告白
足が遅くて、どんどん封筒の数が減っちゃう〜!残った3つの封筒の内、手前にあった物を開く。
[声が好きな人]
エッ!マジか!?西野くんと走るの?えぇい!!どうにでもなれ!!
自分のテントに向って走り、
「西野くん来て!!」
手を掴み、驚いてる西野くんを引っ張った。
…トラック半周って結構疲れる〜〜!!
「大丈夫?」
息切れして無い西野くんが優しい声を掛けてくれるが、応えられるほど余裕が無い。
頑張れ!!わたしー!!
多分必至の形相だったことだろう。あぁ、かわいい顔のままで走れるなんて、マンガの世界だけ。実感した…。
(ゴール!!!お疲れ様でした。6位です。)
はぁはぁと息を切らし、係に紙を渡す。
「おつかれ。」
「お、おつかれ。」
言葉を交わし、なんだか緊張が解けて2人して笑えてきた。西野くんのキラキラ輝く笑顔が眩しいよ…
「紙に何て書いてあったの?」
「エッ!?」
聞かれると思わなかった。。。
「えーっとー…」
言葉に困っていると、アナウンスが聞こえる。
(声優の俺を差し置いて、弟が選ばれるとは思ってなかったですね〜。悲しいような嬉しいような。)
受け取った紙を見ながら、マイクで実況していた草間さんが、紙をヒラヒラさせながら、私達の方に向って手を振っている。
言っちゃってるじゃんっっっ!!!!!
会場がザワ…ザワ…とする。
(えっと、それは誰でしょう?先程連れて来られてた人ですか?)
(そうです! 奏〜!!)
手を振る草間さん。
唖然と立ち尽くす西野くんは目線を私に合わせて言った。
「[声が好きな人]だったの?」
...ソコ!?
「う、うん。ってそんな事より良いの!?兄弟って全校生徒にバレちゃったよ?」
「お兄の声よりも好き?」
「う、うん///。って聞いてる!?」
「お兄の声が好きだって、ずっと思ってたから。嬉しい。」
「憶えてたの?!」
(えー。衝撃事実が分かったところで、体育祭はまだ続きます!!先に進みますよ〜続いては、応援団です。今年は派手な演目があるみたいなので、期待大です!!準備して下さい!!)
会場のどよめきを抑えるように、司会者は進行する。
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私達はテントに戻った。
さっきのは何だったのだろう。
嬉しい…?然し、兄弟ってバレても良かったの…?まぁ、声優が本業だし、知らない人もいるだろう。そこ迄、心配しなくても…………
「ねぇ!さっきのホント?」「マジかよー!サインって貰えない?」「奏くんってそういえば、良い声だよね。」「兄弟だけど、あんまり似てないなー」「声優さん目指すの?」
………やっぱり、囲まれてるぅーー!!
「あっ、えっと、そうなんだけど…」
西野くん困ってる。見てらんないよ…。
「西野くん!先生が呼んでたから、行くよ!」
私は西野くんの腕を掴み、校舎に向かって連れて走った。
「え?あ、うん。」
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空っぽになった校舎は、2人だけの足音が響く。
「先生どこだって?」
「ごめん。嘘ついた。」
「どういう事?」
「えっと~、困ってるみたいだったから…。さっき、私が借り物競争で西野くん連れてったから、草間さんと兄弟ってバレてあんなに皆に、詰め寄られて…。」
「心配してくれたんだ。」
「いや、心配というか…なんというか、、」
「あのさ、サボろうかな?」
「へ?」
いい声が校内に響く。反響が大きくて、小さな声でもよく聞こえる。階段を登る職員用スリッパが脱げそうで、パタッ。パタッ。と音が立つ。
「運動苦手だし、お兄居るとやりづらいし、それに…」
「それに?」
「渡辺さんとなら楽しそう。」
「/////何言ってるの!?流石に怒られるよ!?」
「別に、怒られてもいいよ。渡辺さんはどう?」
「どう?って言われても…」
「じゃあ…お願いなら良い?」
なんてこと言うんだよ!!その声で…そんなセリフ!耳取れちゃうよッ!!!!
「/////わ、分かった。/////」
西野くんの後ろをついて行く。今私はどんな顔をしているんだろう。ゆっくり歩く後ろ姿にニヤついているはず。絶対に。だって〜///頭の中でさっきの言葉がリフレインしてるんだもん/////!!
「ここに来たかったんだ。」
入ったことの無いドアを開けると、広いコンクリートの床。低い柵に囲まれていて、天井は青空。
「ここ…屋上?」
「ううん。屋上ではないんだけど、屋上みたいな所。たまたま見つけたんだ。」
「ああ~!!図書室の上になるんだ!!」
校舎の形がちょっと特殊で、一部が出っ張っている。そこが丁度、図書室。その上ってこうなってるんだ。そっと下を見ると、足が竦む位の高さはある。
キュッと腕を掴まれた。
「あんまり端に行かないで!危ないから。」
「/////あ、うん。」
いちいちドキッとするじゃない!!もうっ!!
「いい天気だね。」
「うん。」
寝転がった西野くんがポンポンッと自分の横を叩く。
「一緒にどう?」
どうした!?今日の西野くん変だよ!?あまりにもいつもと違い過ぎて、勘違いしそうだ。
「お、やっ、え、うん。/////」
もう、返事もまともにできなくなってる。
ころりと寝っ転がると、宙に吸い込まれそうな位、雲一つない青が広がっていた。暑苦しかったのに、急に爽やかな風が吹き抜ける。
「気持ちいいね!」
横を向いて、西野くんに話しかけた。
「良かった。」
風に靡くはちまきを巻いた西野くんの笑顔と声は、私の心臓を貫いた。
「あのさ、聞いてほしい事があるんだけど。」
コンクリートに座り直した西野くんは真剣な眼差し。私もムクリと起き上がり、座る。
「何?」
夏の暑い空気が漂う中で、少しの緊張を誤魔化すように風が吹いた。
「えっと、その、…渡辺彩葉さん!」
「はい!!」
え、なんでフルネーム!?
「僕……!!渡辺さんのことっ!! 好きなんです!!」