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南蛮船を作ろう

実際に南蛮船を作るには、どうすれば良いのか。

本来であれば、造船技術を持つ南蛮人を宣教師に紹介してもらうのだろうが、現在は1333年で、ポルトガルのエンリケ航海王子(1394年~1460年)すら生まれていないからな。

試行錯誤して、それっぽい物を作るしかないか。

ということで、まずは船大工に南蛮船の模型を作らせることにした。大きさは24分の1くらいが良いかな。

ちなみに、俺は前世で戸田造船郷土資料博物館(静岡県沼津市)に行ったことがあり、そこで実際にヘダ号の模型や設計図を見ているので、多少あやふやなところはあるが、設計図も模型も問題なく作れるぞ。

集めた船大工たち向かって、俺はこう言ってのけた。

「俺は、今まで色々な物を作り、これからも新しい物を産み出していくつもりだが、これらの品物は日本だけでなく海外でも販売しようと思っている。そもそも、日本では唐物などの舶来品を最上として国産品を下に見がちだが、これは不当であるし悔しいとは思わぬか?俺は、日本で作られた製品も海外で十分通用すると思っている。だが、外洋を航海するのに十分な強度を持つ船が、この国には無いのだ。外国から来た商人に品物を売っても、安値で買い叩かれるだけさ。やはり、日本人自らが海外に打って出て、外国人と直に取引をする必要があろう。日本には、頑丈で外洋を安全に航海できる南蛮船が必要なのだ。俺のためというより、この国のために南蛮船を作ってはくれないか」

船大工の寅吉、藤蔵、太郎兵衛ら進み出て曰く。

「「「義貞様のお志に大変感動いたしました。南蛮船作りには、ぜひ我々をお使い下さい」」」と。

「よーし、じゃあまずは模型作りだな。それが上手くいったら、実物の建造に移るぞ。半年以上かかる作業になると思うが、よろしく頼む」

「「「承知いたしました」」」

そういうわけで、俺の陣所である勝長寿院の一室を作業部屋にして、疑問があればいつでも俺に質問できる様にした上で模型作りを開始したのだった。

「ようお前ら、和船と南蛮船の大きな違いは『竜骨の有無』というのは分かっているよな」

「竜骨というのは、船首から船尾まで船底中央を縦に貫く強度部材のことですな」

「竜骨から横に伸びる肋材は、蒸して曲げるのだぞ」

「承知しております」

「船首水線下に衝角をつけろ。海賊に襲われたとき、体当たり攻撃をして敵船を沈めるのだ」

「まあ、武装なしで商船が航行するなど、襲ってくれと言っているようなものですからな」

「あとは・・・、分からぬことがあれば俺のところまで聞きに来い。一緒に考えてやる」

そんな感じで模型作りは無事終了したのだが、南蛮船建造に必要な資材・道具と作業員を集めるのは予想外に時間が掛かり、結局船の建造に着手するのは七月下旬以降となってしまった。

つまり、俺は寅吉たちが船造りを始める様子を見ることなく、鎌倉を発つ羽目になってしまったのである。

それもこれも、八月五日に御代始めの除目と論功行賞を行うなどと言い出した帝(後醍醐天皇)のせいなのだが、さすがの俺でも最高権力者の命令には逆らえないぞ。

まあ、早いところ俺から鎌倉を取り上げたいという権力者(後醍醐天皇や足利尊氏)の気持ちも、十分分かるけどね。

ということで、船の建造については寅吉たち船大工に任せることとなった。

史実だと、中先代の乱が発生するのは1335年7月なので、あと二年は平和なはずだ。

二年という時間は、南蛮船一隻の完成に要する時間としてはお釣りが来るレベルであろう。

「うーん、年末までには完成した南蛮船を見たいものだな」

「義貞様、南蛮船が完成次第、我らは鎌倉を出港いたします。その後は海を西に進み、渡辺津(大阪市中心部)にて義貞様と再会することをお約束しましょう」

「そうだな、それが良いな。その際は、船の建造に関わった人間や道具類全てを運んできてくれ。京の近くに新たな南蛮船建造場所を用意してやろう。あと、これから鎌倉に来る足利直義には気をつけろよ。多分、探りを入れたり口出ししたり、色々ちょっかいをかけてくるはずだ」

「我らは海の男ですぞ。そんな横やりに動じる者など、一人もおりませんよ」

「それを聞いて安心したよ。それじゃあ、頼んだぞー」

こうして南蛮船建造を船大工に丸投げした俺は、新田軍一万とともに京へ向けて出発するのだった。

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