#022 「混乱する特別教室」
翌日の特別教室。窓から差し込む朝の光は穏やかで、黒板にはいつも通りの日付が書かれている。六人は机を囲み、なんとか“普通の授業”を始めようとしていた。
しかし――
「はるな様ーー!」
「想太くーん!」
「お姉様ー!」
「天使ちゃん!」
「隼人×要ーー!」
「ともり様ーー!」
窓の外から、無数の声が押し寄せる。まるで波がガラスにぶつかるように。振動が机の脚に伝わった。
「……これ、完全にデモだな」
隼人がため息をつく。ガラスがびり、と微かに震える。
「授業どころじゃないんだけど」
はるなが眉をひそめる。
「騒音レベル、昨日の二倍」
要が端末を見ながら淡々と告げた。
「ちょっと! 窓ガラス割れるんじゃない!?」
美弥の声が上ずる。外では旗が揺れ、うちわが一斉に振られている。
「想太くん、こっち向いてー!」
「はるな様、笑ってー!」
「……無理だろ」
想太はノートを閉じる。黒板の文字が、振動でわずかに揺れて見えた。
「勉強する気、完全に失せた」
いちかは椅子に背を預ける。
そのとき―― ドンドンッ!
教室のドアが激しく叩かれた。取っ手ががたがたと揺れる。
「開けてー! 隼人先輩に会わせろ!」
「要くんに質問させてー!」
「いやいやいやいや!」
六人のツッコミが重なる。
「先生、なんとかして!」
はるながAI端末を睨む。
《静粛に。授業を妨害しないでください》
AI先生の無機質な声が流れる。だが、その音声は歓声に飲み込まれた。
「ともり様ーーー!」
「久遠野の光ーーー!」
「……なんでともりまで巻き込まれてんだよ」
想太が机に額を押しつける。
「神様だから仕方ないんじゃない?」
隼人が肩をすくめる。
「宗教的熱狂は止まらない」
要が静かに頷いた。
「やめてーーー!」
美弥が両手で耳を塞ぐ。
その隣で、いちかが立ち上がる。
「みんな、落ち着いてー!」
窓を開け、手を振った。
その瞬間。
「キャーーー!天使だーーー!」
歓声がさらに跳ね上がる。床がびりりと震えた。
「逆効果ーーー!」
六人が同時に叫ぶ。
バタン!
ドアが開き、新人SPが転がり込んできた。ネクタイは曲がり、息は荒い。
「もう無理っす! 防ぎきれません!」
外ではまだ、コールが止まらない。教室の中は、空気が重く沈む。
「俺ら……授業受けられる日って来るのかな」
想太のぼやきが落ちる。
その言葉に、六人は一斉にぐったりと机に沈んだ。窓の外では、まだ“波”が押し寄せ続けている。




