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5歳の見習い魔女ノアールの冒険  作者: 多田 笑


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9/11

ノアール、魔王城に突入する

 魔王城周辺。


 ノアールたちは、凶暴なモンスターの群れに取り囲まれていた。


「フッ……ここはこの俺! マッスルセインツに任せな!!」


 セインツはそう叫ぶと、勢いよくモンスターへ殴りかかった。


(……あれ? 魔法じゃないの? 物理なの?)


 オカダは心の中で静かにツッコむ。


 セインツのパンチ!


 ──しかし、モンスターは軽々と躱す。


 続けて、セインツのキック!


 ──だが、それもまた躱される。


 さらにパンチ、キック、パンチ、キックと怒涛の連続攻撃。


 しかし、モンスターたちは余裕の表情で、すべてを躱していく。


「へっ……今日は、これくらいにしといてやる!」


(……修行の意味とは……? 筋肉が増えただけでは……)


 オカダがそんなことを考えていると、ノアールが叫んだ。


「セインツ、どいて! ──闇よ! すべてを焼き尽くせ!! 《ダーク・ファイアボール》!!」


 放たれた魔法が、モンスターに直撃する。


「ギャアアアア!!」


 断末魔とともに、モンスターは一瞬で焼き尽くされた。


「《ダーク・ファイアボール》!」

「《ダーク・ファイアボール》!」

「《ダーク・ファイアボール》!」


 ノアールは間髪入れず魔法を連発し、周囲のモンスターはすべて灰と化した。


(ノアールさん……魔法を連発しすぎです! 魔力切れを──)


 しかし、オカダの心配をよそに、ノアールは息一つ乱していなかった。


(……え? どういうこと……?)


 疑問を抱くオカダの横で、ちっちゃいオジさんは──


 なぜか、軽やかなステップを踏んでいた。


「オマエ、コロス……」



 魔王城・城内入口。


「それにしても、ジャギーの部屋って、どこにあるんだ?」


 セインツが首をひねる。


「あ! あれを見て!」


 ノアールが叫び、指をさす。

 全員がそちらを見ると──そこには、ご丁寧にも城内の略地図が掲げられていた。


(し……親切すぎる……。普通、こんなの置かないでしょう……。はっ……まさか、罠?)


 オカダは心の中で全力ツッコミを入れる。


「よし! じゃあ、3階の東側、真ん中の部屋だな!」


 しかし、そんなオカダの不安など一切気にせず、セインツは即決。


 こうして一行は、3階へと向かった。



 ジャギーの間。


 重々しい扉を開けると、そこには──

 いかにも“魔女”としか言いようのない格好をした人物が立っていた。


「あれが……ジャギー……?」


 セインツが小声で尋ねる。


「いいえ、違うわ!」


 ノアールは即座に否定する。


「あれは、ジャギー様の68番目の弟子、“ムキョポギョポマース”様よ!」


「違う!!」


 魔女が声を荒げる。


「私は24番目の弟子、“エダル”だ!! そんな発音しづらい名前ではない!!」


 ノアールは、テヘペロ。


「久しぶりだな、ノアール……!」


 エダルが睨みつけるように言う。


「エダル様、ここで何を……?」


「フッ……私は、ジャギー様の“力”を手に入れるために来たのさ」


「なっ、ジャギーの力を!?」


 セインツが大げさに驚く。


「ああ。ジャギー様は勇者との戦いの末、おそらく異世界へと転移した。だが──その強大な“魔力の源”を、この世界に残していったのだ」


「魔力の源!?」


 ここぞとばかりに、セインツがガンガン会話に割り込む。


(……お前、誰だ?)


 一瞬だけ冷たい視線を向けてから、エダルは続けた。


「そうだ。私はその魔力の源を探すために、長い間──3日間も、ここに滞在していた」


「み、短っ……」


 思わず漏れかけたオカダの声を無視し、エダルは俯く。


「しかし……見つからなかった。どこにも、魔力の源は存在しなかった……」


 沈黙。


 次の瞬間──


「……だが!」


 エダルは顔を上げ、ニヤリと笑った。


「やっと、見つけたのだ!!」


 そう言って、エダルが指さした先──


 ──セインツ。


「え、俺……?」


「ちがーう!!」


 即座に全力否定。


「お前じゃない! その足元の──ちっちゃい生き物だ!!」


 ──あ、ちっちゃいオジさんだった……。


「見よ! ジャギー様の弟子の証を!」


 エダルはそう叫び、胸元の宝石を掲げる。

 宝石は、まばゆい光を放っていた。


「この輝きこそ、そいつが魔力の源である証。私は魔力の源を手に入れ、この世界の新たな魔王となる! その崇高なる目的のために──お前たちには、ここで死んでもらう!!」


 エダルは呪文を唱え始めた。


(くっ……魔力が、桁違い……!)


 オカダがそう感じた、その瞬間──


「させるかぁ!!」


 セインツが雄叫びを上げ、エダルに殴りかかる。


 だが、エダルは軽く身をかわし、セインツの胸に両手を当てる。


 ──バシュッ。


 ──ドガァァン!!


 吹き飛ばされ、壁にめり込むセインツ。

 しかし、コメディーなので生きている。


「次は──ノアール。お前だ」


 エダルの放った魔法が、一直線にノアールへ迫る。


「……!」


 呆然と立ち尽くすノアール。


 だが──


 ドンッ!


 横から突き飛ばされる。


 オカダだった。


 オカダはエダルの魔法を、まともに受けてしまう。


「オ……オカダ……!」


「ノ……ノアールさん……逃げて……」


「ほう……。私の魔法を受けて、まだ生きているとは……」


 エダルは感心したように笑う。


「だが、すぐに楽にしてやる!」


 再び呪文を唱えようとした、そのとき──


 オカダを庇うように、ちっちゃいオジさんが前に立ちはだかった。


「オマエ……コロス!」


「ほう。魔力の源に“意志”があるのか……?」


 エダルは目を細める。


「面白い。だが、その意志は不要だ。今すぐ排除してやる!」


 そう言って、エダルはちっちゃいオジさんの首を掴み、軽々と持ち上げた。


「……て」


「や……て」


「や……やめてー!!」


 ノアールの叫びと同時に、彼女の身体が強く輝き始める。


「なっ……!? なんだ、この魔力は……!?」


 ノアールの体から、膨大な魔力が噴き出す。

 それは、空間を歪ませ、巨大な渦を生み出した。


「……!」


 その渦に、オカダとちっちゃいオジさんが飲み込まれていく。


「ノ……ノアール……さん……」


「オ……マエ……コロス……」


「しまった……!」


 エダルは焦り、ノアールに向けて魔法を放つ。


 ──だが、効かない。


 やがて、まばゆい光が静かに収まった。


 そこに立っていたのは──

 真紅の角を頭に生やし、漆黒の翼を広げた、悪魔のような姿のノアールだった。


「ケケケ……」


 歪んだ笑みを浮かべ、ノアールは言う。


「オマエ……コロス」

 そして、オカダとちっちゃいオジさんは──


(……あれ? ここって……)


 ゆっくりと意識が戻る。


 オカダと、ちっちゃいオジさんが立っていた場所。


 そこは──


(……いつものスーパーの駐車場……?)


 見慣れたアスファルト。

 白く引かれた駐車線。

 少し錆びたカート置き場。


 間違いない。


 ここは、オカダが暮らしていた──元の世界だった。



最後までお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
まさかの急なシリアス展開!! ノアールちゃんどうなっちゃうの?? そしてオカダとちっちゃいオジサンは…? セインツは…どうでもいいかw
ええぇ〜!? 私が地の文に気を取られているうちに…… “しかし、コメディーなので生きている。” →こういう地の文がお話に割り込んでくるの好きです(*´ω`*)(笑) 最後どうなるのか楽しみにしています…
何だかとっても不穏な展開!! そして、衝撃の、小さいオジさんの正体!! 次回が楽しみ過ぎます。
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