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ノアール、四天王と出会う

 ノアールとセインツ、そしてちっちゃいオジさんは、賑やかな町──ニギヤカーナを訪れていた。


「えっ、魔王軍最強の魔女ジャギーの弟子だって!?」


 大衆食堂のど真ん中で、セインツが思わず叫ぶ。


「そうよ。私こそ、魔王軍四天王のひとり──ジャギー様の一番弟子、ノアールよ!」


 ノアールは胸を張った。

 本当は586番目の弟子なのに……。


「で、でも……ジャギーは勇者に倒されたって……」


「オマエ、コロス」


 ちっちゃいオジさんが目を光らせ、低く呟く。


「ひ、ひぃ~っ!」


 セインツはすっかり腰が引けていた。

 だが、ノアールは気にも留めず話を続ける。


「その噂は私も聞いているわ。でも、これを見て」


 ノアールは首元のネックレスを掲げた。皮紐に吊るされた、小さな宝石がきらめく。


「これは……?」


「ジャギー様の“弟子の証”よ。この宝石にはジャギー様の魔力が込められているの。もし生きていなければ輝きを失うはず。でも見て!」


 確かに宝石は、今もキラキラと輝いていた。


「……つまり、ジャギーはまだ生きている」


「そう! だから私が必ず見つけてみせる! “トリケラトプス”の名にかけて!」


 そのとき──。ノアールの背後に、ひっそりと影が忍び寄った。


「あ、あの……」


「ひゃっ!」


 不意の声に飛び上がるノアール。振り向くと、影の薄そうな女性が立っていた。


「な、何よ! こっそり近づかないでよ! お、おしっこ漏らすところだったじゃない!」


 ──実際は、もうちびっていたのだが。


 女性は気にも留めず、静かに続けた。


「あの……さっき“四天王”という言葉が聞こえたんですが……」


「そうよ! 私がその四天王の一人の一番弟子よ!」


「……私も、四天王のひとりなんです」


「「えっ!?」」


 驚愕するノアールとセインツ。そして、フラダンスを踊り始めるちっちゃいオジさん。


「私は“半額四天王”のひとり、インビジブル岡田と申します」


 説明しよう!

 “半額四天王”とは、とあるスーパーの半額商品を買い漁る四人組のことである。作者のお気に入りは“ポエム松村”である。


「私は一週間前、突然、鏡の中に吸い込まれ、この世界に来てしまいました。それ以来、この食堂でアルバイトをしながら元の世界に戻る方法を探していたんです。さっき“四天王”の話を耳にして……もしかしたらと思って」


 インビジュ……いや、インビジル……いやいや、インビジブル岡田。言いづらいので、以後“オカダ”とする。


 そのオカダが話していたとき──。


 食堂の扉が勢いよく開かれた。


「邪魔するぜぇ~!」


 入ってきたのは、スーツ姿のトラ型モンスター、トラッピーと、見るからに怪しいローブ姿の魔法使いだった。


「へっへっへ! この店、野菜料理ばかり出してるらしいな……そんなもん、潰してやる!」


 トラッピーが腕まくりをして凄む。


 隣の魔法使いも不敵に笑う。


「我が名はノット・メイトン! 我が魔法で、この食堂ごと吹き飛ばしてくれるわ!」


「も、モンスターと悪の魔法使い!? どうする、どうするんだ……!」


 セインツが慌てふためく。


「だ、大丈夫よ! ここは私に任せて!」


 ノアールは勇ましく前に出ると、杖を振り上げた。


「先手必勝! 闇よ、蠢け! “ダーク・メテオストライク”!」


 ──ぼふっ。


 杖の先から飛び出したのは、直径十センチほどの……しなしなトマトだった。


「えっ……」


 トマトはふわりと飛び、ノット・メイトンの顔面に直撃し破裂。


「ぐあああああああっ!? やめてくれ~! 俺はトマトが嫌いなんだ~!! あれ、でもちょっと甘いかも……? ぐあああああああっ!!」


 顔中トマトまみれになり、のたうち回るノット・メイトン。


「やったわ! 見た? 私の魔法、大炸裂よ!」


 ノアールは大喜び。実際は、ただのポンコツ魔法が偶然クリティカルヒットしただけだった。


 その間も──。


「……オマエ、コロス……」


 ちっちゃいオジさんはフラダンスを踊り続けていた。


 なぜか、トラッピーも腰を左右に揺らしていた。


「セインツ! 援護して!」


「む、無理だ! 僕、戦えないから!」


 ──本当に役に立たない。


 そのとき──。


「……お店、潰すんですか?」


 いつの間にか、オカダがトラッピーの背後に立ち、耳元で囁いた。


「ひっ……!?」


 気配があまりに薄く、まるで幽霊に囁かれたような恐怖が走る。


「ピーマン……美味しいので……食べてください」


「ひ、ひぃぃぃぃっ!」


 青ざめて悲鳴を上げるトラッピー。その口にオカダが無理やりピーマンを四つ放り込んだ。


「ぎ、ぎゃ~! に、苦ぇぇぇっ!!」


 涙目でモグモグしながら、トラッピーは仲間を置き去りにして出口へ猛ダッシュ。


「ま、待てぇ! 俺を置いていくなぁぁぁぁぁっ!」


 トマト地獄でもがくノット・メイトンも、慌ててトラッピーを追いかけて逃げ出した。


「ふふん! どう? 私の大魔法の威力!」


「いや、どう見ても……ただの完熟したトマト……」


「オマエ、コロス」


 セインツが余計な一言を漏らした瞬間、ちっちゃいオジさんの目がギラリと光った。


 こうして、ニギヤカーナ食堂事件は、なんだかんだでノアールたちの勝利に終わったのだった。

オカダが仲間になりたそうにこちらを見ている。

仲間にしますか?


はい いいえ


セインツが何か言いたげにこちらを見ている。

どうしますか?

             ▼

葉もの野菜をあげる フラダンスをする



最後までお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
この地味に来る笑いのテンションを考えていたら、以前書かれていたエッセイに『すごいよ マ◯ルさん』に強く影響を受けているというのを思い出して、すごく納得しちゃいました。(二角の記憶力怖いですねぇ) そ…
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