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「微睡む宵闇 揺蕩う薫香」のテーマについて

 偶然、宗教に関するエッセイを読んで。


 そうか、やっぱり日本人には伝わり辛いテーマだよなぁ、とネタバレ的な雑感を書き留めておこうと思います。私も日本人ですけどね。


 「微睡む宵闇 揺蕩う薫香」を書いたきっかけは、なろう版の後書きの通り、マシュー・モーガンという一人の人間を知りたいという、単純な好奇心でした。


 書き進めてから湧き上がってくるテーマは、薬物による意識変容だとか、併発されていく精神病とか、いろいろ興味のつきないものがあったのですが、この話は、「吉野と対峙するマシュー」という最終的な場面に、集約されていかねばならない物語なのです。


 ですから、マシューにとって吉野とは何なのかが焦点。吉野が登場する三章からが本筋。

 自分の中でのテーマも、薬物から立ち直っていくマシューではなく、もっと根源的な問題、「キリスト教文化が色濃く残る西洋圏で、神への信仰を持たないにもかかわらず、文化的・思想的な影響を無自覚に内包する少年が、抗えない圧力にさらされた時、何に救いを求めるか?」にシフトしていきました。


 一番頭を悩ませたのが、鳥の巣頭くん。これは、マシューと吉野(大鴉)の物語なのです。

 でも、ラストシーンを見透した時に、自己完結的に吉野に救いを見出すマシューを理解し、そこに救いを見出して貰えるとは思えなかった。


 鳥の巣頭くんの差し出す手は、とても分かり易い。


 私がマシューの中に見出した灯を理解できなくても、鳥の巣頭くんの存在は万人に受け入れられやすい救いの手に見えるだろう、と思ったのです。


 マシューはクリスチャンではないけれど、思考の根底に、キリスト教的な「懺悔」「贖罪」を経て初めて「赦し」を得ることができるという思考過程があります。断罪されることが赦しであるという、一見パラドックス的な発想は、とても分かりづらい。

 でも、この過程を経て、やっと第一歩を踏み出せる。


 銀狐への告白が、「懺悔」であり、狼と校内の薬物網を潰す為に自分自身を犠牲の子羊として祭壇に差し出すことが「贖罪」です。この場合の贖罪は、単純な罪のあがないの意味ではなく、キリスト的な自己犠牲でなければ、マシューにとって意味がない。


 けれどこの思考過程は、あくまで知識で作られた道筋であって信仰ではないのです。マシューに神への信仰心はないのです。でも苦しいから自己を超越した誰かを求め、そこに神に代る救いを求める。それが吉野。

 吉野に対峙し、初めて向き合った彼の中に、吉野という人間を見るのではなく、あくまでも自分自身、神に認識された自分という実在を見る。見つける。


 ズレていた世界と自分が噛み合った瞬間。


 もはや宗教体験。(笑)


 

 鳥の巣頭は、クリスチャンです。彼の母親もそう。マシューはそんな彼らにとても懐疑的。


 どうして鳥の巣頭くんでは駄目なのか。いろいろ理由はあるのですが。気が向いたら、そのうちに。



 

 書き終わって半年経って、最近またこの話のことをよく考えます。マシューはなんだかんだと、私にとって面白い子だった。


 強く生きてね、と願わずにはいられない。



 そうそう、テーマに戻って。もう一つ。

 こいつ胸糞悪い、本当に性格サイテー、と思ってしまうような主人公の、馬鹿は馬鹿なりに必死になって生きる姿を、応援してもらえたらなぁ、というのもありました。

 人は美点に対して感動するのではなくて、必死になってあがいて、生きようとする姿にこそ、勇気やカタルシスを得られるのではないかな、と。


 これは宗教とはまた別の話です。


 

 でも、まぁ、伝わる、伝わらないよりも、何かが僅かでも琴線に触れ、楽しんで頂けたらそれでいいのです。






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