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鎌倉幕府の滅亡

五月二十二日、新田勢は鎌倉へ乱入し、周囲からは火の手が上がった。

大仏貞直・金沢貞将・普恩寺信忍ら、最後のイクサをせんと寡勢を率いて防戦するも、衆寡敵せず一人残らず討ち果たされた。

東勝寺に立て籠もる北条高時以下一族二百八十三名は、もはやこれまでと皆自決して果てたのであった。

この日、北条家九代の繁栄は一時に滅亡し、逼塞を余儀なくされていた源氏は本懐を遂げることとなったのである。驕れる者は久しからず。『天と地は、驕れる者を助けない』のが道理ではあるものの、目前の悲劇を見た人々の中で涙を流さぬ者はいなかったという。


こうして鎌倉幕府は土地問題や貨幣経済への移行に対応しきれず滅び、しかもそれは不可避(当時、誰も解決策を知らなかったからです)だったと今まで記述してきたわけだが、今後は建武の新政がなぜ崩壊したのか、一見大化の改新から天武朝にかけての改革と似ているが、天智・天武の改革は成功して何故後醍醐の改革は失敗したのか、その理由について明らかにしていきたいと思う。


※鎌倉幕府滅亡の原因

①御家人の貧窮化に対し、根本的な対策を取れなかった。

②武装商人(悪党)を幕府に組み込むという発想がなく、徳政令を出すことで彼らを敵に回した。

③元寇の際、御家人や朝廷・寺社に十分な恩賞を出すことができなかった。


◇後醍醐視点◇

フッフッフ。ついに、祈祷の力で幕府を滅亡させることに成功したぞ。

そもそも、東夷である幕府など存在自体が悪なのだから、もっと早く潰れてもおかしくなかった。

それなのに、持明院統の連中が皇位を得るため幕府にすり寄るから、必要以上に幕府がのさばる羽目になってしまったのだ。

幕府が悪なのは言うまでもないが、朝廷も駄目だ。

本来、科挙によって選ばれるはずの官僚が、全て世襲されているのも良くない。

日本に導入された律令も、本来あるべき姿からかけ離れた別物に改変されている。

全てを正しいものに、日本を本来あるべき姿である『天皇親政の国』に造り替えねばならぬ。

この改革は、絶対成功するであろう。

天皇家は有徳の家系だからこそ万世一系で今まで途切れることなく続いてきたわけであるし、有徳すなわち真の王者である天皇が親政を目指すこの改革は正義だからだ。

最も徳のある者(即ち後醍醐)が日本に君臨し、王者を支える官僚(次に徳のある者)は科挙で選抜する。朕の御代に必要な者は士大夫であって、貴族も武士も不要じゃ。

こうして徳治主義が日本に浸透すれば、民は平和を謳歌し、朕を称賛する声は国中にあふれるであろう。そんな世の中を早く見たいものじゃ。


※朱子学によると君臣の関係は絶対であって、そうでない社会(北条家が天皇家の上位に来る体制)は悪で、倒幕(悪を正すこと)は正しいということになるそうです(大義名分論)。あと、この時代の倒幕勢力は、幕府をエビス、すなわち野蛮で劣悪なものと決めつけ、倒幕は正しいことだと理論づけていたようです。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇


◇足利直義視点◇

「なんと、足利家の手助け無しで、義貞が幕府を滅亡させてしまっただと」

岩松経家から報告を受けた直義は、顔を青くして頭を抱えた。

「これでは、六波羅を落としたあと鎌倉を攻めて幕府を滅亡させ、兄上の勲功を比類なきものとした後に満場一致のもとで兄上を征夷大将軍に就任させるという、私の計画が台無しではないか」

直義は、落ち着かぬ様子で部屋の中をうろうろする。

「とにかく、義貞の評価を下げて恩賞も減らすため、何か策を弄しないといかんか。全く情報が足りぬぞ。誰かおらぬか」

「「ははっ、直義様。お呼びでしょうか」」

「今すぐ鎌倉に向かい、義貞の好みや戦法など、全てを調べあげるのだ」

「「承知いたしました」」

「うーむ、義貞を軍事部門から切り離すよう、三位内侍(阿野廉子)に工作してみるか。ええい、兄上は今何をしておる」

「「幕府が滅んだと聞いて、佐々木(道誉)殿、土岐(頼遠)殿、高師直・師泰らと酒盛りをなさっておいでです」」

「この大事な時に酒盛りとは・・・。すぐ兄上の下へ向かうぞ」

この後、宿命のライバルとして義貞が高氏の前に立ちはだかることを、直義はまだ知らない。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇


第一部 完

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