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魔獣を従えし英雄  作者: 神原 優仁
第2章
28/30

外の世界

三学期最後でいろいろとあって投稿出来ずにいました。

誠に申し訳ありません。

優也達はエレベーターが急停止したかのような感覚を覚えてから地に足をつける。

体中を包んでいた光はそれと同時に晴れて周りの景色を一望できるようにする。

そこは何処とも知れない森の中、上を見上げれば青く広がる空がある。

そう、空があるのだ。

それはここが紛れもなく外だと示すことに間違いはない。

その事に気付いた優也達は暫し顔を合わせてから喜びを噛み締めるように声を上げ始める。


「「「「「ッッッーー!」」」」」


そして、木から小鳥が飛び去った音によりその喜びが爆発する。


「「「「「外だッーー!!!」」」」」


せーの、と示し合わせたかのように同時に両手を上げると各々隣合ったものとはしゃぎ始める。

千智とリユは手を取り合いピョンピョンとジャンプして。

ユキは横にいた小柄なサキを抱えあげてその場でくるくるとし始める。

そして、優也はと言うと。


「ここが、外なんだ……」


空に浮かぶ太陽にその手をかざしていた。

手の隙間から漏れてくる太陽の眩しさにその目を薄めているがその目は嬉しさにどことなく緩んでいた。

喜びの余韻もしばしば、暫らくすると優也達はやっと落ち着きを取り戻し、現状確認を始めた。

周囲はどこを見渡しても森林が覆っている。

優也は賢者を使い場所を確認する。

すると、ここはかつて召喚されたこの世界の首都から馬車5ヵ月ほどの距離も離れたところ。

人界と魔人界の狭間に位置する大森林、フィルス大森林と判明した。


すぐそこにあった木に寄りかかって集まりながら優也達は話し合いを続ける。


「丁度いいところに出たみたいだな」

「うん、これからを考えるとまずは魔人族の人達と話さなきゃいけなかったから」


方針は決まったとばかりにその場から立ち上がろうとすると少しリユの様子がおかしいことに気づく。


「どうした、リユ」

「優也よ……」


リユは優也に顔を向けるとバジリスクを討った時のような悲しい顔を作って答える。


「この近くに……かつて魔従師達の集落だった所があるのじゃが……少し寄って行っても良いじゃろうか」


その表情は今にも泣き出しそうだった。

リユにそのような悲しそうな顔をさせてしまうのは優也としては受け入れられないが、そのことを断るわけもない。


「ああ、行こうか」

「ありがとう、優也」


そこから立ち上がると優也達はリユの案内のもと、魔従師の集落に向かうことにした。

これが外に出て初めての活動であった。







道中、多彩な魔物が現れた。

だが、迷宮から出てきた優也達にとっては赤子の手を捻るよりも容易な事であった。

現れると同時に優也はその手に持った焔剣を少し動かす、するとその魔物は瞬時に灰となり空に散っていく。

そして、辿り着いた魔従師達の集落だった場所は……


見渡す限り墓が連なっていた。


どこを見ても墓。

唯一違うと言ったら真ん中にある石碑。

そこには恐らく死体も残らなかった者達の名前を記載されているのだろう。

手入れされた様子もなくそこにある墓は全て苔むしている。

それを見たリユは顔を伏せて涙を流し始める。

それは魔従師をずっと見てきたリユが魔従師を思い、流す涙。

その隣に立った優也は懐からバジリスクの、元魔従師の灰が入った袋を取り出して石碑に向かって歩き始めた。

そして、石碑に辿り着くとその場に膝をついて手を地面に触れさせる。


「錬成」


そう呟くと地面がへこみ灰が入った袋を入れるのに適した穴が開く。

そこに灰を入れ込むと再び錬成により形を変えていきさらに文字を彫り込む。

そこにはこう書かれている。


『他者を守るがためにその身を変えた偉大なる者よ、ここに眠れ』


今、最後の1人がこの場所にたどり着き、眠りについた。

その時、墓から光が昇っていき空に消えていった、それは幻想的で美しい光景だった。

優也は立ち上がると千智達に向かって声をかける。


「これから、みんなで墓の掃除をしよう!」


それに対して千智達は異論を出さずに、むしろ率先して取り掛かり始めた。

そして、墓の掃除は始まった。

千智は光魔法の内の一つ浄化魔法を使いここに貯まり込んでいた邪気を取り除く。

ユキは氷雪操作を駆使して空中から水を集めだし雪を作る。

そして、その雪をさらに分解して水を作り出し墓を掃除し始める。

サキはそこらじゅうに生い茂る雑草を片っ端から抜いていく。

優也は涙を流し続けていたリユに近付きその肩に手をかける。

それにリユは顔を上げて優也を見つめて微笑む。


「ありがとう、優也」

「いいってことよ、仲間のためだからな」


そう言って優也はリユの頭をわしわしと少し乱暴なくらいに撫でてにかっと笑った。

それに釣られるようにリユも花が咲き誇るような笑みを浮かべる。

そして、優也とリユは墓の掃除に取り掛かり始めた。






それから2時間ほど経過した。


そこにはかつて陰惨とした雰囲気を醸し出していた墓はそこには無かった。

苔など一つもなく、死者を弔うに相応しい墓がそこにはあった。


優也達はそこからすぐ近くにある小さな丘の上に座りながら墓を見つめていた。


リユはそこにいるみんなに体を向けるとその頭を下げる。


「何度もいうようじゃが、本当に……ありがとう」

「顔を上げてくれ、リユ」


その言葉に顔を上げるとそこにはリユを見て微笑んでいる仲間がいた。


「仲間のためなんだ、当たり前だろ」

「リユの為ならこんな事何でもないよ、むしろ私からお願いするからね」

「リユの為ですからね、何でもしますっ!」

「リユお姉ちゃんが大事にしてきた人達のお墓は綺麗じゃなきゃ」


リユは心暖かい言葉を仲間達にかけられてまた涙ぐみ始める。

優也は苦笑しながらその頭を撫でてあげる。


「最近のリユは泣き虫だな」

「しょうがないじゃろう、みんなが優しいのが悪いのじゃ」

「そうか〜、ならリユの泣き虫は治らないね」

「私達はリユに優しくしないというのは無理ですからね」


その言葉にサキは首を縦に振り同意する。

するとリユは涙目になったまま指を指して宣言する。


「今に見てるのじゃな、今度は優也達を泣かしてやるのじゃ」

「こりゃ近いうちに泣かされるかもな」


優也がふざけた様に笑うとリユは起こったようにその手を振り回し始める。

それはこの中でも一番最年長のものがする動作ではないがここでは置いておこう。

こうして、外に出たその日は終わりを迎えようとしていた、が。

その静寂を破るようにその音はやって来た。

ガラガラと音を立てながら森の中を突っ切ってそれは現れた。

それは馬車だった。

後ろには積荷を乗せる台車が付いていた。

だが、それはまるで.の様な台車だった

そして、それを視界に収めた優也は顔を顰めてまるで親の敵を見るような顔でそれを睨みつけた。


「千智、少しみんなを連れて向こうに行ってくれ」

「え、でも?」

「いいから、早く」


有無を言わさぬ鬼迫に千智はたじろぎながらも森の中にその身を隠した。

千智達が見えなくなったのを確認した優也は頭を抱えながら呟く。


「この世界の人を救けたいと思ったけど、こんな救えない人もいる、よな」


その呟きは誰にも聞かれることもなく風に流され消えていった。


これで魔従師の事はある程度区切りがつきました。

優也達がこれからどうなっていくか見守って頂けると幸いです。

これからもどうか魔獣を従えし英雄を生暖かく見守って下さいm(_ _)m

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