初恋と脳内補正
僕の両親は再婚で、年の離れた兄がいる。兄は僕が小さかったこともあり、本当の兄弟の様に接してくれた。再婚後、父の仕事の関係でいわゆる転勤族となった。この街にも小学5年生の時来たことがあった。1年だけ。
転勤族故に、直ぐに離れ離れになるのが寂しくて、其れまで友達を作る気は無かった僕は、何事にも無関心で素っ気なくて憎たらしかった。そんな僕にも明るく、分け隔てなく接してくれた人がいた。段々、一緒に遊ぶようになって友達になった。ただ、僕は一方的に好きになった。
丁度その頃、兄は声優になった。名も無い友人Bみたいな役だった。それでも兄の名前が画面に映ったときは、凄く嬉しかった。
でも、好きな子が「あのアニメの声が好き!友人Bの役の声だよー知らない?」と嬉しそうに話してた時、僕の初恋は音も無く終わりを告げた。友達のまま。
憶えてないだろうな…。
「じゃあ、今日はここまで。次回までにプリントやって来いよ~」
「えぇ~」
お決まりクラスのブーイング。
「以上、日直〜」
先生の号令で授業が終わった。
「ねぇ、教えてー萌々〜」
勉強は得意では無いんだよね〜。特に数学と、科学、英語、と体育、国語…ほぼ全部だな。
「私も分かんないよ〜そういえば西野くんって学年1位なんだよね?教えて貰えるかな?」
なんと!萌々ナイス人材チョイス!
ちょっと離れた席で俯く姿はまさにモブキャラ。声かけにくいよ~(さっきのダメージが癒えてないんだよ~!!)
「ねぇねぇ、コレ教えて欲しいんだけど彩葉も一緒に。」
凄い、萌々。ちゃんと聞いてくれるんだ。キュン♡そしてありがとう…!!
「良いってー。じゃあ、この後って2人共委員会だよね?私ヒマだから、図書室行くよ!!それで良い?」
「大丈夫です。」
「じゃ、後で〜」
トントン話が決まる。普通か…。精神鍛えねば!!
図書室はあまり使う人も少ない。高校生になればこんなもんなのかな?
「ここはさっきの公式使って、解いて。……」
静かな部屋に響く声が耳を擽る。そして、前から西野くんの声、左から萌々のカワイイ声。いつもより近いから正気を保つのがギリ…デス。気を抜いたら飛ぶぞっ!!
「ありがとう。すっごい分かりやすかった〜じゃあ、私は帰るね!委員会頑張ってね!また明日〜」
萌々はすっきりした顔で図書室をあとにした。
どうする!?この後10分まだ居なきゃいけないんだよ~!萌々〜最後まで居てよ〜
「分かりにくかった?ごめんね。」
「ううん、ううん。凄く分かりやすくて、ありがとうゴザイマス。」
不意に喋らないでよ〜!!なんか、変な感じになったけど大丈夫か…?チラッと顔を見て驚いた。
ふわりと笑った顔。
「…くくっ…良かった。」
放たれたその台詞は心臓に突き刺さった。
窓風が薄いカーテンを揺らし、西日が差し込む。差し込む光が髪色までも染め、風がふわっと西野くんのモジャ前髪を掬い上げる。いつもは見えなかったその素顔を私は初めて見た。瞳は褐色で切れ長。よく見れば鼻も高いし、なんだ!このイケメン!!
「(小声)カッコいい…」
「ん?」
ヤバい!声出てた!? ってか、声だけじゃなくて見た目もカッコいいの?こういう時って人はどうして、顔を手で覆うのだろう。そのくせ、指の隙間から覗き見る。理性と本能の間と言うものか…!!もう一度隣に座る姿を見ると、いつもの俯く西野くん…だ…。
もうっ!10分が長いよ〜
チャイムが私の理性を迎えに来てくれた…助かったー。
「じゃあ、またね。西野くん。今日はありがとう。」
よしっ!ちゃんと言った。帰ろう。これ以上の長居は大変だ。
「うん。…」
返事を聞くか聞かないかで図書室を後にした。
ずっと、あの顔が頭に浮かぶ。うぅ〜どうしよう〜声よりも、顔なの?いつの間に面食いになった?違う違う!私の推しは声なのに〜しっかりしなさい!!私!!そう、声。声が良いから推している。第一に声!顔は二の次なんだ!2次元ならまだしも…。あっ分かった!!私の脳内補正が勝手に、声を聞いてイケメンにしてしまったんだ!なぁ〜んだ。そっか、そっか納得だ。
「東夏高校の生徒?」
聞き覚えのある声だった。
「草間さん…?」
「西野奏、居る?」
えっえっえーー!!!何でこの人が、ココに居るの〜〜〜!?!?そして、何で西野くんを知ってるのーーー!?




