ガラス製品を作ろう
新田義貞(五領徳業):主人公。新田義貞に転生して、犬死人生を回避するため悪戦苦闘する。物語開始時33歳
祟り神(新田義貞の怨霊):ネズミや天狗を使役することができる
船田義昌:新田家の執事
元弘三年六月二十三日
今まで、青銅砲(まだ完成していない)、コンクリート、醤油、麦芽糖等を作ってきたが、次は何を作ろうか。
やはりガラス製品かな。醤油や麦芽糖水飴の入れ物に使えるし、ガソリンを入れれば火炎瓶にもなるしな。
それに、ガラスの器は高値で売れそうだし、貿易品として海外に輸出するのも良いかもしれん。
というわけで、手の空いている鍛冶職人にガラスの器作りをさせることにした。
「(船田)義昌、ガラス作りの道具は用意できたか?」
「はい。義貞様に指示された通りの物ができたと、確信しております」
義昌はそう答えると、『るつぼ』『吹き竿』『木ゴテ』『はさみ』等を俺の前に運んできた。出来映えはどうかな。・・・特に問題はなさそうだ。
「義昌、よくやった。褒めてやろう。さて・・・」
俺は、鍛冶職人たちに視線を移した。
「これから、お前らにはガラス製品、日本では瑠璃と呼ぶのが一般的かな、を作ってもらおうと思っている。なあに、鉄を扱っているお前らなら、ガラス製品作りも問題なくできるはずさ。ちなみに作り方はこうだ」
①珪砂・木の灰・石灰をるつぼに入れて、木炭で熱する。珪砂・木の灰・石炭の質量比は、72:90:10とする(木の灰の炭酸カリウム含有量を20%と仮定した場合)。
②ふいごで木炭に空気を送って火力を上げると、るつぼの中のガラス原料が溶解する。
③ガラス原料を鉄の棒で絡め取って平たい石の上に広げると、平皿が完成する。吹き竿を使った花瓶作りなどは、いろいろ試行錯誤して完成品を作ってもらう(職人芸になるので、俺では手に負えない)。
「どうだ、簡単だろう」
「「すいません、よくわかりません」」
鍛冶職人の庄七と忠三郎が挙手をした。
「俺も知識として知っているだけで、実際にガラス製品を作ったことは無いんだ。俺の知る限りのことは教えるから、お前らは試行錯誤して、上手い具合にやってくれ。それでも分からないことがあれば、俺のところまで相談に来るが良い。お前らと一緒に、上手いやり方を考えてやる。ちなみに、俺は食器・花瓶・装飾品だけでなく、顕微鏡や温度計などの医療器具も作りたいと思っている。言っておくが、ガラスはお前らが思っている以上に、無限の可能性を秘めているぞ。俺の知識を用いて革新的なガラス製品を作り、世の中をより良いものへと変えて見せよ。革新的な品であれば、日本のみならず海外でも飛ぶように売れることだろう。俺は、世の中を良くするための金稼ぎは、進んで行うべきと考えている。つまり、世の中を良くするような品を海外に売りさばいて外貨を稼ぐことは、正義なのだ。もし、俺の言うとおりになれば、世の中が良くなった上で日本の銭不足も解消されて、良いことずくめではないか。鍛冶職人たちよ、俺とともに新たな扉を開き、新時代の旗手となるのだ」
俺は、鍛冶職人たちにこう言い放つと、本来の仕事である着到状・軍忠状へのサイン書きに戻るのだった。
えー、この時代もそうだけど、基本的に日本って物価が安くて貨幣価値が高いんだよね。
言い換えると、貨幣の流通量が絶対的に足りないのである。
本来、朝廷もしくは幕府が銅銭を発行すべきなのに、銭はケガレたものとでも考えているのだろうか、天皇も貴族も幕府すらも銅銭を作ろうとしなかった。
多分、為政者(皆、儒教を学んでいるよ。後醍醐天皇や楠木正成の行動には、朱子学の影響が見られる)にとって通貨など必要悪で、できるだけ関わりたくなかったんじゃないかな。
であるから、賤しい銭を扱う商業は悪で、商人は『人を騙して儲けている悪人』ということになるらしいぞ(逆説の日本史15によると、儒教の中でも、朱子学は特に農業を重視して商業を蔑視(貴穀賤金)する傾向が強いそうです)。
ちなみに、世界の伝統的な宗教は基本的に商業を悪としているので、ここから脱却できないと資本主義が発展しない、すなわち近代国家に移行できないことを意味するのであった。
話を元に戻そう。
民間レベルでは、日元間の交流は盛んだったようだ。
何しろ、元で銅銭を購入して日本に持ってくるだけで、その価値が4~5倍に増えるのだからね。多少の危険など、物ともしないわけだ。
ただ、日本の平底船で海外貿易に打って出るのは危険すぎるよな。
竜骨なしの平底船じゃあ、大嵐に当たれば木っ端みじんになるんじゃないかな。
やはり、竜骨有りの南蛮船が欲しいよな。
うーん、南蛮船か。
次は、船大工を集めて南蛮船作りに挑戦してみるとするか。
南蛮船は、貿易だけでなく海戦でも役に立つしね。