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魔獣を従えし英雄  作者: 神原 優仁
第1章
25/30

決着

-side千智-



もう直ぐ破られそうだった光の盾の前にさらに鋼鉄の盾が広がっている。


そして私を抱え込んでいるのは"銀色の髪"をなびかせているゆう君だった。


その表情はあの一瞬で何があったのか分からないけど決意を決めた引き締まった顔。


私は一瞬息をするのも忘れてゆう君に見惚れていた。


その静寂を破るようにゆう君が口を開く。


「ごめん、俺が不甲斐ないばかりで、でも大丈夫だから、俺が千智のことを守る」


私を床に置きゆう君は体から銀色に光り輝く魔力を放出しながらその両手に持つ剣と鉄の塊に魔力を流し込む。


剣は形を変えて陽炎の様に揺らめく刃を形作っている。

そして鉄の塊はと言うとその剣を包むように広がっていて幻想的な形を作り出す。


「綺麗…」


私はその光景を作り出しているゆう君から目を離せないでいた。

そしてゆう君は私に一声かけてから私達を守るために再びバジリスクの前に身を踊り出させた。





-side優也-



意識は自分自信でも驚くほどに冷静でクリアだった。


体も驚くほど軽く羽のようだ。


後ろには千智が座り込んでいてこっちをとろんと蕩けた表情で見てくる。


「それじゃ、行ってくる」


優也はそう言って微笑むと体の全てに龍化をかけて片手に持つ"焔輝神剣"に魔力を込めて一踏みでバジリスクに斬りかかる。


『グルァア!』


それをバジリスクは鱗を飛ばすことで牽制してくるので俺は焔輝神剣の炎を広げて焼き尽くし剣から"変化の鉄"を分離して切断特化の聖剣に変化させてバジリスクの右腕を切り落とす。


右腕を切り落としたことでバジリスクは悲痛な咆哮をあげて腕を振り回しながら鱗も制御を失ったかのように荒れ狂わせる。


「あぶなっ!」


それを優也は体の周りに炎帝を展開して鱗を焼きながら後ろに下がろうとしたが暴れ狂うバジリスクの腕が俺にぶつかりそうになっていったので腹を括って受けようとすると上から聞き慣れた声が聞こえてくる。


『優也!』


そこには龍化したリユが飛んでいて優也を口で加えて安全なところまで飛んで行ってくれた。


「ありがとなリユ」

『造作もないことじゃよ、それより……』

「ああ、次で締めにするから少し離れていてくれ」

『うむ』


俺はリユに降ろしてもらってからもう一度焔輝神剣を作り出して今だに暴れてるバジリスクにその手を向ける。


「まずはその邪魔な鱗から防がしてもらう」


刹那、そこらじゅうを飛んでいた鱗は霜を垂らして停止する。

氷雪操作を使い凍らしたのだ。

しんと静まり返り鱗は音も立てず崩れさる。


「これで、終わらせる」


剣を頭上に掲げて魔力を全力で注ぎ込む、すると天井にまで届く火の柱が焔輝神剣から登り上がる。

優也を中心に火が荒れ狂う。


その炎は剣を振るうと赤い軌跡を残して空気を焦がす。


そして優也は雄叫びを上げながらバジリスクへと駆ける。

最後だと感じ取ったのかバジリスクも咆哮を上げながら全力でぶつかりに来る。


「うおぉおお!」

『グルァァアア!!!』


間合いに入り込むと優也は体を屈ませながら半回転して剣をバジリスクに突き立てる。


バジリスクは残った手でそれを弾き目をカッ!と光らせる。

光が通ったところはボロボロと石化して行く、バジリスクという名前がついてることから分かってたがやはり魔眼を使ってくるとはっ!


「くっ!」


唐突なことで対処できずに石化の魔眼を直接喰らってしまうがその前に優也の体を何か白い光が包み込む。


そして脳内に声が響いてきた。


--スキル石化耐性を得ました


石化しないことが分かった優也は剣の勢いを殺すこともなくバジリスクに剣を振るう。


--スキル剣舞を得ました


その瞬間優也の剣速が上がりバジリスクの腕を剣で弾き右足で顎を蹴り上げる、そして剣を水平にして回転の勢いで最後の腕を切り飛ばす。


野生の生き物ほど死に際は渋といと言うがバジリスクも例外ではなく、優也に腕を切り飛ばされた途端に周りにあった鱗がギュンッと音を立てて優也に襲いかかる。


しかし、それを剣の炎で焼き炎帝を展開して全てを防ぐ。


優也は剣を正面に構えて一気に踏み出す。


バジリスクは最後の力を振り絞るように鱗を収束して極太の銀色の嵐を作り出して優也にぶつける!


「くっ…舐めんなぁぁぁーー!!!」


優也がそう咆哮すると再び優也を包むように白い光が浮かび上がるがそれは形を作り出し四枚の翼をもつ純白の龍を形作る。

その光はそのまま優也の体から放たれバジリスクを滅ぼさんと迫りゆく。

その光を前にしたバジリスクはその時、目に理性を取り戻して自らに迫る破滅を受け入れるかのように目を緩ませてその光を全身に浴びて、そして塵も残さずにこの世から消え去っていった。

消え去る瞬間に優也とリユはは聞き取った。


『ありがとう……』


光も消え去り洞窟に平穏が訪れた時、優也は剣を地面に突き刺して瞑目した。



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