は、もはや学校の枠を超えている」
校長の低い声が、静かな室内に落ちる。時計の秒針が、やけに大きく聞こえた。
「……知ってます」
想太が即答する。その声だけが、少し軽い。
「知ってるって言うな!」
はるなが肘で小さく突く。
「このままでは授業も運営も成り立たない」
教頭が眼鏡を押し上げる。レンズが朝の光を反射した。
「そこで、全派閥を体育館に集めることにした」
校長の言葉が、空気を切る。一瞬、時間が止まる。
「……マジですか」
隼人が目を細める。窓の外で、遠くチャイムが鳴った。
「統計的に、一堂に集めれば収束に向かう可能性がある」
要が冷静に頷く。
「逆に大混乱しそうだけどね」
美弥が小さく笑う。だが、その笑みは強がりに近い。
「でも、逃げ場を作るよりマシかもしれない」
はるながぽつりと呟く。その声には、覚悟が滲んでいた。
「君たちにも一言ずつ話してもらう」
校長がきっぱりと言う。空気が、重く沈む。
「無理だーー!」
想太が机に突っ伏しかける。だが校長室なので、寸前で踏みとどまった。
「無理とか言わないの」
美弥が低く諭す。
「僕は構わない」
要は背筋を伸ばしたまま答える。
「要……お前強いな」
隼人が小声で呟く。
「えっと……頑張る!」
いちかが元気よく手を上げる。その動きだけが、室内の空気を少しだけ和らげた。
「天使が言うと説得力あるわね」
はるなが肩をすくめる。
「当日の警備はSP全員を投入する」
教頭が資料を机に置く。紙の擦れる音が、やけに響いた。
「全員って……26人か」
想太が呟く。
「俺らのために大集会……」
隼人が天井を仰ぐ。シャンデリアの光が、わずかに揺れた。
「本当に“守られる存在”なんだね」
いちかがぽつりと呟く。その言葉に、六人はしばし沈黙する。
外では、いつも通りの授業が始まっているはずなのに。ここだけが、少し別の世界のようだった。
「……準備は整った」
校長がゆっくりと口を開く。
「明日、体育館で大集会を行う!」
その宣言が、壁に反響する。六人の心臓が、同時に大きく跳ねた。窓の外の空は、不思議なくらい穏やかだった。




