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オッサン、ゲームの世界に逝く

とりあえずボチボチと

死は誰にでも訪れる。


究極的には年齢も関係なく、場所も時も選んでくれない。


老衰もしかり、交通事故や殺人、自殺だってあるだろう。


その理屈で言えば、例えば自室で真っ裸でPCゲームをしている時、隠しボスを倒した瞬間にテンションが上がって立ち上がった瞬間、バランスを崩してディスプレイに頭から突っ込んで死ぬ事だってあり得るわけだ。


……うん。俺の事だ。



しかもさらに残念な事に、真っ裸でしていたゲームはいわゆる乙女ゲームだ。

いや、別に俺はキラキラなイケてるメンズ達に囲まれて興奮をするタイプではない。


このゲーム、ストーリーとしては100億回は聞いた陳腐なシンデレラストーリーなのだが、RPGとしては非常に素晴らしい自由度とゲーム性を確保されていると有名なゲームだった。


無名な会社ながらも、その作り込まれた世界観やゲーム性で今年1番の話題作とネットでも有名な作品だ。



ちなみに全裸なのはたまたまである。

誰だって自分の部屋では自由を謳歌したくなるものだ。


…いや、単にオカズ探しの合間にゲームを起動してそっちにのめり込んでしまったのが原因だったのだが…。



何にせよ、俺はPCディスプレイに頭から突っ込み、さらに運の悪いことに逆ギロチンの様にディスプレイの縁が俺の首に突き刺さってしまった。



俺は薄れ行く視界の中で虚空に手を伸ばした。



せめてあのゲームだけは消さないと…!



俺の頭はその一言でいっぱいだった。



何故なら俺の死後、この部屋に入った人はこの状況をどう見るか?


どう考えても、乙女ゲーをしながら自慰行為に励んでいたイケメン好きのオッサンがテンション上がりすぎてディスプレイに頭を突っ込んだとしか考えられないだろう。


残念な事に半分くらいは事実ではあるのだが…。



全裸で死ぬ事はもうしょうがない。

年間数万人はいるであろう(推定)自慰死(テクノブレイク)被害者が1人増えるだけだ。


いや、別に自慰死(テクノブレイク)じゃあないけど。




せめてBL愛好オッサンの全裸自慰死(テクノブレイク)と言う不名誉は少しでも軽減せねば!!


せめて…!


「――せめて、ドキドキめもりある~封じられし聖魔の箱~だけでも!!!」



高山誠(39)独身。


それが俺の今際の際の一言となった。

南無!!




「だぶばぶばだぅばあ!!(ドキめもだけでも!!)」


俺の悲痛な叫びが部屋に木霊する。


そうだ!せめてドキめも…ん?だぶばぶば?

あれ?俺は今なんて言った?



霞む目を凝らすと、柔らかいベットに寝かされていた。


も、もしかしてここは病院――?


周りを見渡すと自分の手が目に入る。

あ、あれ?なんでこんな手が小さいんだ?

まるで赤ん坊の様な…。



「あらあらあら!アル坊ちゃん!お目覚めになられたんですか?」


歳の頃は多50歳くらいか?

シンプルな黒のワンピースの上に白いエプロン。

いわゆるメイド服を着たおばちゃんが俺を抱き上げる。


「さぁ、マーサと一緒に散歩に行きましょうか」


いや、まぁ確かに?

メイド=若い女の子と言うのはフィクションの話だとは知識では知っているが、こう様々と現実を見せられると中々来るものがあるな…っていや、現実ってなんだ?

お前は誰でここはどこなんだ!?


なんで俺は赤ん坊なんだよ!?



ばぶばぶと混乱する俺(推定赤ん坊)を他所にマーサと名乗るおばちゃんメイドは俺を抱き抱えたままスタスタと部屋の外に出た。


「ほら!アル坊ちゃん。旦那様と奥様の肖像画ですよ。」



長い廊下を抜け、吹き抜けの大階段に設置されたこれまたデカい壁一面に、夫婦が描かれた大きな絵が飾られている。



いや、ホントに広いなこの家!

と言うか屋敷か!?


俺が寝ていた部屋からここに来るまで5分は歩いたぞ!?



そこに描かれていた夫婦には見覚えがあった。


スキンヘッドでカイゼル髭の大男と金髪金目の超絶美人だ。


やけにゴテゴテと着飾った、まるでプロレスラーの様な筋肉隆々の男は、マーサ曰く俺の父親らしい。


その横にいるのは母親か。

ロングの金髪と少しタレ目気味の金目が美しい。

多少誇張もあるかもしれないが、ボンキュッボンのモデルのような高身長の美人さんだ。



あれは確かアレックス・アーネスト子爵…!?

軍部の特務大佐じゃあないか!

その横にいるのはエマ・アーネスト准将だよな?

ドキめもに出てくる王国貴族の…。


それに今このおばちゃんメイドは俺の事をアルって…。



ま、まさか俺はアル?

アルフォンス・アーネストなのか!?


う、嘘だろ…?



――ドキめもに出てくる噛ませ犬の取り巻きAじゃねーか!!!


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