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レムナス信者、勧誘で魔王城へ

作者: 夏果

「あなたは今、幸せですか?」

「は?」

「何とまあ、幸の薄そうな顔です、さぞお辛い思いをしてきたのでしょう」

「喧嘩売ってんのか? お前、つーかお前誰だよ?」

「あ、はい、すいません申し遅れました。これ、名刺です」

「レムナス教、教団員エリシア=ウインター?」

「はい、今日はこの素晴らしきレムナス教のお話をさせて頂きたく訪問をさせて頂きました」

「つまる所、宗教の勧誘だろ? お前、ここどこか分かってる? 魔王城、魔王の間だよ? スーツにハンドバックで来るところじゃないんだよ」

「宗教に種族、格好は関係ありません、信じるものがすべからく救われるそれがレムナス教です」

「ていうか門番いたよな? あいつまたサボってんのか?」

「……邪魔するのがいけないんです」

「ハンドバックから血まみれのメリケンサックが覗いてるぅ!」

「レムナス教は立ち塞がる全てを撃滅します」

「さっき『すべからく救う』とか言ってなかったか?」

「……『信じるもの』だけです、彼は信じていただけなかったので……大丈夫ですよ、レムナス教は不殺がモットーですので殺してません」

「暴力がOKなのは気になるが、とりあえず死んでなくて安心した」

「やはり気になりますか、レムナス教が」

「会話してくれてないあたり、もう不安なんだが」

「不安……分かりますよ、でもそんな不安もレムナス教が解消してくれます!」

「分かってねぇ! お願いだから会話してくれ! その不安はお前の言動とレムナス教からなんだよ!」

「パンフレットです」

「聞けや!」

「はい、何でも聴きますとも」

「やっと噛み合った。いや噛み合ってるのか? これ」

「今、悩んでることってありますか?」

「悩んでることねぇ……あ、それなら最近勇者の奴が何度も来やがるから鬱陶しいかな」

「勇者……どんな方なんですか?」

「えっと、そうだな……身の丈ほどの馬鹿でかい剣持ってる男なんだけど」

「もしやその方、吊り目ではございませんか?」

「知ってんのか?」

「『邪教を勧めるとは……お前、魔王軍か?』と言いやがりましたので、ぶん殴りました。多分まだ下の階でのびてると思います」

「弱いなぁ、あいつ」

「神聖なレムナス教を邪教扱いするとは……一族郎党メリケンサックのサビにしてやりましょうか……」

「そういうとこだぞー邪教扱いされてんの」

「他に悩んでいることは?」

「そうだな、勇者の代わりに来ている方に早急にお帰り頂きたいな……おい、あたりを見渡してもお前しかいねぇからな?」

「なるほど、私の前に他の方がここに来られーー」

「ーー今日来たのはお前一人だよ」

「ーーすみません、そのお悩みは私には解決出来そうにありません」

「当人だろお前、出口はあっちな」

「なぜそんなに避けるのです!? レムナス教について私まだ何も説明していないというのに!」

「お前の言動で大体想像つくんだよ……街でも煙たがられてんじゃないのか? お前ら」

「…………グスッ」

「な、泣くなよ、図星なんだな……」

「なぜ人は分かり合えないのでしょうか……私たちは教えを広く知らしめるべく、教会に対してテロ活動をしたりしているだけなのに……」

「テロとデモは別物だぞ、過激派じゃねーか、そりゃ分かり合えんだろ」

「そうだ! レムナス教と魔王軍、嫌われ者同士手を組みましょうよ!」

「え、やだよ、俺もお前嫌いだし」

「なんで……グスッ……そんな……グスッ……ひどいこと言うんですか……」

「お前……手に目薬隠し持ってんな……さっきのも嘘泣きかよ」

「チッ……バレたら仕方ありませんね」

「やってることがどこまでも外道……」

「仕方ありませんね……今なら入信に特典をつけますよ!」

「それ入信を迷ってる人間にしか効かないからな?」

「では一つ目、魔王軍って武器が要りますよね?」

「さっきのメリケンサックじゃねーか! 凶器を押し付けんな!」

「二つ目、魔王軍って人員が要りますよね? 私がーー」

「ーー要らん!」

「で、ではこのメモ帳を」

「グレード一番下じゃねーか……こんなメモ帳誰が欲しがるんだよ……裏紙を再利用してるし……ん? この裏紙つなぎ合わせると……もしかして魔法陣……か? おい、お前これどこで手に入れた?」

「え? うちの倉、整理してたら出てきたやつですけど?」

「ま、間違いねぇ……これ古代魔法(ロストマジック)だ……しかもかなり強力な……これがあれば、世界征服も容易に……」

「そ、そんな強力なものなんですか!? 私、紙ガシガシ裁断しちゃってますけど、大丈夫ですか!?」

「繋ぎ合わせれば使えるから大丈夫だ」

「これがあれば私たちを馬鹿にした教会にギャフンと言わせることが!?」

「スゲェ魔法陣なのに使い方のスケールが小せぇ……」

「ーーそうと分かれば、えい!」

「あ、返せ、このっ!」

「返せも何も元々私のですーこれが……これさえあれば……レムナス教が悲願を遂げることが……」

「待て! その魔法は発動する為に手順が必要だ! 俺と手を組もう!」

「レムナス教に入りますか?」

「入る入る!」

「ふむふむ、なら仕方ないですね!」


この後、レムナス教と魔王軍が世界を支配する……ことはなかった(メモ帳が数枚使われており魔法陣が完成しなかったため)。 

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