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漆黒に映る  作者: 夏雪
一章
6/12

6─ギルドの中身

本日三話目…アッ、日付超えてる…。



「…成る程、」

「このギルドでそういうことする奴は追放か門前払いだから、安心して」


…なんとなく、薄々、気づいてはいたけど、ちゃんと言葉にしてもらえるものほど、ホッとするものはない。

もし違ったら、と思うとやっぱりゾッとする。

こくり、頷けば、フィオさんが続きを話す。


「システムで言えば、ここは専属オンリー。一時契約は一切お断り。だから、バディを組む奴も居るし、パーティを組む奴も居れば、ソロの奴も居る。

俺も専属医、とは言ってもここの所属だし完全な非戦闘員じゃないから、ごく稀に依頼に出ることもあるよ」

「…え」


…フィオさんも…依頼に…?

完全な非戦闘員じゃない…って。

つまりそれは、フィオさんも、何かしらの危害を与える…ってこと。

これは完全に予想外。

防具も回避も必要のないところから攻撃を受けた。

なのに、そこまで驚かなかったのは、先にここがギルド─悪い言い回しをすれば人殺し集団─だと言われて、自分でもそうなのだ、と納得していたからだ。


…けど、まずい。

フィオさんの不意打ちのせいでこのギルドについてのことが頭からすっ飛んでった…。


「…すいません、もう一度お願いします」

「ん? ここは専属の人だけで、一時契約はお断り。ギルド内でバディを組んだりパーティを組んだりソロだったり、色んなやつが居る。俺もごく稀に依頼に出ることがある、だけど、大丈夫?」

「…整理してもいいですか」

「もちろん。リルのペースでいいよ」


ありがとうございます、と返して頭の中を整理していく。

もう一度聞いてもフィオさんも依頼を受ける側なのは変わらない事実だった。これについては確認に近かったから、驚くことはもうない。


そして、私が居る、フィオさんが所属するこのギルド。

専属だけで一時契約は例外なくお断り。ということは、ここに所属している人達はほぼ全員が顔見知りである、ということだろうか。顔見知りではなくとも仲間、というものなのだろう。

だから、その中であるなら誰と組むことも抵抗は薄い…と。

依頼や相性に合わせて自由に決めることができる…と。


「…答えられないなら良いんですけど、内部でいくつかの派閥に分かれてる、とか…そういうことは、ありますか?」

「うーん…、どこのギルドでも派閥、というよりパーティごとにライバル視したり、パーティ内の個人同士でライバル視したり…、敵意はなくても嫌悪感があったり…とかはあると思うよ」


皆良い奴等ばっかなんだけどなぁ、とボヤくように付け足したフィオさん。

彼は、このギルドの専属医。同じギルドの仲間のことをよく見ている彼だからこそ、それぞれの良さを知っている。…ボヤくように言われた言葉だったからこそ、それを顕著に表していた。


どこのギルドでも、という前置きがあるということは、話せる範囲だったということで、フィオさんも、こんな得体の知れない─もしかしたらどこか他のギルドと繋がってるかもしれない─人間に機密事項を話すほど、愚かな人間じゃないのは知ってるから。

…うん、まあ、グループは複数あるみたいだ。

敵意ではなく嫌悪感…ということはやり方が気に食わない、とか生理的に無理、とか…そんな類のことなのだろう…と予測だけしておこう。…まあ、それはどんな集団になっても有り得ることだから納得した。


「そう…ですか。

中断してすみません、続き、お願いします」

「……うん。

えぇと…、そうだな、あとはギルドの仕組みくらいだな。

ギルドにはそれぞれプレマと呼ばれる最高権力者…一番上、って言ったほうが分かりやすいかな?そういう人が、必ず一人だけ居るんだ。その下にギルド員が居る。

あとの序列はギルドによって異なるけど、プレマの存在は絶対だ」


返事までに、少し間が合ったような気がするけど、そこは深く探らないでおこう。言わなかったってことは私には言えないか言わないか、どちらかだと判断したからだろうし。


プレマとギルド員…言うなれば、社長と平社員、みたいなものだろう。

プレマ、と呼び名が異なるわけだから、そこでただのギルド員とは大きな違いがあることは明白。向こうの世界での誰でもなれる思考とは大きく外れている…気がする。

フィオさんの口調からするに、プレマはギルドという組織がある上で絶対的必須事項(人物?)。…ギルドの核、のようなものか。


「今日のところは大体こんな感じだけど…質問はない?」

「…いえ。大丈夫です」

「そう。地図はあげるから見たかったら見て。

じゃあ、俺は向こうに居るから」

「はい。今日もありがとうございます」

「どういたしまして」


にこり、爽やかな笑みを浮かべ、フィオさんは扉の向こうへと戻って行った。

いつもの気遣い、いつもの笑み。それらを感じて、見ていると、どうしても消えない罪悪感。無知な私に、幼子(おさなご)に物事を教える親のように教えてくれる彼。…実際、この世界の人にとって、見た目に反して知識が幼子並みに浅いのだけど。

ならば自ら動けば良いのだが、如何(いかん)せん、私はこの世界の常識すら、真面(まとも)に理解できていない、あまりに無知すぎる。

異界の人間だとバレたとき、どうなるか分からないからと、彼に、ここに匿われた。

危険性、彼の厚意を考えた末に、私は、ここに一時的に留まることを決めた。


けれど、それも一時的であって、いつまでもここに居るわけにはいかない。彼の迷惑になるだけだ。少しでも早く、独り立ちできるようにならないと。…その為には、やっぱり知識が要る。


ぺらり、有難く貰った地図たちを捲りながら、見ながら、頭の中に叩き込む。

記憶力、理解力については、それなりに自信がある。…だから、今も。


「…」


只管(ひたすら)、無言で、黙々と。

時折、扉越しに彼と、ギルドの人であろう者の声が耳に届く。

しん、ではなく、きん、と、耳鳴りがしそうな静寂は、あの世界に居た頃も常に自分に纏わりついていた。だからこそ、どこか心地良い。まるで元に戻ったかのような錯覚を起こしそうになる。戻れないのだと、自分の中にある何かが、強烈に、そして常に、訴えているというのに。


視界に捉える地図。

大きい国。

日本のような島国とは異なる、国。

大きさも、地形も、海面積も。その中にある地方、王都。それらすら、異なる。


…なのに、私は異なることを恐れていない。

それは私自身が、あの世界でも外れていたから…だろうか。




リルちゃん視点は一先ずここまでです。次は他視点、二人分です。未更新期間が長いかもしれません…。

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