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宝珠細工師の原石  作者: 桐谷瑞香
【番外編】
38/38

知らずに抱いている想い

Text-Revolutions 第6回内有志企画

キャラクターカタログ3に参加作品

 俺は朝からいつもより長い距離を走り込んでいた。町の中、そして自警団の鍛錬場の敷地内にある芝生を走っていく。敷地を数周して走り終えたところで、先輩自警団員が声をかけてきた。

「おはよう、サートル。朝からよく走っているな。以前に比べて筋肉もついて逞しくなった」

「そうっすか? 先輩たちから基礎体力をつけろって言われたんで、走っているだけですよ」

 俺はタオルで汗を拭ってから水を勢いよく飲む。

「変わったよな、お前」

「どういう風にですか?」

「徹底さが違う。昔は何となく鍛錬していたが、今は一心不乱に打ち込んでいる。明確な目標でもできたのか? いい傾向だから続けていけよ」

 先輩は俺の肩を軽く叩いてから、その場を後にした。俺はもう一度水を飲み、青く広がる空を眺めた。雲一つない空だ。こういう爽やかな色は、あいつにぴったりな気がする。

 ふと、門の方が騒がしくなったので顔を向けると、黒髪の少女が歩いてくるのが見えた。彼女は寄ってくる男たちに対して笑顔で受け答えしている。俺と目線があうと、軽く手を振ってきた。

「サートル、おはよう」

「お、おう。エルダ、どうした、朝っぱらから」

 頭をかきながら幼なじみの少女に近寄る。周囲で口笛が聞こえたりするが、一切無視した。

 彼女は手提げバックを俺の前に差し出した。

「お弁当よ。朝早かったから、おばさんが渡せなかったって。そんなに早くから何をしているの?」

「ただの走り込みだよ。……ありがとな」

 昨日の模擬戦で負けたのが悔しかったから走っていたなんて、かっこ悪いから黙っておいた。

「じゃあ私はこれで。お店が開店しちゃうから。今日も皆さんに迷惑かけないで、頑張ってね!」

 彼女のことを送り出すと、少し離れたところで見守っていたさっきの先輩が寄ってくる。

「お前さ、本当にわかりやすいよな……。可愛い子だな、エルダちゃんって」

「いや、あいつ見た目は女らしいですが色々と頑固で面倒な女ですよ。どこが可愛いんですか?」

「その台詞、微妙に惚気ているよな……。俺は手を出さないから安心してくれ。ただし他の奴らで彼女を狙っている人がいるから気をつけろよ」

「は!?」

 思わず声をあげると、先輩は俺の背中を強く叩いて、再び離れていった。

 なんだか胸の中がもやもやする。

 誰だ、エルダを狙っている人間っていうのは!


 前回、完結ボタンを押した後に、1本だけ番外編を書き下ろしましたので、追加しました。

 サートル視線の微笑ましい掌編でした。

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