表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/67

#020 「隼人・要連合の台頭」

 放課後の昇降口。夕陽がガラス越しに差し込み、床に長い影を落としていた。

 靴箱の前を、兄弟そろって歩く隼人と要。その歩幅は自然に揃っている。

  ――その瞬間。


「隼人先輩ーー!」

「要くんーー!」

 歓声が一斉に弾けた。昇降口の空気が一気に熱を帯びる。その熱量は、はるな派や想太派にも劣らない。いや、むしろどこか異質だった。

「兄弟で歩くだけで尊い!」

「公式カップル感すごい!」

 スマホのシャッター音が連続する。


「……おい、俺たち兄弟だからな?」

 隼人が額に手を当てる。


「誤解が拡散している」

 要は冷静に告げた。


 その冷静さが、逆に歓声を煽る。

「キャーーー!!」

「冷静なツッコミ尊い!」

「ちょっと待って! 隼人×要ありじゃない!?」

「いやいや、要×隼人でしょ!」

 ざわめきが渦を巻く。妄想ノートを広げる者、熱く語り合う者、すでにカップリング論争が始まっている。

「兄弟BL……尊い……」

 涙ぐむ女子まで現れた。


「これは……まずい流れだな」

 隼人は小声で呟く。夕陽が彼の横顔を赤く染める。


「統計的に、カップリング議論は収束しない」

 要の声は落ち着いているが、周囲の空気は完全に加熱していた。


「……その冷静さが逆に燃料なんだよ!」

 隼人が即ツッコミを入れる。


 その瞬間。

「きゃーー! イチャイチャしてる!」

「尊い! 兄弟推し最高!」

 床を踏み鳴らす振動が響く。


「イチャイチャじゃねぇ!」

 隼人の声は、歓声に飲み込まれた。


  ――教室の窓。

 中から様子を見ている四人。

「……完全に新しい派閥だね」

 美弥が静かに呟く。


「ほんとにカップル扱いされてる……」

 はるなが顔を引きつらせる。


「兄弟で人気ってすごい!」

 いちかは純粋に目を輝かせている。


「俺まで被害受ける気がするんだけど……」

 想太が机に肘をついた。


 昇降口ではまだ、

「隼人ーー!」

「要ーー!」

 というコールが止まらない。夕陽はゆっくり沈みかけている。


「……もう誰も止められないな」

 隼人がため息をついた。


「分析すると、この流れは拡大の一途」

 要は真顔のままだ。


 その背後で、新人SPが靴箱の影に寄りかかり、ネクタイを緩めて呟く。

「派閥が増えすぎて……俺、処理できません!」

 昇降口に、笑い声とため息が交錯する。夕陽はさらに濃くなり、兄弟の影は、並んで長く伸びていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ