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COLORS☆MAGIC  作者: 朱月えみ
1章:始まりの唄
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始まりの唄28

▽そろそろ


「――では、オレ達はそろそろ、この辺でおいとまさせていただきます」


朝食を食べた後、サトシ達は旅支度を済ませ、家の外へ出ていた。


「もう少し泊まってってもいいのに……」


名残惜しげにカオリが呟く。サトシだって、エリナと離れたくはない。しかし、このまま此処に滞在し続けると大食いのサトシのせいで食費がかさむと思うのだが、そこは考えているのだろうか。


「いや、さ。実はさっき長老から手紙が届いて、サトシに『更なる修行の為に帰って来い』との事なんだよね」

「え」


ラインはズボンのポケットから紙切れを取り出した。この紙切れこそが、長老からの手紙なのだろう。サトシはラインから手紙を引ったくると内容を読んだ。


「――あのジジイ、一体どうやってオレを見張ってるんだ?」


サトシの顔がみるみるうちに真っ青になる。


「たしかに情報早いわね……」


一緒に読んでいたヒカルの顔まで青くなっていった。


ここから長老がいるウドゥン国の森の家までは、かなりと言っていいほどの距離がある。今朝あった出来事を知ってる上に、たった数時間しか経っていないのに手紙なんか出せるはずがない。一体どういう手を使ったんだ。


「長老……、何者?」


ヒカルは思いきって聞いてみた。『ある界隈では有名』らしい。魔法や魔術も使えるらしいし……。しかし、サトシは首を傾げる。


「さぁ?ただのエロジジイとしか……」

「うわ……。なんか、ヤダ」

「引き取られたオレもヤダ」


頼んではないが一応命の恩人。あまり貶したくは無いが、エロジジイなのは事実である。あんな大人にはなりたくないくらいである。

ただ、彼が居なければ、ヒカルやヤマトと再会出来なかった訳だし、姉貴やライン、あの『お人好し』やエリナやアスカ達にも出逢えなかった訳だから、そこだけは感謝しておこう。


どんな顔をしていいのかわからず顔を引きつらせたサトシを見て、ヒカルはふっと笑うと、哀れみの念を込めてサトシの頭を乱暴に撫でた。そして、いつもの台詞を言うのだった。


「本当に哀れな少年だねぇ、君は」

「なっ?!」


グシャグシャになった髪のまま、サトシはヒカルを睨み付ける。同情されるの嫌いだって言ったのに!もう!


「あははははは!……それにしてもさ。今朝あんなに大暴走したばかりなのに、もう落ち着いてるなんて、修行の成果って思わない?」

「えっ?……あ」


ヒカルに言われ、考えた。……そういえばそうだ。旅に出る前は、暴走した際、大概は無理矢理押さえ付けられた後に鬱状態に突入。食事放棄や引きこもり等を繰り返していたのだが、今はスッキリとしている。胸のつっかえが取れたような、憑き物が取れたような、そんな感じがする。


これが、皆に支えられて、修行して、頑張ってきた成果……。


嬉しくて、サトシの顔が綻びかけた瞬間、


「単純」


ラインの刺の含んだ一言が、思いっきり胸に突き刺さった。


「喜ぶのは、完全に暴走しないようになってからにしろ」


難しい顔をして溜め息をつくライン。きっと、「また何かあったら、暴走するに違いない」と言いたいのだろう。そして、サトシも暴走しないと言い切れない。信用の無さと自信の無さにサトシは落ち込んだ。


……オレはちゃんと成長してる?背は伸びたのは流石に自分でもわかる。


「精神を鍛えるには、まず肉体から」と長老に教わったけど、本当に肉体を鍛えたら精神も鍛えられるの?オレはちゃんと鍛えられてるの?


うっすらと付いた筋肉の存在は、肉体を鍛えられてる証拠になってる?じゃあ、精神は?精神は鍛えたらどうなるの?


「……サトシくん。また考え事?」


エリナに話し掛けられて我にかえった。エリナは呆れた顔でサトシを見ている。あれ?また、違和感が……。


「あはは。サトシは、自分の世界に入り込む事が多いもんね~」


そう笑いながら、ヒカルはサトシの頭をぽんぽんと叩いた。ちょっと痛い。


「一体、何を考えているんだか」


ラインはラインで、呆れた顔をしている。


「何を考えていたの?」


にこにこと微笑むカオリとアスカがサトシに詰め寄る。


「お、教えない……」


サトシは再び顔を引きつらせると一歩後退った。

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