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COLORS☆MAGIC  作者: 朱月えみ
1章:始まりの唄
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始まりの唄7

▽花畑の中の一軒家


時々道なき道を通りながら、エリナに誘われやってきたのは花畑だった。そこに家が一軒、ぽつんと建っている。


「此処?」

「うん!はやくはやく!」


サトシは引っ張られながら玄関に辿り着くと、エリナは「ただいまー!」と元気よく扉を開け放った。開けた扉の先には女の人が立っている。ただ、その顔は驚愕を浮かべていた。そして、


「エリナ!勝手に一人で外に出ていっちゃダメって言ったでしょう?!」


女の人はエリナを見るなり大声を出した。エリナの小さな身体が大きく跳ねる。女の人はエリナの傍まで近寄ると身を屈み込んだ。そして、余程心配していたのだろうか、エリナの身体をぎゅっと抱きしめた。


「おかあさん、ごめんなさい……」


――お母さん。そっか、この人がエリナの母親か。


桃色の長い髪。エリナとよく似ている。


ねえ、


何故か胸の奥が


ギリギリいって


痛いよ……


「無事で良かった……。エリナ、お帰りなさい」


お母さんがエリナの頭をそっと優しく撫でる。


ギリギリギリ


痛い


吐きそう


サトシは苦しくて胸を押さえた。二人の姿をじっと見ながら。


「あのね、おかあさん。おともだちができたの。サトシくんっていうの」


エリナの言葉で、サトシは我にかえった。


「そうなの!良かったね」

「うん。サトシくんは、すごいんだよ。たびをしているんだって!」

「旅?」


お母さんがサトシの方を向いた。不思議そうな顔をしている。


「あ、はい……。仲間と一緒に旅をしています」


と、口にした瞬間、ライン達の事を思い出した。帰らねばならない。泊まる場所も決まってないのだ。もしかしたら今日中にもこの村から去らねばならなくなるかもしれない。


「何処から来たの?」

「ウドゥン国から来ました」

「ウドゥンって随分遠くから来たんだね。何処に向かっているの?」

「特には……。とりあえず北へ」

「ブライト国へ?」

「そこまではちょっと……。仲間に聞かないとわからないです」

「もし、ブライトに寄るのなら、アバパインタウンのサーカスを見に行くといいよ。あたし、あそこの街に暫く住んでいた事があるんだ。サーカス、とっても楽しいから」


そう言ってニッコリ笑う彼女に「仲間に相談してみます」と苦笑いでサトシは答えた。


「あ、そういえば、この村って宿とか無いでしょ?泊まる所とか、決まってる?」

「い、いえ……」


しまった。「自分はわからない」と答えたときゃ良かった。もしかしたら、ライン達がもう決めちゃってる可能性もあるのに。


「じゃあ、家へ泊まっていって!エリナも喜ぶし」

「サトシくん、うちにおとまり?やったー!」


やっぱり!気を使ってくれているのはわかるし、ご好意に応えたいのが本望だが、今此処にはラインもヒカルも居ない。自分のせいでこんな旅に付き合わせている二人の承諾無しで勝手な事は出来れば避けたい。


「では、遠慮無く泊まらせていただきます」


返事を渋らせているサトシの真後ろで聞き覚えのある声が聞こえた。しかも、泊まる事になったらしい。


「良かったぁ~。あたし、もう少しで不法侵入する所だったよ~」

「って、まだ言ってたのかよっ!」


思わずサトシの裏手突っ込みが炸裂した。真後ろに居たのは、ラインとヒカルだった。


「二人は何故此処に?」


タイミング良く現れたので尋ねてみたのだが、


「まあまあ、それは置いといて~。カオリちゃん、お久し振りです」

「ラインくん、お久し振りです。サトシくんが話していた仲間ってラインくんの事だったんだね」


サトシの質問は華麗にスルーされた上に、二人は顔見知りみたいだった。楽しそうに談笑までしている。


「うんうん。まあ、訳有ってチビッコ連れて旅の最中だよ~」

「くすくす。相変わらず訳有りなんだね」

「すんません」


相変わらず訳有りってどういう事なんだ?とか思いながら、サトシはラインとカオリと呼ばれたお母さんを交互に見ていた。


「あ、エリナちゃん。お父さんがお外でエリナちゃんの事を捜してたよ?」


ラインは思い出したかのようにエリナに声を掛けた。ラインとヒカルの登場によりエリナはカオリの後ろに隠れてしまっている。


「あ、いけない!すっかり忘れてた!」


「うっかり」とか言いながら、カオリはエリナの手を握ると微笑んだ。


「エリナ、一緒にお父さんを迎えに行こうね」

「うん。サトシくん、またあとでね!」

「あ、……うん」


曖昧な返事をしたサトシ。本当に此処に泊まるのか。

そして、カオリとエリナはサトシ達三人を残して何処かに行ってしまったのだった。


「――公園でボーっとしてたら、見覚えのある人を見掛けてさ。声を掛けたんだ。やっぱり知り合いで、しかも、エリナちゃんを捜してるって。オレ達びっくり!」


二人が見えなくなってからラインの説明が始まった。サトシの質問はちゃんと覚えていたみたいだ。


「んで、サトシの魔力を探したら此処に辿り着いたって訳」

「――ふーん……」


成る程。そういう事か。


「お父さん、『うちの娘を知らないか?!』ってすごく慌ててたよ」


ヒカルが捕捉する。


「さっき、エリナ叱られてた。勝手に外出してたみたい」

「成る程ねー。そりゃ心配しちゃうわ」

「オレ、ちっさい頃に一人で脱走して事故った事あるから、小さい子は気を付けないとだな」

「ラインの小さい頃ってやんちゃそう。……小さい子をずっと見てるのも大変そうだよね。ちゃんと子育てしてる親って凄い。うちの親、あたしの事親戚に押し付けて冒険ばっかしてたもん」

「ひでえ」


ラインとヒカルがずっと喋ってる。お母さんとお父さん、か……。


ギリギリギリギリ


あ、また痛い

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