4─王都と現在
閲覧ありがとうございます。たまに更新遅くなります…。
成る程。流石というべきか。
王宮、ギルド、教会。
3つの権力からなる世界だと、職業について教えてもらった時に薄々気づいていた。…あの世界のあの時代には、あまり耳にしない爵位なるものもしっかりと存在し、王族・貴族・平民(・奴隷)の封建的ピラミッドが根強いのだとも。
王宮は当然として、ギルドは何らかの資格、もしくは条件が揃っていれば立ち上げることが可能だろうから、至るところにあっても不思議じゃない。教会は、この世界では十五神を信仰していて、そのための神聖な地が無ければ、対である唯一神信仰の邪教徒に脅かされる。そのためにも教会だけの土地が必要になる。それが聖小地なんだろう。
十五神とか唯一神とか、詳しいことは知らないけどそういう信仰だということだけ、フィオさんが教えてくれたから、残りは憶測でしかないが多分合っている。
…ん、なんとなく把握した。
「もう大丈夫です。続き、お願いします」
「うん。じゃあ王都についてと…それから、ギルドのことも教えておくね。他の地区については必要になったらでいいだろうから。
王都は、王宮と王宮関係や貴族たちが暮らす城下街、ギルドが多く立地するギルド区、人間が多く暮らす居住区、商いが盛んな商売区、獣人が暮らす獣人区、大きくこの5つで区分されてる」
ぺらり、もう一枚紙を捲り、世界地図の横に置いて、今度は王都の拡大図。さっきフィオさんが教えてくれたように、5つの区で分かれるように線引きがしてある。
──補足だが、この世界は、人ではない別の種族が、人間と同じように生活する。
…それが、獣人。
ケモノビト、とも呼ばれる彼ら。その種は様々で、数えるのは難しい…という。
私はフィオさん以外とは未だ接したこともないのだから当然、見たことはないのだけど─フィオさんは人間─、そういう種族も居る、と彼から教わった。
ラルティアの中央から、少し南東寄りにあるのが城下街。
アセロ海沿岸、東にあるのがギルド区。
南側に居住区、西側に商売区、フィフ・サウィー・ハルアと隣接しているのが獣人区。
…成る程、他の4つの区から人が集まりやすいように中央に城下街があるのか。
「と、これで大体の地理は教えたけど…次に行ってもいい?」
「はい」
じゃあ、今リルの置かれている状況だけど、と言うフィオさんの口調はどこかぎこちなくて。というよりは、言い難そう、二の句を告げるのに躊躇いがある…歯切れが悪い、という表現がしっくりくる。
…そんなにヤバイ状況ってことかと、不安が過ぎった。が、それを瞳の裏に、心の奥底に、脳裏に、隠す。私は、私の置かれている状況を知らなきゃならない。…否、知りたい、というのが正しいか。
何れにしても、いつかは知らなければならないこと。一週間─それもこちらの世界の─が経過しているのだから、どちらかというと遅い方だろう。だからこそ、この機会を逃すわけにはいかない。
例えどれだけ危険な状況であったとしても。
「リルの居る此処は、ギルド区の中でも1、2を争う権力…、強さを誇るギルドの、医務室だよ」
ガンッ、だか、ズドン、だか、大岩のような、重しのような、巨壁のような。
大きな衝撃が、それらが上に積み重なったような、眼前に立ち塞がったような感覚。
暗闇に落とされたような感覚ではなく、八方塞がりの中、…そう、まるで箱に閉じ込められたように。瀬戸際に、淵に立たされたような、…追い詰められたような、目の前が闇に染まったような。
ぎゅ、と、テーブルの下で拳を握った。…覚悟は、出来ていたはずなのに。
そう、そのはずだったのだ。なのに、隠せないほど、動揺してしまった。証拠に、意図せず全身に異常なほど力が篭って強張り、一瞬、何も考えられなかった。
だけど、それもほんの一瞬。次の瞬間には、信じられない、と思っていた。
だって、無理もない。目の前に居るフィオさんは、見るからに王子顔、穏やかで和やかな雰囲気。とてもじゃないが、医者には見えてもギルドに関係した人物だとは思えない。加えて、この医務室の広さ、清潔感、装飾された繊細で美しく、豪華な壁や柱。
…どこかの貴族の家とか、大きな病院とか、そういうものを想定していたから、そういう意味でも衝撃だ(勝手な想像でギルドは男所帯っぽいからもう少し汚い場所かと思っていた)。
…ってことは。
「フィオさんは、」
「…そ。俺はこのギルドの専属医」
またも微妙なところで止めてしまった…。
まあ…なんとなく察してたかもしれませんね…(読者様方が有能すぎる説)。