張り込み / 星祭2 / お揃い
*『嘘つき、忘年会、張り込み』。140字以内で書いてください。
【張り込み】(空白・改行含まない 140字)
あの嘘つきの女のせいで、俺は寒空の下もう何時間も道端に立ちん坊だ。揶揄われたのだ。あいつが浮気なんてするはずがない。男とデートなんて言いやがるから後をつけてみれば、何の事はない忘年会だ。本当に信じてなかったのに。あいつが知らない奴と嬉しそうに腕を組んで店を出てくるのを見るまでは。
*『星占い、スパーク、広葉樹』。1000字以内で書いてください。
【星祭2】(空白・改行含まない137字)
鬱蒼とした広葉樹の茂る原生林を分け入ると、ぽっかりとした空き地に出た。天からの一条の光りが、巨石に囲まれた中心に落ちる。たかが星占いと言うなかれ。薄闇に溶け込む希薄な神官がその光を掬う。と、スパークする青い輝きが一瞬、辺りを明るく照らした。木陰に隠れていた男の姿が晒される。
***(空白・改行含む997字)
夜も更けてから始まる星祭は、神社の境内で行われる。鳥居から続く参道には屋台の夜店が居並んでいる。幾つもの祭り提灯に照らされて、何百年もの間人目に晒されることなく受け継がれてきたという神事は、すっかり大衆化したお祭り行事となり替わっている。
男はカメラを手に人混みをぬい、そぞろ歩いた。今回の仕事はこの他所者のためのお祭りが終わってから始まるのだ。
境内を少し外れると、そこには鬱蒼とした広葉樹の森が広がっている。光りの届く境の大樹の一本を見上げた。紺青の夜空を受け止めようとでもするかのように幾つもの枝が大きく広がる。地面の上に浮き出ている、そのごつごつした根っこに腰掛け、今のうちに、と屋台で買った焼きそばとビールで腹を満たした。
喧騒が遠のき、シャンシャンと鈴の音が響く。奉納舞台が始まった。これで締めだ。男は残りの焼きそばを掻き食らい、ビールで流し込む。
そろそろ移動しておかねば。
しめやかな騒めきに、規則的な鈴の音が流れる。男は神社の裏手に廻り、立ち入り禁止のしめ縄を身を屈めてくぐり抜けると、薄闇に浮かび上がる裏山に続く苔むした狭い石段を上って行く。
生い茂る梢に遮られ光りの届かない足下を、ペンライトで照らした。もう既にかなり歩いているのに、未だ鈴の音が聞こえる。
いきなり視界が開け、朔の夜に輝きを増した星々が頭上に満ち満ちた。ぽっかりと開けた空き地には、巨石が立ち並んでいる。まるで日時計のような。いや、夜に日時計のはずがない。これが、星占いの儀式に用いられる星座板なのかもしれない。男は夢中でシャッターを切った。儀式は既に始まっていたのだ。巨石の向こうに、薄闇に溶け込むような希薄な神官の姿が見え隠れしている。
と、天から細い稲妻のような一条の光りが落ちて。
スパークする青い輝きが辺りを明るく照らし出した。男は思わず腕をかざして目を覆う。そして慌てて樹の幹の後ろに隠れしゃがみ込んだ。木陰に隠れていた男の姿が、一瞬、光の元に晒されていたのだ。
気づかれただろうか……。
男の目にも、この空き地にいるのが神官のみではなく、男とは対になる側に幾人もの巫女姿の女たちがいるのが見て取れたのだ。
眼前に広がる変わらぬ闇に、静寂に、安堵し、男は樹の陰からもう一度空き地を覗き見た。すっと血の気が引いていく。巨石の周囲を数多の鬼火が飛び交っていたのだ。
【感想】お題がだぶっているので開き直って、前回のつづき。際限なく続いていきそうなので、次は絶対別の千字短編を書こう!
*『色違い、苦し紛れ、約束』。200字以内で書いてください。
【お揃い】(空白・改行含む 139字)
修学旅行で君の買ったシャーペン。こっそり私も買ったの。普段使いしている君に気づかれない様に、私はペンケースに仕舞ったまま。ひょんなことからぶちまけた中から君はそれを拾い上げ。「これ色違いで俺も持ってる」「凄い偶然。でも恥ずかしいから内緒ね」苦し紛れの言い訳。でも二人だけの約束。
***(空白・改行含む 196字)
修学旅行で君の買ったシャーペン。こっそり私も買ったの。普段使いしている君に気づかれない様に、私はペンケースにしまったまま。それなのに落として中身をばら撒いた。君はそれを拾い上げ。「これ、色違いで俺も持ってる」「凄い偶然! でもお揃いみたいで恥ずかしいな。みんなには内緒にしてね」わざと嫌そうな顔をして、苦し紛れの言い訳。君も苦笑いして頷いた。寂しくて、嬉しい。これは、二人だけの秘密の約束。




