運命の日
テスト残り一日、何故、テストはあるのか...
薄暗いダンジョンの中、修斗はその手に持った剣、聖剣を目の前にいる狼型の魔物に振るう。
それを狼はその身を翻しながらよけその鋭い牙を修斗の喉に噛みつかんばかりに大きく開けて飛びかかる。
その牙が修斗に届きそうになった寸前石の壁が音を立てながらせり上がりその牙を防ぐ。
「ありがとう上木!」
「礼は後でいいから今は目の前に集中しろ!」
「分かってる!」
修斗は手に持った聖剣に魔力を込めてスキル、光明王の加護を発動させる。
「光明王よ、その力、今解き放ちかの敵をうち滅ぼさん、"天啓"!」
詠唱をすると聖剣はその光を一層強くする。修斗は聖剣を構え狼に走りだし、石の壁を踏み台にし跳躍する。
その過程で優也は石を狼に向けてせりださせて狼の動きを制限する。
修斗はその上段に振りかぶった聖剣を振り切り狼を真っ二つに両断する。そして聖剣に宿った光が狼の身を焼きせつだんぶぶんが焼きただれて血がたれない。
修斗は聖剣を振り切った姿勢から立ち上がり振り返ると駆け寄ってきた優也とハイタッチを交わす。
「ナイスアシスト!」
「そっちこそ最後のよかったぞ!」
優也と肩を叩き合いながらお互いを褒め合う。
今いる階層は19層、ユリウス大迷宮の最初の所でここまでならある程度の力量を持っていればこれるところだ。
しかし次からの層、20層は生半可な実力だとあっという間に狩られてしまう。
ちなみに言うとユリウス大迷宮は 全部で100層の構造をしており現在は55層までが攻略されている。
それ以降は未開の地、それに55層でも地上にいる魔物より一層強い魔物が大量に存在しておりまた、その階層にいる、ボス、現在確認されている上で最悪の魔物がそこに住んでいるらしい。
現在、優也達はその20層へ続く階段の前にいて準備を整えている。
「ゆう君、怪我ない?大丈夫?」
「大丈夫だから、ちょっと近すぎる」
千智は昨晩の誓いから優也に傷がないかと大袈裟な程に詰め寄ってくる。
優也はそんな風に近寄ってくる千智に顔を赤くさせる。周りから見たら明らかに恋人同士なので千智が好きな男子どもから嫉妬の込められた目線を向けられる。
「おうおう、ラブラブですな〜、二人とも」
そんな風にしていると横から大輔がからかうように声をかけてくる。
「本当、羨ましいよ、上木君」
麻里香も後ろから来て優也に対して羨ましげな視線を送る。
「うっせ」
「恥ずかしがっちゃって」
そっぽを向いた優也を大輔は笑いを堪えながら肩を叩いてくる。
そうしていると後ろから修斗が歩いて来る。
「次で20層になるが大丈夫か?」
「大丈夫だ、それに何かあっても千智がいてくれるからな怪我とかの心配はないよ」
「ゆう君...」
優也が隣にいる千智の頭をポフポフと叩くと千智は頬を染めて優也に少し熱のこもった視線を送る。
それを見た麻里香と大輔は。
「甘々ですな」
「甘々ですね〜」
と昼間の主婦達のような会話を繰り広げでいる。
何気無くこの二人は仲が良くそして、二人でよく優也と千智の二人をからかったりして楽しんだりしている。
本当、20層を目前に控えたような空気ではない。
ついでに言うと全員のレベルは19層まで来れるほどだから20レベは超えているので次の階層でも余裕で攻略出来るだろう。
「よし、皆、準備出来たらしいからな気を引き締めて行くぞ!」
団長が声を上げると剣を掲げて掛け声を上げる。
20層の攻略はやはり簡単に進んだ。各自やはりスペックが高いということもあり魔物達が哀れになる程簡単に屠られて行った。
反対に優也は必死に来る魔物達を倒していた。
一般人よりかはスペックが高いといっても攻撃系のスキルを持たない優也は周りの援護などしながら自分で倒しに行くがその手に持つハンマーでは20層の魔物は簡単には倒れてくれない。
「くっ!」
ハンマーを魔物に振ると俊敏によけられて手に噛みつかれる。
そこで千智の援護が入り優也の体を癒して行く。
そして魔物の体を光の輪が拘束する。
「今だよ、ゆう君!」
「ああ!」
体を固定された魔物に優也はハンマーの形状を槍に変えてから床に手をつき魔物の周囲に槍を形成してから手に持った槍を槍投げのフォームで投げ込む。
狙いたがわず槍が魔物に突き刺さるとその勢いで後ろにあった槍に魔物は体を突っ込ませて串刺しにされてその命を散らせる。
「ありがとな千智」
「これくらいどうって事ないよ!」
千智が褒めて褒めてとばかりに優也を見つめてくるのでその頭を撫でて上げる。千智はそれを嬉しそうに受け入れて幸せオーラを全身から漂わせる。
そのようなやり取りが何度かあってから一行は25層まで辿り着いた。
「もう25層か、何もなければいいんだが」
「そうだな」
そうして暫く歩いていると広間のような所に出て何やら魔法陣のような物が浮かんでいた。
その魔法陣はぼんやりと赤く輝いており明らかに怪しい。
だが馬鹿は一人は必ずいる。
「あそこ行ってみようぜ!」
そういって男子生徒が一人勝手に走り出してしまう。
それと同時に修斗に何かが語りかけてきて修斗は焦燥に駆られた顔で叫ぶ。
「やめろ!それに触れるな!」
「へっ?」
だが時すでに遅し、男子生徒はそれに手を触れてしまっている。
そして魔法陣が強く輝いたかと思うとその中心から巨大なアギトが出てきて男子生徒を噛みちぎる。
ぐちょっと生々しい音が辺りに響き渡り鮮血が飛び散り唯一残った頭部が虚しく地面に転がりそれを起点にするように周りの床が崩れ始める。
魔法陣から出て来た魔物は魔法陣からズルズルと体を引き出す。
その威容が晒される。血の赤のように輝く紅の瞳、長く蛇のような胴体に凶悪なアギト。
その蛇のような魔物はそこにいる人達を睥睨する。
まるで自分の前に現れた愚かな人間達を滅ぼさんと言わんばかりに空気が震えるほどの咆哮を上げる。
その時にはすでに周りの床は崩壊しており唯一通れるところはその魔物の後ろにしかなかった。
そして団長が呟いた言葉がやけに明瞭に響いた。
「まさか...バジリスク...」
罪なき男子生徒が一人死にました!
自分でも書いていてやってもうたと思っています!
いや、というかこの状況からどうやってクラスメイト生き残らせてついでに優也と千智をダンジョンの底に落とすか...悩みものです。
取り敢えず次の更新は多分、水曜日までには出来ると思います。