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宝珠細工師の原石  作者: 桐谷瑞香
【番外編】
37/38

純白の魔宝珠

Text-Revolutions 第5回内有志企画

キャラクターカタログ2に参加作品

 カランカランと軽やかな音が店内に響きわたる。視線を下げて作業していたエルダは、慌てて顔を上げた。ドアから十歳くらいの少女が入ってくる。

「お姉ちゃん、魔宝珠を磨く人?」

「そうだけど、どうしたの?」

 少女はポケットから手で掴める大きさの石を取り出した。汚れており、黒ずんで見える。

「お母さんがね、昔は輝いていた魔宝珠だって言っていたの。これを綺麗にできる?」

 少女から石を受け取り、エルダはそれを光に透かした。かなり汚れがこびりついている。

「確認だけど、これは魔宝珠なのよね?」

 エルダの問いに対し、少女はこくりと頷いた。

 魔宝珠は他の石と比べて光沢があり、見る者の心を躍らすような輝きを放っている。なぜなら宝珠には精霊の残滓が残っているからだ。本来持っている力を取り戻すためには、磨く必要があった。

「昔、お父さんがお母さんにあげたものなの。これが輝けば、お母さんも元気になると思うの!」

 少女が両手を握りしめて言い切る。少女が抱えている事情はわからないが、輝かすことができれば彼女の顔は明るくなるかもしれない。

 エルダは椅子に腰を下ろし、布で表面を磨いた。だが頑固に付着した汚れは落ちなかった。

 次に研磨用の宝珠を取り出し、力の入れ加減を調整しながら磨いた。汚れは少しずつとれ、黒色の付着物が机の上に落ちた。

 少女が見守る中、懸命に磨き続け、やがてすべての面をやり終えた。現れたのは純白色の宝珠。見ているだけで惚れ惚れするような色である。

「結婚指輪ならぬ、結婚宝珠じゃないか」

 エルダの師匠であり、この店の店主ヴァランが買い物袋を抱えて中に入ってきた。

「結婚する際、指輪の代わりに宝珠をあげることですよね? 流行りましたが、この色の宝珠は輝きを保つのが難しいから、長続きしなかったと」

「そうだ。磨いてわかったと思うが、かなり汚れが付きやすいんだ。だが一度磨けば数ヶ月はもつ」

 エルダは純白の魔宝珠を少女に手渡すと、彼女の顔はぱっと輝いた。

「ありがとう、お姉ちゃん! お母さんも喜ぶ!」

「こちらこそ磨かせてくれて、ありがとう」

 そして少女は足取り軽やかに店から出ていった。

 ヴァランは腕を組んで、その背を眺める。

「魔宝珠に込められた想いは、いつまでも残る」

「だから皆、魔宝珠を身につけているんですよね」

 人から人に贈られる魔宝珠。それを輝かすために、今日も魔宝珠を磨き、細工をし続ける。

お読みいただき、ありがとうございました。

これにて番外編も含めて、宝珠細工師の原石の更新は終わりとなります。

イベント用の同人誌先行で作ったものですが、web版でもお楽しみいただけたのなら幸いです。


同人誌版に興味がある方は、目次下部にある『◇製本化情報ページ◇』をご覧ください。

web版では一部未公開の話も載せています。

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