表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/67

#021 「派閥会議」

 放課後の図書室奥。本棚に囲まれた静かな一角。夕方の光が細長く差し込み、埃がゆっくりと舞っている。

  ――はずだった。

 なぜか机を囲み、各派閥の代表たちがずらりと並んでいた。空気はぴりぴりと張り詰めている。


「はるな様派を代表して来た!」

 男子が拳を握りしめ、机を叩く。


「想太派をなめるな!」

 女子が椅子を鳴らして立ち上がる。


「美弥お姉様軍団を軽視しないで!」

 冊子を抱えた女子が一歩前に出る。その冊子が机にどさりと積まれた。


「いちか天使連合は癒しを広める!」

 低く揃った声が本棚に反響する。


「隼人×要連合は譲れない!」

 妄想ノートを握りしめた女子が机に身を乗り出す。


「ともり派こそ至高!」

 端末の画面が光り、薄暗い図書室に青白い光が浮かんだ。図書室の一角が、完全に別空間になっている。


「……これ、完全に派閥会議だな」

 隼人が呆れたように呟く。


「統計的に、会議は長引く」

 要は真顔で分析する。


「何の統計よ!」

 はるなが机を叩く。その衝撃で、積み上げられた本が一冊、ずり落ちた。


「静かにしてください!」

 司書の先生の声が飛ぶ。

 だが――


「はるな様こそ至高!」

「想太くんこそ救い!」

「お姉様に従え!」

「天使の笑顔を守れ!」

「兄弟BLを公式に!」

「ともり様万歳!」

 叫び声が重なり、図書室の静寂は粉々に砕け散った。机が震え、椅子の脚が床を擦る音が混じる。


「……カオスだな」

 想太が小声でつぶやく。


「むしろ面白いかも!」

 いちかが目を輝かせる。


「いちか、ノリすぎ」

 美弥が冷ややかに制した。


「決を取ろう!」

 誰かが叫ぶ。


「一番尊いのは誰か!」

 投票用紙が配られ始める。ペンが走る音まで混ざり、図書室は完全に戦場だった。


「やめろーーー!!!」

 六人の声が重なる。一瞬だけ静まりかける。


「静かに!図書室です!」

 司書の先生が再度叫ぶ。


 全員が振り向く。

 そして――

「無理です!」

 ファンクラブ全員の声が揃った。

 天井に反響し、本棚の奥まで震わせる。静かであるべき図書室が、最も騒がしい場所になっていた。


「これ、どう収拾つけるんだ……」

 隼人が頭を抱える。


「統計的に、崩壊寸前」

 要が淡々と答えた。


 机を囲む派閥会議は、まるで火花を散らす焚き火のように燃え続ける。そして図書室の隅で、一冊の本が静かに閉じられた。

 誰も、その音には気づかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ