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COLORS☆MAGIC  作者: 朱月えみ
1章:始まりの唄
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始まりの唄26

▽願い


それは、五年程前の事だった。オポルト国の小さな村に、この辺では珍しい青い髪の母子が住んでいた。


若い母親ノリンは、気さくでよく働き、そして何より村の人間の中で一番強かった。

幼い息子サトシは、よく笑いよく泣く子で、そして母親を困らせないよう、聞き分けのいい子だった。



その日は、母さんの誕生日だった。


母さんを驚かせようと、晩御飯後の片付けをしている間にクレヨンで似顔絵を描いていた。「おたんじょうびおめでとう」って書きたかったけど、まだ文字は書けないから、渡す時に言おうと決めて。


描き終えて、ふと、窓の外を見ると、真ん丸の月が見えた。その月は徐々に朱く染まっていった。


そこからは、記憶が曖昧だ。


誰かいた気がするのだが覚えていない。ただ、お月様に向かって、何故赤いのか聞いた事は覚えている。その後、背中に鋭い痛みを感じた後、母さんの叫び声を最後に、目の前が魔力が身体がぐにゃぐにゃになって、訳がわからなくなった。


ただ、あかい世界の中、「たすけて」と叫び続けていた。


気が付くと朝だった。同じ格好をした大人が何人もやってきて、魔術で何かをしていた。すぐに魔術師だってわかった。身動き出来ないように取り押さえられた後、魔術師のうちの一人が、黒いドロドロとした液体で背中に何か描き始めた。背中は段々と熱くなって、すごく痛くて苦しかった。


その後、縄で縛られて連れていかれたのは、死体の山だった。男、女、子ども、老人。年齢も性別も関係無しに、そこに積まれていた。そして、そこには、母さんの姿もあった。


──全て、お前がやったんだ、と言われた。


その後は、木で出来た十字架にくくりつけられ、猿ぐつわを噛まされた。沢山の怖い顔をした大人に囲まれて、石を投げられた。怖い言葉も投げられた。


どれくらい経ったかわからなくなった頃、足元に沢山の薪が積まれて、猿ぐつわが外された。そして、薪に火が付けられた。


熱くて苦しくて怖かった。視界が炎の赤で埋め尽くされて、叫んでいるのに徐々に声が出せなくなって。でも、これで、母さんの元へ逝けるとも思った。


でも、死ねなかった。バケツの水を引っくり返したかのような土砂降りの雨が降ってきて、炎は全部消えてしまった。炎を消した雨はすぐに小雨に変わると、知らない老人が姿を表した。老人は、十字架から降ろしてくれて、その上、抱き上げてくれた。火傷の痛みは何故か無くなって、熱さも無くなっていた。


『お前にしか出来ない事がある』


老人がそう言うと、視界が真っ白になった。



「……オポルトの話は、これで、おしまい」


サトシの話を皆は黙って聞いてくれていた。これから先はラインやヤマトの方が詳しいと思う。ただ、この話はサトシが主観であって、わからない事も知らない事もあるだろう。それでも、話さなければならないと思った。


「あたし達の話も聞いて貰っていい?」


そう言ったのは、カオリだった。サトシは頷くとカオリは深呼吸を何回かしてから、サトシの視線に合うように膝をついた。


「……あたしとアスカは少しの間、アセンズに住んでたの。そこで出会ったのが、あなたのお母さんのノリン。あたしとノリンはすぐに仲良しになった。ノリンはあたしの一番の親友」


しばらくして、ノリンは結婚した。大好きな人と結ばれて、とても幸せそうだった。でも、ある日、ノリンは姿を消した。


「……オレ達の目の前から、黒い靄に包まれて、消えてしまったんだ」


そう言ったラインは拳を強く握り締めていた。少し震えているようにも見えた。


「アセンズの国の神である青龍が言うには『連れていかれた』らしい。我々は必死になって捜した。何年も何年も。そして、ようやくオポルトで見付けたんだ。お前達親子を」


ヤマトがオポルトに来たのは、サトシと仲良くさせる為。ノリンを国に連れ戻す際にサトシが一人にならないように。

すぐにアセンズへ連れていくはずだったが、色々と問題が生じてすぐには連れていけなかった。


「我々としては問題など無視してさっさと連れ帰れば良かったと後悔している。サトシが魔力を暴走させるなんて微塵も思ってなかったからな。それに、連れ帰ってさえいれば、もし、アセンズで暴走してもサトシを傷付けない方法で止める事も可能だった」


アセンズでは異端者を保護する法律があり、魔力の暴走を止める対策もあるのだとか。異端者の為の天国と影で言われていたりするらしい。


「オレは個人でノリンさんを捜していて、あの日、オポルトの、あの村のすぐ近くまで来てたんだ。あそこにノリンさんが居るという噂を聞き付けて」


しかし、ラインが見たモノは、大暴れする巨大な龍と破壊される村だった。


「あたし、その日は隣村のお祭りに行ってて、あの日の事は殆ど知らない。知ってるのは『悪い龍が村をめちゃくちゃにした』って事くらい。子どもには、そうとしか説明されなかった」


あの日から数日後、ヒカルは大人の目を盗んで夜中に村へ戻った。瓦礫だらけの村の中心に、サトシは磔にされていた。火刑かけいにされるって大人が話しているのをこっそり聞いた。サトシもヒカルが来た事を知っている。サトシにとってヒカルは隣の家のお姉ちゃんだったから。


「ラインからの知らせを聞いて、我々はすぐにオポルトに向かった。だが、そこにサトシは居なかった」


生き残った村人に訊ねたが、サトシの消息を知る者は誰一人としていなかった。捜して捜して、ようやくウドゥンで見付けた。


「本来ならば、サトシをアセンズへ連れ帰りたい所なんだが、サトシを助けてくれた長老という老人は『ある界隈』では有名人らしく、我々は長老にサトシを預ける事になった。そっちの方が『安全』と判断して」


「……そっちの方が安全って、どういう意味?」


「明らかに人間不信になってるのに、大勢の人間に保護されたくないだろ?もし暴走した時に対処ができて、尚且つ少人数で、人目に付きにくい。長老が住んでるウドゥンのあの森の中がサトシを守るのに適してたんだ」


いきなり旅に出された理由はサッパリだけど、とラインは付け足した。今回サトシがわかった事は、自分が『アセンズ国』という国の観察保護対象であり、見ず知らずの沢山の人に心配掛けられている事だった。


「わからない事いっぱいあるだろうけど、本当は、いっぱい事情とかもあるんだけど、オレ達の立場上とかサトシがまだ子どもだからとか理由があって全部は話してあげられない。でも、少しずつ、時間を掛けて話していく。だから、今は、」


今は、心を休ませて

元気になる事だけを


それが、我々の願い……。

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