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裏山の錆びた巨人

7


「ケーチ、貴殿は機構人を使って村人の手伝いをするのは辞めるべきだ」


フロイデルさんは俺にむかって言った。


「不満そうだな。村人の手伝いをするな、と言っているわけではない。だが、これまでのように機構人を使い続けているといざという時、さっきのようにエネルギーが無くなって動けなくなってしまう。ドラゴンが村の近くに居ると予想された今、エネルギーの無駄遣いはやめた方が良い。それに貴殿がそんなに頑張ったとしても、損耗した部品や潤滑油の交換などのメンテナンスにかかる費用を村人が出してくれるわけでもあるまい」


悔しいが、現状ではフロイデルさんの言う通りである。俺は頷くしかなかった。


「ドラゴン自体が来なくともモンスターどもが村に来る可能性は高くなっているのだ。よく考えて行動するべきだ」


フロイデルさんと別れた俺は、動けなくなったグライドをその場に残し家までトボトボと歩いて帰った。歩きながら俺は色々と思考した。フロイデルさんに言われたこともそうだが、不可解なのは機人そのものの存在である。


魔法や魔導知性があるこの世界であっても、機人の存在は無理があるのだ。ヴァンデルワースより科学技術の進んだ元の世界ですらエーテルリアクターや生態慣性制御器官、ハイパーキャパシティのような様々なエイリアンテクノロジーがなければグライドは造れなかった。ましてや車すらまともにないこの世界で駆動モーターや様々な精密な部品などはどうやって手に入れているのか。

何か俺の知らない秘密が、この世界にはあるのだろう。


などと思考の迷路に陥った俺も、気がつくと家の前まで来ていた。


「ケーチ」俺を呼ぶ声がする。


見ると、アーウラさんが二階の屋根に足を広げ、腕を組み、正面をキリリと向いて立っていた。いわゆるガ○バスター立ちってやつだ。


「とうっ」


そう叫ぶと、ジャンプして二階から飛び降りた。空中でキレイに一回転し着地の時は片膝を立て足を大きく広げ片方の腕を後ろに伸ばし姿勢を低くする。アイア○マンなんかのアメコミヒーローが着地するときによく取るポーズだ。膝を痛めるから良い子はやらないほうがいいぞ。


しかし何気に運動神経がいいな、などと思い見ていると、今度は足を大きく広げ右手を斜め上に伸ばし左手は腰の位置に。ゆっくり右手を大きく回すと左手を右斜め上にビシッと伸ばす。


「へんしん」


異世界に特撮オタが生まれた。



「エリシエル、アーウラさんに何を見せた。いや、言わなくてもだいたい見当は付くが…」


「景一のビデオライブラリを私が特別編集した、名付けてエリシエルスペシャルバージョン、ヒーロー大全集、君は見たか!熱き英雄たちの姿とその戦いを!。です」


名前がなげーよ。


「アーウラさんはとても喜んで見てくれましたよ」


「ケーチ〜」アーウラさんが走ってこっちに来る。


どうやら機嫌は治ったようなので、とりあえずよしとする。



ーーーーーーーーーーーー


家に戻り、ギーベルグさんにモンスターを倒したことを報告する。


「そう言う訳で全てのモンスターは倒したのですが、俺の機体はエネルギー切れでしばらくは動けないのです」


「そうか、ケーチ君には危険な事をさせたようですまなかったな」


「いえ、エネルギー切れを起こしたのは俺の責任ですし、俺の機体アーメスは凄く頑丈だから外に出なければ死ぬようなことにはならないです。それより問題はドラゴンのことです」


俺がそう問いかけると


「ドラゴンはね、凄く大きくて口から火とかビームとか出すの。その上、空も飛べるのよ」


アーウラさんが口を挟んできた。って言うか、それってどんな怪獣だよ。


「俺も実際に見たことはないので聞いた話なのだが、ドラゴンは人間のように魔法を使い火を吐くというか、魔法で起きたエネルギーを放射してくるらしい。身体も相当巨大なものが多く、普通のものでも20〜30m(作者注 この世界では単位はメートル法ではないのですが、わかりにくくなるので単位はメートル法基準で記述します)大きなもので100m以上あるものもいるらしい。ドラゴンの全てが空を飛べるわけではないが実際に空を飛ぶ奴もいるとのことだ」


「フロイデルさんなら騎士だから、直接ドラゴンと戦ったこともあるだろうし彼に聞いたほうが詳しい話を聞けると思う」


ふむ、そうか。ドラゴンがいるかもしれないって言い出したのはフロイデルさんだし、彼ならきっと詳しい情報を知ってるはずだ。

しかし、また機人を村の開墾に使うなとか言われそうだし、どうしようかなあ。


「ねえケーチ、この前に私が見つけたやつを見に行かない?」


ああ、そう言えばモンスター騒ぎとかで何を見つけたのか聞けずそのままになっていたな。


「アーウラ、お前遊んでばかりいないで少しは畑の手伝いを…」


「行くよケーチ」


アーウラさんに手を引っ張られるようにして俺は外に連れ出された。



「フンフン、フフン♪」ご機嫌に鼻歌など歌いながらアーウラさんが歩いていく。


「いいのかい?逃げて来ちゃって」


「大丈夫、おとーちゃん私には甘いから」


やれやれ、ギーベルグさんも大変だ。


しばらく歩き西の裏山の方に向かう。途中で開墾中のタゴーサクさん達に出会う。


モンスターとドラゴンの件をタゴーサクさん達にも話す。


「そんな訳で、しばらくの間俺の機体は動かせない。エネルギーが回復してもドラゴンの防衛の為、開墾の手伝いは出来ないと思う」


「そっか。残念だが仕方ないな。まあ、機人が動かせないならケーチに直接働いてもらうしかないな」


タゴーサクさんはそう言ってガハハハと大口を開けて笑った。


「今日はモンスター退治で疲れてるだろうしゆっくり休みな」


俺は手を振ってタゴーサクさんは達と別れて歩き出した。


そしてようやく目的地に到着した。


裏山の開墾地の先は村人達もあまり入ってこないが、アーウラさんは食材を探しにここまで来ることがよくあるらしい。


そしてこれを見つけた。


それは巨大な機人の残骸だった。


「エリシエル、これは…」


「機体からかなり離れているので詳しくわかりませんが、端末のセンサーでは動かなくなってから100年以上たっているようですねえ」


「どう、すごいでしょう」アーウラさんがえっへんとばかりにない胸を張って威張っている。


「ちょっと調べてみるか」


コクピットの方に近づき、ハッチを開けようとした。が、錆びついている為なかなか開かない。


「ロックはされてないようだが、ここまで錆び付くと簡単には開かないな」


俺はパイロットスーツのパワーアシストのスイッチを入れる。短時間ではあるが、人力の数倍の力が出せる。


「よおし、いっちょやるかあ」


俺はハッチのノブにてをかけ、思いっきり引っ張る。


ハッチはミシミシ言いながら少しづつ開いていった。ある所まで行くとハッチは急にひらいた。


「うおっと」危なく転げ落ちそうになったが、なんとか踏みとどまる。


「ケーチ大丈夫?」


アーウラさんが心配して登って来る。


「ああ、大丈夫だ」そう言って俺はコクピットを覗き込む。


長い間締め切ったコクピットの中は饐えた匂いと鉄錆の臭いが混じった嫌な臭いがする。


「酸素が減っているかもしれないので、少し換気をしてから中に入った方がいいですよ」


そうエリシエルが言うので、ハッチを開けたままで換気をしている間、端末のセンサーを使って外部を調べることにした。


長期間放置されていた為、機体の大部分が錆びてぼろぼろになっていた。


「ここまで錆びていると機材として使うことも出来なさそうだな」


使える部品でもあればと思ったが、どうやらダメそうである。


もう一度コクピットに戻り、中に入って詳しく調べる。中は締め切っていたせいか意外に錆や破損がない。


パイロットシートの裏側にガラスのようなもので封入された魔法陣を見つける。


「エリシエル、これ調べてくれ」


端末のカメラやセンサーを通じてエリシエルに魔法陣を調べてもらう。


「景一、これは魔導知能ですよ。リアクターとしての機能や機体制御などを同時に行える機人専用の物みたいですね」


俺はこれを持ってフロイデルさんの所に行くことにした。









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