峠の茶屋 / 虹色の / 相傘
*『団子、回り道、刀』です。280字以内で書いてください。
【峠の茶屋】
かつての宿場町の半日観光を終え、帰る前に回り道して有名な団子屋によった。この地で一番の心霊スポットだ。緋毛氈のベンチで団子を食す。カチャと隣で音がする。皿の横に長刀。袴姿に髷頭。時代劇の撮影でもやっているのかとつい見入る。足まで見下ろし息を呑んだ。団子を食う侍の幽霊に遠のく意識。
***(空白・改行含む):280字
春の町内会日帰り花見の旅は、かつての宿場町の半日観光だ。風情のある古風な街並みを歩き、蕎麦屋で昼食。〆の花見は、団子屋の軒先だ。
「この景色と団子がここ一番の名物だよ」
会長が団子のような丸い顔でにこにこ笑っている。
抜けるような青空の下、緋毛氈のベンチで食す花見団子。眼の前を流れる堀沿いは桜に柳。実に気持ち良い。
カチャッ、と隣で音がする。団子皿の横には刀と脇差。袴姿に髷頭の侍に時代劇の撮影でもやっているのかとつい見入る。足まで見下ろし息を呑んだ。
おもむろに視線を外す。
あの世へ行くのも回り道したくなる、そんな陽気のいい日だもの。
*『リップグロス、髄膜炎、寝殿造』です。文字数は無制限なので頑張って書いてみてください!
【虹色の】(空白・改行含む):324字
修学旅行で訪れた古都。寝殿造の邸宅を見学していた時だった。
歩き疲れて縁側にへたり込んでいた私は、飴色の柱と板の隙間に、てらてらと虹色に輝く箇所を見つけ思わず覗き込んでいた。
赤くぷっくりとした唇みたい。リップグロスを塗ったばかりのように光っている。
指で押してみる。柔らかく弾力がある。と思ったら、それは本当の唇みたいに、私の指に吸い付いてきた。
悲鳴を上げて指を引く。怖くて心臓が早鐘のように打っていた。
その夜、私は高熱を出し救急車で運ばれた。
まさかあんなことで細菌感染、髄膜炎になるなんて……。
あの虹色のてらてらの正体は、いったい何だったのだろう。
熱に浮かされた意識の中で、私は虹色の髄液の川を渡る。
――――
(140文字にすると余りに詰まらなくて。文字数よりも、楽しめるもの出て来ないかな。最近、速さ勝負のお座なりになってきている)
*『引退、パイプ、相合傘』です。280字以内で書いてください。
【相傘】
部活を引退してもう幾月。卒業を前にして最後に部室を訪れた。校庭から響く掛け声。誰もいない部屋の配管パイプの陰を覗き込んだ。憧れていたマネージャーを想いこっそり相合傘を描いたけれど、自分の名前の横は空けたままだった。その懐かしい落書きの、一人ぼっちの傘の下に並んでくれてる奴がいた。
***(空白・改行含む):280字
引退してからもう半年以上が過ぎていた。
卒業を前にして、最後に部室を訪れた。校庭から響く掛け声が懐かしく胸に響く中、誰もいない時間を選んで引っ掻き傷のように残っていた記憶にケリをつけに来たのだ。
壁の配管パイプの陰を覗き込む。昔、憧れていたマネージャーを想いながら相合傘を描いた。自分の名の横は空欄。いつか本当に付き合えたら書き込もうと決めていたから。そんな奇跡は起こらなかったが。
その懐かしい落書きの一人ぼっちの傘の下に並んでくれてる奴がいた。知らない名前だ。いつの間に誰が? 只の冗談だろうに、何故か晴れ晴れとした気分で、俺は部室を後にした。




