第1話「猫の舌打ち」~その1~
初めての投稿で右も左も分かりませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
夜中。
目を覚ました俺はトイレで用を足したあと家の外に出た。そして玄関先にしゃがみ込んだ俺は、おもむろにポケットから取り出したタバコに火を着ける。
この一連の行動は、ほぼ俺の日課と化している。
夜中に目が覚めるのは睡眠障害のせいだと思われる。まあ、歳のせいだという言い方もあるが。
目が覚めると自然とトイレに行きたくなるものだ。それも歳のせいという言い方もある。それと同時に、タバコが吸いたくなる。だがそれは、決して歳のせいなどではない。
俺が喫煙者だからだ!
最近の世の中は、喫煙者にとても厳しい試練を課しているかのようだ。俺がタバコを吸うために家の外に出たのもその一例だ。
喫煙者は皆、切実に感じている。
兎にも角にもタバコを吸える場所がどんどんドンドン少なくなっている。それこそ自分の家の中で喫煙することさえ、まるで軽犯罪を犯しているかのような気分になるし、近い将来それが錯覚では無くなる気配すらある。
更に昨今の異常とも言えるタバコ販売価格の連続的な値上げ。
俺達にとってある日突然始まったかのように見える値上げに次ぐ値上げによって、今やタバコの価格はかつての2倍以上にも跳ね上がっている。
奴らは一体俺達をどうしたいのだ。世界から抹殺する気か?
いや、そうではない。国は決してタバコの販売を止めようとはしない。何故なら俺達からむしり取っている莫大な税収を失ないたくないからだ。
タバコの値上げ分というのは全て税金だ。消費税が数%上がる事に関して皆ギャーギャー騒ぐが、タバコの税率は今や60%を超えているというのに俺達は大人しくそれを払い続けている。
もはやイジメだ。
一つだけ言っておきたい。俺達喫煙者は、タバコの煙が非喫煙者にとってどれほど迷惑なものかという事くらいは容易に想像できる。だからこそ俺達は、物凄く気を遣っている・・・人がほとんどのはずだ。
そうでなければ、自宅内での喫煙を躊躇って夜中にわざわざ家の外に出たりはしないし、休日に家族と外出した際にタバコが吸える所はないかとウロウロと不審者のように彷徨ったり、家計を圧迫している事を誰よりも解っていながら、どうしても止めることが出来ない自分を「どうせ俺はダメ人間だから」と必要以上に卑下したりはしない、と思う。
「これってなんか理不尽じゃね♂」と思うのは俺だけだろうか?
などと、夜毎世の理不尽さに想いを馳せていた俺は、一瞬ビクッとした。
ふいに何か動くものが俺の視界をよぎったからだ。その何かは、街灯の明かりによってすぐに認識できた。
一匹の猫だった。