洞窟で出会ったものは...
淡い光が洞窟の中を照らす、 その神秘的な淡い緑の光は寄り添う二人の影の片方の手から溢れ出している。
千智が優也に対して回復魔法をかけているのだ。回復魔法をかけながら優也の事を心配そうに見る。
「大丈夫、ゆう君?」
「大丈夫、そっちも大丈夫か?寒くないか?」
二人がいる所はかなりの寒さで冬になったかのように寒い。
優也は千智の心配をし自分の上着を千智に着せようとするが千智は首を振り微笑みを浮かべる。
「大丈夫、寒くないよ。...ねえゆう君」
「なんだ?」
優也が脱いでいた上着を着てから千智の方を向くと千智は涙目になりながら寄りかかってきて嗚咽を漏らし始める。
「ど、どうした?」
「助けに来てくれて、ありがとう...でも、もうこんな事はやらないでね、ゆう君がどうにかなったら私...」
「千智...」
優也は嗚咽を漏らす千智の頭を撫でる、そして俯いていた顔を上に向けさせその瞳を真っ直ぐに見る。
「約束...しただろ、千智は絶対に俺が守るって、それと千智ももうあんな事しないでくれよ、約束だからな?」
「うん...」
「だから、必ず二人で生きて帰ろうな」
「うん...」
千智の白い頬に手を添えると千智は手を恭しく取りその存在を確かめる様に何度も、何度も撫でた。
頬にかかる髪をすくい上げ耳にかけるともう一度頬を撫でる。
手を頭に回し千智の頭を胸に抱く、身長が小さいからすっぽりと腕の中に収まる。
千智の体温を感じる...
凍えた体を溶かすように彼女の体温を求めて抱く腕に力を込める。
胸元を見ると上目遣いに千智は優也を見つめていた。
凍えるような場所で白く染まる吐息を吐く唇は艶かしい。
見つめあっているとふと千智は目を閉じつま先立ちをして唇を近づけてくる。
優也は重力に引かれるようにその唇に顔を近づけて行く。
そして二人の影は重なった。
暫くして落ち着いてきたら二人は移動を開始した。
勿論、優也の手にはハンマーが錬成されていて常に臨戦態勢を整えている。
かなり歩いた感覚があるが未だに魔物とは戦っていない。それどころかすれ違いもしないのだ。
何か不気味に思った二人は警戒心を高めながら奥まで歩く。
暫く歩くと大広場のようなところに出る。
その中央は何かがもりあがっていて時折寝息のような音が聞こえてくる。
「あれ、多分魔物だよな」
「だよね、起こさないように慎重に行こ?」
「ああ、慎重にな」
慎重に壁際を二人は歩く、しかしその途中で石を蹴ってしまいからん、と音を立ててしまう。
その石の音がやけに明瞭に聞こえる。盛り上がっていたものから聞こえていた寝息が止まる。
その盛り上がりが身を起こす、ぬぅぅとか音がしそうな感じで徐々にその全貌が明らかになる。
銀色に輝く美しい鱗、シャープな曲線を描く翼、力強い角、そして何処か知性を宿しているような瞳。
龍
その魔物の名を表す言葉はそれしか思い浮かばない。
龍がいたからかこの階層には魔物もいなかったのだろう。
口の端しからチロチロと炎を漏らしながらその龍は口を開ける。
食われる、と身を縮こませた二人だが予想していた衝撃は来ない。
恐る恐る顔を上げると龍はめいいっぱい翼を広げて口もめいいっぱい開けてあくびをしていた。
凄く動きが人間らしい、暫くして伸びが終わったのか前足で目をかいてからこちらに視線を向ける。
そして頭の中に直接女性らしい声が響いてくる。
『久しぶりの客人じゃのう、主ら名をなんと呼ぶ』
突然のことに呆気を取られてるとまた頭の中に声が響いて来て慌てて名前を言う。
「上木優也です!」
「や、柔風千智です!」
『うむ、珍しい名だな、しかし響きが良いの』
龍はその名前を覚えるように何度が繰り返してから優也達の方を向く。
『そんなに縮こまらなくても良いぞ、もっと気を抜け』
龍にそんな風に言われそれならと二人は気を抜く。
落ち着いてから優也は龍に名を尋ねる。すると龍は名はないと首を振るそして名案が浮かんだとばかりにおっ、と言うと。
『ならば名をつけてもらえぬか?名がないなら呼び方が不便でならんからな』
そう言われ二人は唖然とする。
それはそうだ、いきなり名をつけろというのだそれも自分よりも格上の存在に。
そうしてると龍が早くしろと催促して来る。
うーんうーんと唸ってから優也が大声で名をいう。
「リ、リユなんてどうだ!」
『ぬ、安直だがまあいい、気に入った、よしこれからは私のことはリユと呼ぶがいい』
気に入ってくれたことに肩の力を抜くとリユは優也の方に顔を向けてその口を開く。
『それで、お主に聞きたいことがあるのだが?』
「え?なに?」
リユは一泊してからゆっくりと答える。
『お主、魔従師か?』
やっと魔従師の言葉を書けたー!!!
後二人がリア充となりました!
これからは投稿のペースを4日位にします。