英雄の選定
「英雄の選定…」
優也は小さく呟く、これまでの話を聞いてきた限りではその様な単語はなかったのだがセフィラムは今、正に英雄が欲されてる状況なのだその事にも頷ける。
「もう分かってると思いですが、セフィラムは今新しい神ではありません、英雄を欲しているのです」
シャンッ
アスフィルは錫杖を床に一突きする。
すると見えたのは魔人族に襲われて殺される人、火で焼き払われる街。
あまりの恐怖に怯え震え神に祈ることしか出来ない人達。
その様な映像がコマ送りのように映し出されるのだ。
あまりにも壮絶な光景に目をそらしそうになるがその前にある光景が目に映る。
それは人族が魔人族の小さい子供を殺している光景だった。
それからは立場は逆転して人族が魔人族を襲う光景が増えていく。
親書として魔人族の者が停戦しようと呼びかけたこともあるだがそれは握り潰されその呼びかけは届くことはなく戦争は続く。
「今セフィラムは混沌を極めています、中には平和を望む者、手を取り合おうとする者もいます、けど平和を望まない者もいます」
それは今映っている光景そのものだった。
平和を望む者もいる、なのに過去の誤ちにより倒すべきは魔人族、倒すべきは人族と言うものがいる。
今は手を取り合い平和を望むべきなのだしかして現実は非常なものだ。
生まれるべき小さな命もなくなりさらには望まず生まれてきた哀れな命もいる。
それは優也も見た事があるバジリスクもいる。
「何故あなた達がセフィラムに召喚されたあの時にこれを見せなかったか疑問に思いでしょう、それはあの時の皆様、勇者様方は決意がありませんでしたその様な者達にこれを見せても受け入れることは出来ません」
これまで見てきた光景を優也は思い出す。
そして確かにそうだと頷く。
召喚されたばかりの自分達は周りに振り回されているだけの小さな存在だったのだ。
しかし優也は今は違う。
何故ならそれは…
「あなたが決意の扉を開くことができたからです」
そう優也は決意の扉を開いたのだ、それは自分の中だけの決意だとしてもその決意を曲げる事はないという事でもある。
ならばもうこの光景を見せても良いと言うことだ。
実際優也は大事な人達を守るためならばなんでもすると決めたのだ。
「その上であなたにはこの力を授けます」
アスフィルが手招きをするので優也はそれに従い近寄る。
「これは丁度いいですね」
そう言って手に取ったのはリユの魔力で作られた結晶を加工して作ったネックレスだった。
「このネックレスを通じてあなたの魔力と同調させて加護とあるスキルを与えます」
「スキル?」
「"無名の英雄"と言うスキルです、効果は武器に関するスキルが全て++になります、最初でこそ無名ですが誰かの英雄になることはできます、そして大衆に力を示した時この名は変化を遂げます」
「変化…」
「名前は私にも検討はつきませんがあなたなら素晴らしい英雄になれるでしょうね」
「買い被らないでくれよ」
「いえ、あなたならばなれますよ人々の英雄に」
アスフィルが真剣な顔でそう言うので優也は何も返せずにいた。
「それともう一つ、私の加護を与えました、効果は自分で言うのもなんですが凄いのですよ?自分に関することならばあらゆる概念を作り出すことができます、それとこれはおまけです」
手を出してくださいと言われ優也は素直に手を出すとその手の上に剣と何の変哲もない小さな鉄の塊が現れる。
「これは?」
「"永久の剣"と"変化の鉄"というものです、永久の剣はその名の通り朽ちることはありません、そして変化の鉄は常に変化を遂げる鉄です、あなたのスキル、神級武器作成と合わされば最強の剣を作り出すことができますよ」
神級武器作成と言われ優也は首を傾げたが心当たりがあったのか慌ててステータスプレートを見ると伝説級武器作成だったものが神級武器作成に変化している。
「限界を超えたのですからスキルも変わりますよ、それでは私から言えることはこれで最後なので、あとはあなたの力で守りたい人達を守ってくださいね」
景色が次第に霞んで行きアスフィルの姿も見えなくなってくる。
「あ、最後に創生神の加護を持ってればいつでも私と話が出来るのでまた来る時を楽しみにしていますね」
「へっ?ちょっまっ」
「いってらっしゃいです」
アスフィルのにこやかな笑みを最後に優也の意識は戦いに戻されて行った。
「優也さんなら英雄になれますよ」
アスフィルは優也の姿が消え白い空間で一人独り言を漏らした。
「だから、この世界を救ってくださいね」
なんか自分の書き方に疑問が出てきました
なので次の回は誰かの視点で書いてみようかなと思います。




