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ショーンのこと

「霧のはし 虹のたもとで」のショーンのことをつらつらと考えていました。


 自分の中でまだまだ未消化な彼です。

 私の長編はとにかく登場人物が多いので、できるだけ主要人物を絞って増やさない、を最初の鉄則にしていました。狭い世界の中での細やかなやりとりと起伏を描くことを目標に。

 できればコウとアルビー、マリーの三人だけでと思っていたので、ショーンの存在は想定外です。設定も何もなく、全くのモブ。イメージとして、コウがつきあっていける要素としての共通点と、後はイギリス人のステレオタイプ的な平凡さが出せればいいかなというくらいで。


 だから、たまーに出て来る友人という立ち位置以上のショーンの人格がコウに見えてくるのは、旅行に出てから。ショーンの過去設定も、話が進んでから決めています。コウとの共通点、「魔術」に拘る理由。それも彼の連想がすぐにクロウリーに結びつく辺りの、民俗学的な、というよりも、もっとはっきりした個人的な動機付けが欲しかったから。このイメージに、グラストンベリーという町の特殊性はとても似合って見えたのです。


 このショーンの過去に関する話が、アルビーが初めてアルビーらしくコウと会話した場面じゃないかと思っています。それまでの彼らの会話は、どちらもが奥歯に何か挟まったような言い方で、断片的でその場限りの会話でしかなかった。特にアルビーはコウに対してとても慎重に言葉を選んでいるんです。

 話題がショーンという第三者だから、アルビーは安心して専門職としての自分の見解を話している。

 おい、アルビー、守秘義務はどうした! と作者は心の中でつっこみを入れていましたが。治療として知った情報ではない、ということで……。


 ショーンのモデルとイメージしたのは、昔読んだ名前も覚えていない、ナンパ術とか、こうして女を落とせとか、そういう方面に心理学を応用する類の本を書いている、どこかの大学の教授だか助教授だかのインタヴュー記事でした。


 本人、もの凄い女癖の悪い嫌な奴です。

 その記事を読んでの感想が「この人、要するに女嫌いで男が好きなん? 女に価値を認められないし、精神的な充足は同性からしか得られないって」です。


 ショーンの女性関係のだらしなさの根拠は、まだ旅行の時点では深く考えていませんでした。宗教からくる貞操観念から外れ、現代的な性意識の持ち主として考えていた程度でした。


 このショーンの母親への憎しみ。その復讐としての女性関係の歪さは、アルビーらしい解釈になり得たかな、と思います。

 そこで同時に考え、はたと悩んでしまったのが、ショーンの性的指向(セクシャリティ)についてです。


 性的指向……アメリカ心理学会によれば、性的指向とは「こうした性的魅力を感じることや、関連する行動、および同じ性的指向を共有するコミュニティの成員であるという意識などに基づいた個人のアイデンティティに対する感覚」である。  (ウィキペディアより)



 ショーンが性的魅力を感じるのも、性の対象とするのも女性なので、彼はヘテロセクシャルです。

 でも、彼の性衝動や、女性(対象)に対して向けられた心理を考えた時、この「性的」な行為は、本当に性欲から引き起こされた行動なのか、考えてしまいました。


 アルビーは、そう考えていません。彼はショーンを、自覚のないゲイだと考えている。ショーンの女性に向けられる性欲は、暴力的な支配欲であり、相手を性的に従属させ、コントロールすることで満足感を得る、歪んだ感情だと思っている。


 だから、コウのことを心配している訳です。

 ショーンの中の隠れた暴力性がコウに向けられたら、あるいはその反対に、自分の本来あるべき心と躰の一致する性的指向を自覚して、コウにアプローチをかけられたら、と不安の種はつきません。心労が溜まるね、アルビー。


 以前読んだ警察関係者(精神科医だったか、保護観察官だったか)の書いたレイプ犯の供述に関するレポートが探しても見つからない(涙)。

 その中の、レイプで得られる快感は、性欲を満たされるというのとは全くの別物で、他人を完全に支配している万能感。神にでもなったような気分。

 という記述が、ずっと頭に残っています。



 ショーンは決して暴力的な人間ではない。それは女性に対してもです。でもこうして考えていると、彼にとって性行為そのものが暴力的な意味合いを持って対象にぶつけているものならば、自分が本当に好きな相手に対して性的魅力を感じることは、自分の中で恥ずべき事であり、忌むべき事ではないかと思うのです。

 


 ショーンの認知の歪みが正される日はくるのかな……。

 認知を歪めていた呪縛が解かれた時、彼が選ぶ性的指向はどっちなんだろうな?






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