第5話 隔絶された場所
会議室と呼ばれる部屋に入ると長いテーブルが置かれておりそれを囲むように7つの立派な椅子が置かれていた。
俺は他のみんなが椅子に座っていくのを見て空いている椅子に座った。
「それでは始める。まず今回のオラリアム村襲撃はファーリアス王国が犯人で間違いない。恐らくだが農地を狙っての行動だったのだろう。きっとファーリアス王国は再び襲撃を行ってくる。それを事前に阻止する必要がある。そこで私達でファーリアス王国に偵察に行こうと思う」
「少しよろしいでしょうか」
「なんだレディロス」
レディロスは発言を許されると眼鏡を一度触り話し始めた。
「ファーリアス王国に偵察に行くのでしたら王国の最も外側の絶界区が良いかと。それと全員で行くのではなく一人で行ったほうがバレにくく安全かと」
「確かにそうだな。ではレディロスの言った計画で行う」
サンドリーヌ様は立ち上がりそう言った。
「だったら偵察はクロノに行かせては。再度実力を推し量るにも最適な機会だと思いますが」
「クロノはそれで構わないか?」
正直言うと面倒くささはあるが最強の幹部になるためには必要な過程だよな。
それにこの世界についてや魔法について知れるいい機会かもしれない。
「わかりました」
「本当か。それでは期待している」
ファーリアス王国の最も外側である絶界区の偵察に行くのは俺に決まり会議は短い時間で終了した。
他のみんなが会議室を出ていく中俺は椅子に座ったままでいるとレディロスが話しかけてきた。
「そう言えばクロノさんサンドリーヌ様の事を知らなかったようですが…」
「田舎の方から来たから知らないことが多いんだ」
いきなりその話しをしてくるとは少しびっくりした。
だがこれはこの世界について教えてもらえるチャンスなのでは。
「この世界について知りたいんだが…」
「構いませんよ」
よし、どうやら上手くいったようだ。
レディロスは俺の隣の椅子に座り話し始めた。
「この世界には現在サンドリーヌ様を含めた6人の魔王が存在します。それを六大魔王と言いその者達は各々の目的をもって領地を手に入れ支配します。サンドリーヌ様の目的は世界を平和にしみんなが幸せに暮らせるようにすることです」
それはまた壮大な目的だ。
「サンドリーヌ様以外の魔王は力と権力で多くの者を支配しています。サンドリーヌ様はそれが許せないのです。しかし敵は魔王だけでなく同盟関係を結んでいない諸国も敵の為少しばかり難航しているのです」
この世界はどうやら中々に酷い世界なのかもしれない。
でもその中でサンドリーヌ様はただひとりで平和に変えようとしているのか。
「ですが最近ではいくつかの国がサンドリーヌ様に賛同し支配下に入ってくれることや同盟関係を結んでいただく事も多くなりました。しかし同盟を結んでいない多くの国では奴隷制度、平民差別、女性差別などが絶え間なく存在しています。平和とは単に話し合いだけでは解決出来ません。時には武力による制圧が必要なのです。そのために私共がいるのです」
六光は今回の様な防衛や武力による制圧が仕事と言うわけか。
魔王幹部ってかっこいい。
「ところでファーリアス王国の絶界区って何なんだ?」
「絶界区とはファーリアス王国の最も外側に存在している区です。絶界区はその外にすら出ることを許されない下民、言わば奴隷などが多く存在しているところです」
奴隷か。
助けることが出来たらいいけどそんな事が出来ているなら今頃平和か。
「教えてくれてありがとう」
「いえ、また何か聞きたいことがあったら遠慮なく言ってください。では私はこれで」
レディロスは立ち上がり部屋を出ていった。
@ @ @
何やら声が聞こえてくる。
「クロノさん、起きてください! 時間です!」
俺に声をかけてきていたのはミールだった。
それとどうやら俺は会議室で寝てしまっていたようだ。
「どうしたんだ?」
「偵察に向かう時間です! 来てください!
もうそんな時間になってしまったのか。
俺はミールについていき部屋を出た。
「よし来たか」
オラリアム村から帰ってきた時についた大広間の様なところに行くとサンドリーヌ様とレディロスが待っていた。
「すいません。少し寝ていて」
「構わない。それよりクロノ、無事に帰ってくるんだ」
「わかりました」
サンドリーヌ様は俺の肩をポンポンと叩いた。
「時間が経ったら再度ここに戻す。レディロス頼んだ」
「承知しました。特異魔法、テレポート」
@ @ @
絶界区につくとまずとんでもない汚臭で鼻がやられかけた。
この汚臭の正体は落ちているゴミやそこらに倒れている者が原因なのだろう。
それにしても暗い。
明かりは月の光しかなくなんとも寂しい場所である。
俺が前に歩き始めると横に倒れていた男が声をかけてきた。
「助けてくれ……」
だが俺には今はまだ助けるすべがない。
男を無視しさらに奥へと進んでいく。
すると複数の男の声と一人の女性の声がどこからか聞こえてきた。
俺はそれがどこから聞こえてきているのか探しながらさらに前へと歩いていく。
ひとつの建物を通り過ぎようとした時、その建物と建物の間から声が聞こえてきた。
「やめてください! 夫と子供もいるんです!」
「でかい声出すんじゃねぇよ」
一人の男は女を殴りもう二人は壁に女を押さえつけていた。
何をしているのだか。
俺はその場に立ち止まりただその光景を見ていた。
「今日はお前の番なんだよ。何の為に俺らがこの仕事してると思ってんだよ」
「いやっ! いやだ!! やめて!」
「さっき言ったことがわからないのか!」
男はまた女を殴った。
こんな者まで生かした状態で平和にしていいのだろうか。
今この光景を見てサンドリーヌ様の考えに全て賛同することは出来ない。
だから――
「触らないで…!! やめてっ!!!」
「お前らしっかり抑えてろよ。よーし始めるぞ」
「誰か助けてー!!!!!」
悪は一人でも多くこの手で殺し平和にする。
それが俺の目指す平和だ。
「フッ」
俺は男達を嘲笑うように鼻で笑った。
すると男達は俺がいることに気づいた。
「なんだお前は!!」
「邪魔するんじゃねぇ」
「もしかしてお前は最近入ってきた新入りか」
三人が言っていることは全くわからない。
わかろうともしていないが。
「助けてください! お願いします!! なんでもしますから!!」
「なんでもか」
「はい!! なんでも」
「どうでもいい」
「え…」
なんでもするとは言っているが絶界区にいる者になにが出来るというのだろうか。
例えば俺がここで大金を要求しそれを支払えるのか。
出来もしない事を平気で言うことは愚かだ。
「残念だったな。助けてもらえないらしいぜ?」
「これは傑作だな」
「助けてもらいたければしっかり価値をしめさなきゃな。俺らがその価値を示す手伝いをしてやるよ」
男達は俺を無視して再び女を襲い始めた。
「助けて…」
「フッ」
俺は再び鼻で笑った。
そして暗闇の中から黒く染まった剣を取り出した。
「面白い!」
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