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COLORS☆MAGIC  作者: 朱月えみ
1章:始まりの唄
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始まりの唄9

▽お父さんは上級魔術師さん


「さて、タダで泊めてもらう訳にはいかないよね~」


そういって、ヒカルは家の外に出た。外には洗濯物が干されている。


「取り込んで畳んどこうか」

「……此処のお家の畳み方わかるのか?」

「そんなの、タンスの中を見ればいいんだよ~」


ヒカルはどこまでも勝手である。嫌がられるに決まって……、って何でラインは「な~るほど」みたいな顔しているんだ。

結局、ラインが洗濯物を取り込み、ヒカルが畳み方の研究(?)をする事になった。良いのだろうか……。ちなみにサトシは別の仕事を任された。


――クレヨンの捜索、そして隠す事。


ヒカルが言うには「ラインはクレヨンがダメ」だそうだ。理由は「病気の関係」としか教えてもらえなかったが「視界に入らなければいい」との事。ただ、クレヨンで描いた絵は大丈夫らしい。でも、クレヨンがダメとは一体何……?サトシは疑問に思いつつクレヨンを探す事に。

リビングへ向かうとお道具箱を見付けた。思ってた通り、クレヨンはお道具箱の中に入っている。エリナが帰ってきてクレヨンでお絵描きを始めるかもしれない。クレヨンが無くて悲しい思いをさせてしまうかもしれないが、ラインの病気にとってクレヨンが悪ならば、滞在中だけクレヨンには雲隠れしてもらおう。

サトシはクレヨンを取り出しお道具箱を元の場所に片付けると今度は隠し場所を探し始めた。エリナの部屋は駄目だ。エリナが見付けてしまう。キッチン?駄目だ。エリナがお手伝いする子なら見付けてしまう可能性がある。エリナが入らない所がいい。

しかし、思い当たらない。サトシは散々悩んだ挙げ句、ヒカルの元へ持っていった。


「あ、そうだね。思い浮かばないよね」


事情を話したらヒカルはアッサリ納得してくれた。クレヨンは暫くヒカルの鞄の中にいてもらう事になった。ヒカルの鞄ならラインは触らない。女の子のプライバシーがどうのこうのらしい。

クレヨンの問題が解決したので、ヒカルと一緒にラインの元へと向かう。洗濯物を畳み終えた所でエリナ達が帰ってきた。きっと驚くだろうな。洗濯物は畳まれてるし、クレヨンが消えてるから。


「サトシくん、ただいまー!」


エリナが走ってきた。元気いっぱいだなあ。オレもエリナくらいの頃はこんな感じだった気がする。


「あのね、サトシくんは、おほしさま、すき?」

「……?うん」

「おとうさーん!サトシくんも、おほしさま、すきだってー!」


そして、走り去ってしまった。何の事かわからないまま、エリナのお父さんらしき男の人がやってきた。ラインと同じ茶色の髪をしている。と言うより全体的にラインと似てる。違いを述べるとすれば、髪の長さと瞳の色と歳だろう。それくらい似ていた。


「ラインのお兄さんですか?」


ヒカルに言われてしまった。お父さんは苦笑すると首を横に振る。偶然似ているだけみたいだ。


「んじゃ、紹介するね~。オレの友人のアスカさん」


全員揃った所で自己紹介。何故かラインが取り仕切る。


「アスカ・ディアーだ。図書館司書をしている」

「え?司書?」

「やっと、やりたい事が見付かって、な」

「そっかー。オレらが会った時は探し中だったもんな。見付かって良かった」

「ああ」


そして、次。


「カオリ・ピーチです。よろしくね。そして、こっちが娘のエリナ・ベリーです」


そう言って、エリナを抱き上げたカオリ。エリナは人見知りなのか、恥ずかしそうにカオリの髪に顔を埋めた。


「ヒカル・コンフェイトです!トレジャーハンター兼ミドゥル国観光案内やってます!」


ヒカルは何処からか名刺を出してくるとアスカに手渡した。


「若いのにやるなあ」

「十三で上級魔術師になった癖に何を言ってんだか」

「……好きでなったんじゃない」


ラインの突っ込みにアスカは不満げに呟く。だがサトシは「魔術師」という言葉に胃が痛み出すのを感じた。


――紫の魔術師が


黒い液体で……


「どうした?」


ラインの声で我にかえる。いけない、いけない。またやっちゃった。


「いや、えっと……、魔術師って……、よく知らないから……」


ああ、適当な言い訳だ。本当は『身を持って』知ってる癖に。


「『魔術師』と言っても種類があるからな。国に仕える者もいれば、嘱託だっている。私なんかは免許があるだけで魔術師としての仕事は一切していないし、ある専門の職種を極める為に魔術師になる者だっている。一概には言えないんだ」


……種類があるとは知らなかった。サトシが知っているのは恐らく『国に仕える者』だろう。沢山いた。同じ格好をしていた。あれ?でも、あの『紫の魔術師』は、少し違ったような……。


「魔術を使うだけなら魔術師ではなくとも、媒体を使えば簡単な術なら誰でも使えるしな。そもそも、魔術というものは、魔法が使えない人間が魔法を使いたいが為に作ったモノ。だが、実は魔法が使える君のような異端者の方が上手く扱えるそうなんだ」

「…………」


何故、オレが、異端者だとわかった……?


「異端者です」と言った訳でも、力を使っている所を見られた訳でもない。魔力だって漏れてない。そもそも、魔術で制御されているから感知だってされにくいのだ。ラインがサトシの魔力を感知出来るのはライン自身の魔力感知の精度が高過ぎるからだし、獣みたいな瞳だって、至近距離で見なければわからないはず。

もしかしてエリナが喋った?なら納得出来る。エリナ自身が異端者なのだ。「異端者の友達ができた」と言えばいい。


驚愕を顔に張り付かせて固まってしまったサトシを見て、アスカは首を傾げた。


「……友達のいないエリナが『友達ができた』と言ってた上に、まだ小さいのに旅をしている。しかも、ラインの連れ。だから、『異端者だろう』と思ったのだが、違っただろうか」


ああ、成る程。勘のいい人か。


「……ああ、うん。間違ってない。紹介遅れたな。コイツはサトシ・ドラゴン。ちょっとおませな、もうすぐ九歳」

「誰が『ちょっとおませ』だ!」


サトシは顔を真っ赤にしてラインを睨み付けた。すると皆が笑いだす。ラインといると、いつもこうやってからかわれるんだ。面白くない。

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