梟のこと
「微睡む宵闇 揺蕩う薫香」(ムーンライト掲載)に頂いた感想が嬉しくて、久しぶりに全話読み直しました。未だに誤字発見がある。お恥ずかしい限りです。
一話づつ更新時に読む。校正するために読み返すのとは、また違います。いろいろ戸惑いと発見がありました。特に文体について。これは今回のテーマと関係ないのでまた後日。
この話、書いている頃から思っていたのが、なんだか「西鶴一代女」みたいになってきた、いったいマシューは、どれだけのひとを好きになるんだろう? ですよ。いえ、「西鶴一代女」とはまるで違うのですが。運命に流される、翻弄される中で関係性を繋ごうとする感じからの連想かな?
そして、ぼんやりとマシューは誰のことが一番好きだったのかなぁ、と考えてしまいました。
テーマにもってきている割りに、余り突っ込んでいない問題が、マシューの性に関する認識で、この子は不感症なのかな、と執筆中は考えていました。
男の子の場合、心と身体はより直結しているからそれはないのだけど、身体の感じる快感と心が一致していない。凄く醒めた眼で自分自身の身体を見ているんじゃないのかな、と。刺激されれば反応する、それだけのことだ、と。
そしてそれは、鳥の巣くんに対しても同じ。彼がかけがえのない一人に思えるようになっても、変わらない。懸命に応えようとしているんですけどね。
そんな中で、梟だけが違う。
梟だけが、マシューにとって身体と心が一致して反応する相手だったのかなぁ、と。マシューにとって、梟だけが対等な関係だから。いいように利用され、庇護され、上下関係の内にいるのに、それでもマシューの中で、梟は自分と等しい位置づけにいるのです。
マシューは、梟の生い立ちや置かれている環境に同情し、彼を自分よりも下の憐れむべき人間としてみている。利用される自分に、価値を見出している。
綺麗な言葉で誤魔化す必要のない傷の舐め合いだからこそ、安心して梟に甘えられるし、自分をさらけ出せる。背伸びする必要のない相手なのです。
梟の最初のイメージを考えた時は、蛇の引継ぎなので印象が被らない、できたら正反対で尚且つ怖いひとだといいな、くらいでした。
モデルとして浮かんだのは、大昔に読んだ、「家出して、筋のひとのヒモ付きになって、風俗で働かされる十代少女のレポート」週刊誌なんかによくあるアレです。
そこに書かれていた、その筋のひと、優しいのだそうです。「淋しい」と言えば、どんな時間でも電話一本で駆け付けてくれる。何時間でも話を聴いてくれる。だから関係を切れない。利用されていると解っていても逃れられない。
恐怖じゃなくて、情で支配する。
梟はそういうイメージです。
少年時代は田舎の寄宿学校で育ち、自分は田舎者で権力者の血筋であっても公では認められない庶子である。梟は、いいとこの坊ちゃん連中のためのエリート養成校であるこの学校での自分の立ち位置を、醒めた眼で冷徹に自覚している。
この彼が、この学校を卒業することに執着する理由が、なかなか思いつかなかった。学費が払えなければ辞めればいいのですから。
梟を縛り、踏み躙り、その場に留めるための条件として、蛇との兄弟関係に発展しました。
蛇は、本来自分に課せられた様々な面倒ごとを梟に肩代わりさせ、その過程で、梟は裏社会のやり方というものを学んでいくんですね。
ちなみに梟は、狼を出し抜いて手に入れた金とジョイントで、蛇に復讐を果たし、きっちりと落とし前をつけることになっています。脳内では。書かないけど。
完結してから、政府通信本部(GCHQ)に就職した銀狐と、サイバー犯罪に手を染めている梟の、ん年超しの因縁の対決とか妄想して楽しんでいました。MI6に就職したマシューは、二人の狭間で、さあどうする! 的なやつ(笑)。
そのうちに、梟みたいなタイプのピカレスクものを書きたいなぁ、と思っています。




