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COLORS☆MAGIC  作者: 朱月えみ
1章:始まりの唄
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始まりの唄16

▽恋って何?


「じゃあ、修行の話はここまでにして青龍の話に戻ろうか。サトシ、何か質問とかあるだろうか」


質問……。アスカに促され考える。


「……青龍が『恋多き神様』って言ってたけど、そもそも、『恋』ってどんなのか……、よく……知らない……」


言っていて段々と恥ずかしくなってきた。馬鹿にされるかも。


「えっと……、そういう感情があるのは知ってるけど、経験した事が無いから、わから、なく、て……」


恥ずかしさのあまり、とうとう俯いてしまったサトシ。ああ、また、子ども扱いされる。もうヤダ……。

しかし、ラインとアスカの反応は違った。


「まあ、経験しなければわからないな」

「だよねー」

「……え?」

「説明も難しいな」

「そうなんだよねー。『好き』にも種類があるからねー」

「とりあえず、『恋』は特定の異性を強く慕う事、だな。切なくなる程、相手を好きになる気持ち」


そう話すアスカは、何を想っているのか、そっと胸を押さえる。


「切なくなる程、好き……?」

「好きだけど苦しい。相手の事を想うと、愛しくて胸が苦しくなって、嫉妬したり、やきもきしたり」

「四六時中、とまではいかなくても、気が付いたら相手の事ばかり考えてたり、な」


……母さん?いや、違う。嫉妬したり、やきもきしたりなんかしない。母さんの事を考えて苦しくなるのは、愛しいからじゃない。


「……ヒカルが言ってた『いつか出来る大切な人』?」

「ん~?ヒカルちゃんとそんな話したの?」


サトシは頷く。ヒカルは言ってた。「誰でもいつかは、大切な人が出来るし、大切な人になれるの」と。恋とはそれなのか?


「『大切な人』……。ノットイコール、かな。大切な人って言ったら、『恋愛の相手』だけじゃなくて『友達』とか『親兄弟』とか、誰だっていいんだよ」

「……うん」


ヒカルは言ってた。姉貴とラインは、オレが『大切』なんだって。本当かな……。


「……ラインは、大切な人、いるの?」


思いきって聞いてみた。するとラインは、見た事が無いくらい優しい顔で、一言呟いた。


「……いるよ」

「ほう。誰なんだ?」

「教えなーい」


そして、いつもの悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「そう言うアスカはどうなのさー?」

「私か?私は……、沢山いるからな……」


そう言うものの、アスカの顔は少し寂しそうで。どうしたのかな。大切な人と何かあったのかな。誰かが元気無いのは、嫌だな……。あれ?これも『大切』なのかな……?


「……オレにもいつか、『大切な人』が出来たり、『恋』したり、するのかな」


ぽつりとサトシは呟いた。だって、オレは、人の姿をしているけれど、本当はバケモノなんだ。もしかしたら、人として当たり前の感情も、手に入らないんじゃないだろうか。


「余程じゃない限り、すると思うよ~?」


と言いながらニヤつくライン。一体何を考えているんだ。きっと、ろくでもない事に違いない。それなのに、警戒しているサトシなど気にも留めず、こんな事を言い出した。


「そうそう。お前さぁ、エリナちゃんの前ではよく笑うんな」


……え?


「オレ等の前では滅多に笑わないのに、一生懸命エリナちゃんを笑わそうとしてる」

「いや、だって、エリナ、暗い顔してた、から……」

「本当にそれだけかぁ?」

「だって、笑った方が、可愛い、気が、して、笑って、欲しいなぁ……、って」


そして、気が付いた。ラインとアスカが興味津々でサトシを見ている事に。


「な、何……」


徐々に羞恥心が襲い掛かり、顔を真っ赤にしてサトシは膝に顔を埋めた。何だろう。鼓動が早い気がする。


「エリナちゃん、可愛いもんなあ。でも、他にも可愛い子っていっぱいいると思うんだ」

「うちの子が一番可愛い」

「親バカは引っ込んで。では、サトシくん。可愛い女の子、いっぱい思い浮かべてください」

「な、何で?」

「いいから!思い浮かべたな?じゃあ、エリナちゃんと他の女の子と、比べて何が違う?」


他の女の子とエリナの違い……?エリナを思い浮かべてから、色々女の子を思い浮かべて、再び、エリナを思い浮かべた。違い……。


「……エリナだけ、宝石とかお星様みたいにキラキラして見える」

「ほう!」

「って言うか、他の女の子を思い浮かべても、すぐにエリナが浮かんできちゃう」

「ほうほう!」

「それに、心臓早くなってる気がするし、顔、熱い」


実際、サトシの顔は耳まで真っ赤になっていた。頭に浮かんで来てしまうエリナは、ずっと笑っていて、「サトシくん」と何度も名前を呼んでいる。鼓動が早くて胸が苦しい筈なのに、「嬉しい」と思ってしまう。


「さあ、サトシ、想像するんだ。此処はお花畑に建つ一軒家だ。朝、目が覚めると、エリナちゃんが起こしにきてくれた。とびきりの笑顔で『サトシくん、おはよう』って。キッチンに向かうとエリナちゃん手作りの美味しい朝ごはん。『あ、ケチャップがついてるよ』とエリナちゃんがお前の口元のケチャップを拭ってくれる……」

「……一体何を吹き込んでいるんだ。サトシの顔がのぼせたみたいになっているじゃないか」


顔全体にケチャップでも塗ったみたいな赤い顔をしているサトシ。ラインの囁きから生まれた想像……、いや、妄想は、ラインが口をつぐんだ後でも続いているらしく、サトシは小声で「……よめ」と呟いた。どこまで妄想が行ってしまったのかは本人しか知らない。


「……エリナちゃんをどうしたい?」

「……ぎゅーってしたい」


今なら何でも答えるかもしれないと考えたラインは耳元で囁くように問い掛けた。いつもなら「誰が言うか、クソバカ」と罵るのに、サトシは素直になってしまっている。いや、ポンコツになってしまっている。

なかなか珍しいサトシの様子に大興奮なラインは、更に囁き問い掛けた。


「……ちゅー、したい?」

「――――っ!!」


すると、サトシは声にならない声で叫んだ後、その場から逃げるように駆け出した。

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