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猫よ猫よ

11


結局、その晩はそのままイエスタさんの屋敷に泊めてもらうことになった。

次の日から早速グライドの改修を始める。

マジックリアクターはイエスタさんに準備してもらい、その間俺達はコクピット内にスペースを作ることにした。

本来、余計なスペースなどないコクピットだが、非常用のレーションや水などが入っていた収納を取り外しシートの位置を変えたりしてスペースを作った。レーションなどは全て食べ尽くして空になっていたので、収納を外すのは問題なかったが、シートの位置は変更すると操縦しにくくなるので、なかなか手間取ったが、なんとか形になった。


そしてマジックリアクター装着、各部の調整、その他動作テストなどで三日程かかった。

その間、それまで疑問だった色々なこと、魔法だとか機人についてイエスタさんと話し合って、あくまでも仮定であるが一つの結論が出た。

何かがこの世界に対して干渉し、自分の都合のいいように変えようとしている。

それが俺達より先に転移して来たグライドなのか、それとも別の何かなのか。

それは現状では解らない。

しかし、そういう存在がいることだけは確かだ。

そもそもグライドと言うのは、兵器としては非常に歪な物だ。

エイリアンテクノロジーによってかろうじて使用可能な兵器なのだ。

この世界の機人は魔法があるとは言え、エイリアンテクノロジーは無いにもかかわらず実際に存在し稼働している。

自動車やその他の工業製品すら碌に作れない技術レベルで、それよりも遥かに高い技術を必要とする機人が存在するというのは歪ですらない。異常だ。

魔法の発達も二百年前から急に進み出している。機人の制御を行う魔導知能、機人のエネルギーを発生させるマジックリアクター。それらの進歩が顕著である。

全ては機人を存在させる為に、何かがこの世界を操作しているように見える。


ーーーーー


俺達は、ひとまず完成したグライドに乗って村に帰る事にした。ドラゴンの事も気になるが、それよりもグライドのマジックリアクター使用の為に、もう一つしなければならないことがあるからだ。


村に着くとアーウラさんが出迎えてくれた。


「待ってたよー。お土産は?」


あ、そう言えばすっかりお土産の事など忘れていた。まずい。


「どうしよう?エリシエル」


「こんな事もあろうかと、用意した物があります」


やけに準備が良い。帰って不安になる。


「アーウラさん用のパイロットスーツです」


いつのまにそんな物作ったんだ?最近暇があると、すぐに何か作りだす。

まあ仕方ない。アーウラさん怒らすと何かと面倒だからなあ。色々やってもらいたい事もあるし。


そんな訳で、アーウラさんにパイロットスーツを見せる。が、反応が微妙だ。大丈夫かな?


「様々な機能満載ですよ」エリシエルが嬉しそうに言う。やっぱり不安だ。


「パワーアシスト機能は倍力装置の設定を変更し、パワーよりスピードが出るように調整しました。その分、動作時間も長くなってます。エネルギー源は太陽電池。特殊ガラス繊維を使用し防弾、防水、防音機能付き」


防弾、防水は解るが、防音ってなんだよ?


「そして最大の売りが、音声認識による自動装着機能です」


あ〜、なんかわかった。


「変身と言うと、装着します」


そう言った瞬間、アーウラさんがスーツに飛びついた。そして即座に。


「へんしん!」


ポーズをつけながら、叫ぶ。


スーツはアーウラさんの後ろから覆いかぶさるようにして、装着される。その時間、なんと0.1m秒。


「いやあ、『赤射』とか『蒸着』とか『チェンジ』とかも考えたんですが、やっぱり『変身』が定番ですよね」とエリシエル。


表情が見えるはずもないのに、ニヤニヤ笑っているのが解る。


「パワーアシスト機能の使用時間は約三分。エネルギーが減ると胸のタイマーが点滅するので注意してくださいね」


カラータイマーかよ!


よっぽど嬉しかったのか、スーツを装着したまま何処かへ行ってしまった。すごい速さだ。加速装置かよ。


「ほっといて大丈夫なのか?」


「三分でエネルギーは切れるし、エネルギーが切れてもパワーアシストが使えなくなるだけなので大丈夫かと」


「ふむう、この件はひとまず置いておくか。本題に入ろう」


この村に帰って来た、本当の理由はマリエちゃんに会うためである。

マジックリアクターのエネルギー要員として、グライドに乗って貰おうと思っている。

まだ小さいのに、魔法の才能が高いとアーウラさんから聞いている。

身体も小さいので、狭いコクピットでも彼女なら入れるはずだ。


だが問題もある。彼女は対人恐怖症なのでなかなか話すことが出来ないのだ。


「そこで私は考えました。名付けて『シュレッディンガーの猫』作戦」とエリシエル。


色々言いたい事はあるが、ひとまずどんな作戦だか聞いてみる。


「マリエちゃん、彼女は人間に対しては中々心を開きませんが動物は好きな様で、前に野良の黒猫に餌をやっているのを見たことがあります」


「ああ、カーボンな。あれは野良じゃないぞ。タゴーサクさんとこの飼い猫だ」


「ほお、それは丁度いい。タゴーサクさんからカーボンを借りて来て囮に使いましょう。透明ガラスで檻を作り、中にカーボンを入れ、彼女が近づいて来たら檻の蓋を閉じて出れない様にします」


「幼女拉致監禁犯を確認。通報しますた」いつのまにかアーウラさんが戻って来ていた。


「いや、これには事情があるんだ」とりあえずアーウラさんに事情を説明すると。


「なるほど。それなら、おねーちゃんの私から話せばわかってくれるはず」


と言うと凄いスピードで走って行ってしまった。


そして又、凄いスピードで戻ってきた。


「ダメでした」


当てにならね〜。

仕方ない。やりたくはないがエリシエルの案で行ってみるか。


「ところで、なんで『シュレッディンガーの猫』って言う作戦名なんだ?」


「意味はないですが、なんかカッコいいじゃないですかw」


俺の周り、ダメダメな奴しかいない様な気がする。



ーーーーー


罠は用意出来た。

見えないガラスで檻を作り、借りてきた猫こと、カーボンを入れる。

檻の蓋のスイッチは俺が行うことにする。

エリシエルにやらせると、わざと乱暴に操作して彼女にトラウマを刻みそうな気がしたからだ。


待つことしばし。


「あ、猫ちゃん」マリエちゃんの声がする。


「猫〜、猫〜」そう言いながらゆっくりとカーボンに近づいていく。


「すまない」そう思いながら、罠のスイッチを入れる。


ガラガラ〜ド〜ンと大き音を立てて、罠の蓋が閉まる。エリシエルめ、ワザとでかい音を立てる様に罠を作ったな。後で覚えていろ。


罠の閉まる音で驚いてパニックになるマリエちゃん。


「ごめんよ。大丈夫。危害を加えるつもりはない。ただ話をしたいだけなんだ」


カーボンをぎゅーと抱きしめるマリエちゃん。


カーボンが苦しそうだ。


マリエちゃんの様子を伺いながら、ゆっくりと話す俺。とりあえずパニックは収まった様だ。


「そう言うわけで俺のグライドに乗って欲しい。すまなかったな。こんな強引な真似をして。返事は後で構わない」そう言って俺は罠のスイッチ解除した。


カーボンを抱きしめながら恐る恐る外に出たマリエちゃん。そしてそのまま小走りで去っていった。


「大丈夫だったのだろうか?」などと思っていると。


ドドドドと地響きの様な音がした。


「うちの娘に何をした〜」ギーブルグさんの怒りの声がする。


そしてそのまま俺の顎にアッパーが決まる。


「むう。今の技は、幻の次元流アッパー」


「知っているのかライデン?」


エリシエルとアーウラさんの漫才が始まっていた。






久しぶりの裏設定です。



ガラスの剣


ガラスで剣は作れるのか?

結果を言えば、作ることは出来る。


ガラスの剣などすぐに壊れてしまう、と思われるが実は鉄より丈夫なガラスが作れるのだ。ガラスが割れやすい理由は、ガラスが固まる時に目に見えない細かい傷やひび割れが無数に生じるためである。この傷が出来ないように作ることが出来ればガラスは非常に丈夫な物質となる。


東京大学生産技術研究所が開発した超高弾性率ガラスは、弾性率(の一種であるヤング率)は160GPaであることがわかった。酸化物ガラスの弾性率は80GPa、鋳鉄が152GPa、鋼鉄が200GPaとなっており、身の回りにあるたいていの金属より丈夫なガラスといっても過言ではないだろう。


上記の様に鉄より丈夫なガラスは現代でも作ることが出来ます。

小説内では更に技術が進んでおり、鋼鉄より丈夫なガラスを作り出して剣にしています。


グライドの剣は表面に特殊な処理を施しており、屈折率が空気と同じである。

つまり、ほぼ見えません。


余談であるが、仮にダイヤモンドで剣を作ったらどうなるだろう。ダイヤモンドはこの宇宙で硬度の高い物質の一つである。ならば、さぞかし丈夫であろうと思われるが、鉄のハンマーで叩いただけで粉々に砕くことができます。

ダイヤモンドは砕けない? いやいや、簡単に砕けます。

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