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閉話 二百年前の話(後編)

39


グライドに放たれたブレスは見えない壁の様な物に阻まれ火花を散らし拡散した。


「奴のブレスには電磁バリアが有効です」


「ふう、ちょっと焦ったぞ雪風」


岩壁から抜け出し、一旦黒龍(ブラックエンペラー)から距離を取る。


「雪風、武器使用制限の解除。本気を出していくぞ」


グライド神威は通常のグライドと異なり地上制圧を重視した装備を多く備えている。八百番台後半のグライドはグライド単体の性能が低いため、強襲揚陸、地上制圧と言った任務に就くことが多く、逆に地上戦では他のグライドの追従を許さない攻撃力を持つ。普通のグライドの武器は威力がありすぎるため地上ではそのほとんどの武器が使用できないからだ。


ゼオフィールドによる慣性制御を行い、異常な速度で黒龍(ブラックエンペラー)に接近する。


「今回でケリをつける。出し惜しみはいらん。派手にぶちかませ」


「了解。反応弾全弾発射」


「ゼオフィールドによる囲い込みを行い、極力外部に被害を出すな」


背嚢の武器ポッドの蓋が開き数百発の小型ミサイルが発射される。自動追尾されたミサイルは全弾命中する。そのエネルギーはゼオフィールドによって囲い込まれ、その内部で地獄も此処よりマシなんじゃないかと思われるほどの熱嵐が暴れる。


黒龍(ブラックエンペラー)がフィールド内部でのたうち回り叫び声をあげる。


「まだ生きてるのか。なかなかしぶとい。X線レーザーによる追撃をしろ」


「ぐ、がああああああああ」


黒龍(ブラックエンペラー)は雄叫びを上げるとゼオフィールドの封印を破り外に逃げ出した。


「驚いた。まだこんな力が残っていたのか。追いかけるぞ」


「了解」


黒龍(ブラックエンペラー)はマッハ4を超える速度で飛翔している。あの翼でこの速度が出せるはずもないので、何か別な推進方法で飛んでいるのだろう。


「どこに逃げるつもりだろう?」


「わかりません。いや、もしかしたらあそこかもしれません」


「あそことは?」


「ラングレスト洞窟。直径100m程の縦穴が深さ数千m以上の地下まで続いています」


「噴火とかしないのか?」


「不思議なことに現状特にそう言う様子はありません」


「何か気になるな」


(マスター)はちょっと考え込んでいる様子だった。


「先回りしてラングレスト手前で奴を迎え撃つ」


(マスター)は細い目をかっと見開きそう言った。見開いても普通の人と変わらない状態なのが可笑しい。


「何で笑う?」


(マスター)が目を見開いているつもりでも、普通の人とほとんど変わらないのが可笑しくて、って言うかハイブリッド生体システムである私が笑っている姿なんて見えないはずですが、何故わかったのですか?」


「なんとなく、お前が笑ったように思えたからだ。そんなことより急がないと追いつかないぞ」


「了解…フフ」


「だから何故笑う」


「何故でしょうね」


私はこんな些細な事でも、(マスター)と心が通じているように感じて妙に嬉しかった。


ーーーー


ラングレスト直前で私達は黒龍(ブラックエンペラー)に追いついた。


「ぐううう、しつこいぞからくり人形」


「今日こそお前を倒すと決めたからな」


満身創痍の黒龍(ブラックエンペラー)はもはや私達と戦う力は残っていないようだった。

だが油断はせずX線レーザーを奴に叩き込む。黒龍(ブラックエンペラー)の翼がちぎれ飛びきりもみ状態でラングレストの縦穴に落ちていった。


「あ、しまった。奴をラングレストに落とすな」


「え、どう言う事ですか?」


「説明している暇はない。とにかく急げ」


落下していく黒龍(ブラックエンペラー)を追いかけ私達もラングレストの縦穴に入っていった。

黒龍(ブラックエンペラー)はかなりの速度で落ちていく。私達に落とされたように見せているが明らかに自分でここに落ちていこうとしている。

結局最下層まで落ちた黒龍(ブラックエンペラー)はフワリと地面に降り立った。


「やはりやられた振りをしていたな。だがもう逃げようはないぞ」


胸部装甲が開き、粒子ビームの砲門が現れる。

だが奴はこちらを見ると、とんでもないことを言い出した。


「グハハハ、俺を殺してみろ。俺の力で抑えている火口の封印が解けて噴火が始まるぞ。お前達人間を殲滅するために俺様が特別に作った特大の火口だからなぁ。とてつもない噴火が始まるぞ。この周辺以外にも被害は及ぶだろうなぁ」


「貴様、なんていうことを…」


流石の(マスター)もこの黒龍の言葉には動揺したようだ。


(マスター)どうしたらいいのでしょう」


「ほら、俺を殺してみろ。グハハハ、どうしようもないよなあ」


黒龍(ブラックエンペラー)は挑発するように私達に語りかける。

苦々しげに黒龍(ブラックエンペラー)を見ていた(マスター)は遂に意を決したように言った。


「雪風、奴をここに封印する」


「しかし(マスター)どうやって?」


「俺が外に出て、奴の逆鱗を撃ち抜く」


「馬鹿な、危険すぎます。外気温三百度以上あります。生きてられませんよ。そもそも逆鱗を撃ち抜いて封印ってどういう事です」


「逆鱗ってのはドラゴンの神経節が集中している場所で、 そこを打ち抜かれるとドラゴンはしばらく動けなくなるらしい」


「しかし(マスター)が直接やらずともグライドから攻撃すれば‥‥」


「グライドからでは警戒される。宇宙服着ていれば高温にもしばらくは耐えられる。光学迷彩を使えば簡単に近づけるだろう。俺が奴を動けなくしたら拘束場で奴を封印する」


「わかりました。しかし逆鱗の情報はどこで知ったのですか」


「ゼクトールから聞いた」


「当てになるのですか」


「さあな。だが今はこれしか手が思いつかない。さあやるぞ」


ーーーーーー


私達は黒龍(ブラックエンペラー)を封印し拘束場はエネルギーの保つ最大時間二百年にセットした。


「二百年後にはもう俺はいない。だから奴のことはお前に任せた」


「無責任な」


「そうかもな。はは」


(マスター)そう言って笑った。


黒龍がなんかチンピラみたいになってしまった。地上最強クラスのドラゴンなのになあw

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