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COLORS☆MAGIC  作者: 朱月えみ
1章:始まりの唄
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始まりの唄24

▽特別な存在


「プレゼント、渡せたか?」

「それがタイミングが無くて渡せなかった」


真夜中。月を眺めていたサトシの元に忍者の格好をしたヤマトがやってきた。お誕生日会の際には居なかったヤマト。プレゼントを渡せたか気になっていたらしい。


「明日の朝に発つんだろう?」

「うん」

「どうするつもりなんだ?」

「別れ際に渡そうかなって」

「そうか」


行き先は大して決まっていないが、一応、旅の途中である。いつまでもこの家に厄介になる訳にはいかない。


「……寂しく、無いのか?」


しばらく二人で月を眺めていると、ぽつりとヤマトが呟いた。痛い所を突いてくるなぁ。


「……寂しいに決まってるじゃん。初恋なんだぞ」


サトシは深い溜め息をつく。次にいつ会えるかわからないのだ。それに、遠距離片想いなんて、実るかわからないし。このまま、恋心も消えてしまうのだろうか。


「なーに、話し、してんのー?」


そこにラインとアスカがやってきた。二人とも、サトシが起きてるとわかっててやってきたのだろう。


「男同士の秘密の話だ」


ヤマトはそう言ってニヤリと笑う。二人だけの秘密にしたいのか。まあ、恥ずかしいからいいけど。それに、ヤマトともっと仲良くなれた気もするんだ。


「何それ!むっちゃ気になるやん!」

「……いや、その変なしゃべり方の方が気になるんだけど」


ラインはたまに変なしゃべり方をする。何を言っているのかわからない時もあったりするのだ。


「変ちゃうし!」

「おそらく方言だな。大昔の言葉だ」


物知りのアスカが答えた。


「……ラインって、過去からきたの?」

「ちゃうわ!色々あって、このしゃべり方なんや!ああもう!何で此処は標準語しかしゃべらへんねーん!」

「……何を言っているんだ」

「もう……、不便……」


こちら的には不憫なんだが。言葉の違いは大変そうだ。大昔は国や地域によって話す言語が違っていたらしい。今でも挨拶とか物の名前とかは国によって違ったりするけど、意思の疎通ってどうしていたんだろう。


「大昔と言えば、『伝説の魔法』を知ってるかい?」

「……伝説の魔法?」


アスカは頷くと話を続ける。


「伝説の魔法『カラーズマジック』。これは、何処にあるのか、どんな魔法なのか、人間は誰も知らない伝説上の魔法の事。魔法や魔術の真理を求めている研究者達やトレジャーハンター、悪巧みに使おうと考えている者が血眼になって探している。神様達はどんな魔法か知っているが人間には絶対に教えない。神様達はその魔法の価値を存在意味を知っているからだ」

「存在意味?」

「ああ。この世の全てには存在意味がある。無意味なモノなんて無いんだ」

「……長老も、同じような事、言ってた」



──お前にしか出来ない事がある


助けられたあの日、長老はそう言った。


「オレは、役目を持って生まれてきたんだって。だから、その役目を果たすまでは死んではいけない、って」

「それ、オレも聞いた。サクヤさんにだけど。サトシにはやらなければならない使命があって、絶対に死なす訳にはいかないから何としてでも護れって。なあ、ヤマト」


ラインの言葉にヤマトは頷く。


「ただ、サトシのやらなければならない使命と言うものが何なのかまでは俺達も教えられていない。サクヤさんが言うには『いずれ本人が思い出す』って」


いずれ本人が思い出す……?どういう事だ?


「……もしかすると、サトシは『特別な存在』なのかもしれないな。サクヤさんがそこまで言うという事は」


特別な存在……?アスカの言葉にサトシは


「いや、無い」

「早!ちゃんと考えた?!」

「考えた考えた」

「本当かよー」

「そもそも、『特別』の存在から怪しい」

「『特別な存在』は存在しないと?」

「そう」


根拠は無い。自分が『特別な存在』と思いたくないから言っただけ。『普通』や『平凡』がいい。木を隠すなら森に、人を隠すなら人の群れに。隠れたい。周りに溶け込んで、存在を消したい。


いや、無い。


違う。


嫌、無い。


昨晩切った場所を、切りつけたにも関わらず、すぐに塞がってしまった傷を擦りながら、サトシはその場から立ち去っていった。

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