Remake Angel
もうヒトリの天使は生まれる。”Z”が存在する世界で
旧嵜はポケットからカッターナイフを取り出した。
「はい、どうぞ」
旧嵜は優しく言う。
「何よこれ」
栞は返す。
「何ってカッターナイフだけど」
旧嵜は馴れ馴れしく言った。そして栞の右足に容赦なくカッターナイフを突き立てた。そしてそれを一息に引き抜いた。
「ひぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
栞は泣き叫ぶ。旧嵜は笑う。
「叫び声すらも美しいよ君は」
旧嵜は嬉しそうに言った。そしてナイフを口の中に入れ栞の血を舐めた。
「うん、美味しい」
旧嵜は笑って言った。栞は泣き疲れてもう何も口から出なかった。
ー2日目ー
栞は新しい楽しみを見つけた。鳥である。種類は分からないがたまに近くで鳴き声が聞こえる。それだけでよかった。いつか出られることを信じて。そんなことを思っていたとき。旧嵜が入ってきた。手にまた何か持っている。よく見るとそれは弁当箱だった。
「ご飯にしましょー」
旧嵜が言う。栞は何も言わなかった。旧嵜が箱を開けると中には米と豚肉とサラダが入っていた。
「食べなよ」
旧嵜が言った。栞は首を振る。
「食べろよ」
旧嵜は言う。栞は首を振る。
「食べろって言ってんだろうがァ!」
旧嵜は隣の椅子を蹴り飛ばす。そして栞の顔を弁当に叩きつける。彼女から呻き声が漏れる。
「あーあーあー食事を台無しにしやがって」
旧嵜は言った。だがその言葉に感情はこもっていなかった。そして下に落ちた食べ物を見る。
「勿体無いなあ、あはあはあは、ひひひ」
何故か彼は笑っていた。彼女にはそれが何故なのか分からなかった。そして栞の頭を掴んで口についている食べ物を舐めとった。
途端窓際で鳥が鳴く。彼は自分を助けに来てくれたんだろうか。実は呪いを掛けられていて、鳥になっているだけで本当は王子様なんじゃないだろうか。栞はそんな淡い希望を抱いた。
「うるせぇんだよ!」
旧嵜は怒鳴った。だが王子様はまだ啼き続けている。
旧嵜は頭を右手で抑えながら左手で王子様をつかんだ。王子様は手の中で暴れ回っている、そして旧嵜を噛んだ。
「ゴミが!」
彼は吐き捨てて。王子様を放り投げた。王子様は一目散に逃げていった。こちらに来ることもなく。栞はそれを見て絶望した。
誰も私を助けてくれないの?何故何か私悪いことしたの?悪い子なの?誰も私に期待していないのなら私ー
私は私に期待するわ私は正義になる。マスターの元で働き...そしていつか...マスターを殺すわ。
ー16日目ー
彼女は固い意志を持った。
日が経つにつれ旧嵜のアソビは酷さを増した。
毎日のように殴られ蹴られ血を飲まされ続けた。
旧嵜は私を人として扱わなくなった。毎日のようにストレス発散の道具にされる。もう何が何だか分からない、あははおはよう太陽、お久の月様。
そんな生活が続いたある日。食事の中に鼠が入っていた。栞は鼠がどこかへ行くまで待った。だが鼠はこっちに近づいてきた、そして彼女の足を齧った。
痛みが込み上がってくる。だが彼女は何も言わない、ある策を思い付いたからだ。そして旧嵜が帰ってくるその瞬間鼠は消えた。彼女は頼んだ。
「あ...あのぉ...旧嵜さん...私...これ先食べたいのぉ」
旧嵜はいいよとニッコリ笑った。そして栞の口の中に鎖を入れ、そのまま殴りつけた。彼女の口から血が溢れる。
「痛いよぉ...それ先食べたいのぉ...」
栞は泣きながら言う。旧嵜は弁当を持ってこちらに来た。
「そんなに食べたいならあげるよ」
彼は栞が食べたがっている目玉焼きを自分のズボンに置いた。しかも丁度アレがある場所に。
「ほらさあどお...ってわあ!随分とがっつくねえ」
旧嵜は茶化す。だがその声は栞に届いていなかった。
臭い、汚い、気持ち悪い。彼女の中にそんな感情が生まれた、だがそんなモノを気にしている余裕は無い。
「ふぅぅぅ...気持ち良いよぉ栞」
旧嵜は恍惚とした表情で言う。
「喜んで頂きありがとうございます、マスタぁ」
彼女も恍惚とした表情を浮かべて言う。
そして彼は弁当を食べた。彼女は言った。
「旧嵜さん...明日の夜いつもみたいに一緒に眠りましょ貴方が居ないと私寂しいの...」
旧嵜の表情がとても明るくなった。そして彼は外に出ようとした。そのとき栞はまた言った。
「待って 旧嵜さん私寂しいのだから...傍に居て...くだ...さい...ね?」
旧嵜は笑って、自分の上着を栞に被せた。栞は声を殺して服の裏で笑った。
ー17日目ー
旧嵜は異変に気付いた。呼吸が出来ないのだ。そして額を触る...熱い。
「あぁ?ヒューヒューどうらってやが..ゴホッゴホ」
彼は思わず咳き込む、床には自分が咳き込んだ証拠のように血がこびりつく。
「あははははははははははははははははははははは貴方が昨日食べたのは鼠が這い回った食べ物よぉ発症の速度から察するに、貴方肺ペストよぉ〜けたけたけたけた残り少ない余生楽しみなよぉ」
彼女は壊れたように笑いそして言った。彼女は知っていた、この部屋に監視カメラは無い。何故なら脱出が不可能だからだ。この部屋から出るための手段は前の扉を開ける以外存在しないからだ。空気は下のファンで賄い。食事は誰が持って来ればいい話だ。旧嵜曰く前の扉以外で出れば死ぬらしい。だから彼女がどれだけ笑おうが外には聞こえない。
「てめぇ...何しゃがっ...ウッ...きぼちわるぃ...」
旧嵜は黄色い何かを口から出している。旧嵜は喋る。
「ヒハッ息...できな...糞が...ガハッ...」
旧嵜は血を口から吐きながら話す。そして動かなくなった。栞は静かに彼の亡骸を見た。動いていない、と思った矢先旧嵜は動き出した。
「僕がぁぁぁぁぁぁこの程度でぇっでっでつ死ぬ訳がなびじゃるるるおぅ」
旧嵜は口から赤や黄色の何かを出しながら言った。そしてポケットから包丁を出す。旧嵜は吐きながら最後の悪足掻きと言わんばかりの勢いで自分の左薬指を切断した。
「あああぁぁぁぁぁぁ気持ち良いよぉぉぉぉぉオブッ
ゲバッゲバッおうえええぇぇぇ」
旧嵜は吐きながら喋る。そして栞に近づく。そして自分の切断した指を栞の口に押し込んだ。栞は吐き出そうとした、だが旧嵜に喉の中に押し込まれ、飲み込まされた。
その瞬間、もうヒトリの天使が生まれた。髪は雪のように白く、目は今までとは違う冷たい氷のような目。
旧嵜は歓喜した。が力を使い果たし遂に天使の足元に倒れ込んでしまう。
「ああ、天使さんのぉぉぉぉ足の匂いぃぃぃぃぃぃぃ
良いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
旧嵜は言う。天使は足を使って彼の顔を踏んだ。旧嵜から呻き声が漏れる。その後、天使は何も言わず彼の目に足の指を入れた。旧嵜は動かなくなった。
ーSome Days Laterー
「お帰りなさいませ、マスター」
彼女は満面の笑みを浮かべて言った。
「最期の遊びだ、この椅子に座ってくれ給え」
彼女は歩み寄る、お菓子の椅子へと。
読んで頂きありがとうございます、どーも野菜大好きな二本針怜です。
相当な鬱作品になっちゃいました。
友達に言われました、後書きの方が面白いと...
うん...