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魔獣を従えし英雄  作者: 神原 優仁
第1章
22/30

決意の扉

アスフィルが水面に波紋を広げながら優也にゆっくりと近づいてくる。


そして優也の手前まで来るとその手に持つ錫杖を水面に置きしゃがんでいる優也の目線に合わせる。


静かな水面の様な落ち着いた目で見つめられて自然と優也はその視線に吸い込まれそうになるがその前にアスフィルが口を開く。


「あなたは今、新たな確かなる決意を固めた事で限界を超える為の扉を開きました」

「限界を超える為の扉…?」

「そう、この世界は神と近い、この事は知ってますよね」


アスフィルは優也の手を白く細い綺麗な指で包み引っ張り優也を立たせる。


「はい、知ってます」

「ふふ、敬語は結構ですよ普通に喋って下さい」

「えーと、それでは遠慮なく…」


少し肩が張ってしまい敬語で喋るとアスフィルが微笑み普通に喋るように促してくるのでそれに従い優也は普通に喋るようにする。


「では先程の続きを」


優也と向き合いゆっくりと語り始める。


「限界を超える為の扉、その名を『決意の扉』と呼びます、決意の扉はその人の限界、つまり"レベル100"を超え決意を固めた時に扉は開かれます」


シャンッ


アスフィルが杖を一突きすると優也の前に厳重な鍵がかけられていたであろう扉が現れる。


シンプルなデザインなのだが何か感じいるものがある扉だ。


「これは優也さん、あなたの扉です」

「これが扉?」

「はい、この扉の向こうには貴方のあらゆる記憶、記録が刻まれています」


アスフィルに促されて中を覗くとこちらに来た時の記憶さらに日本に居た頃の記憶までが見える。


「この扉は本来は硬く閉ざされています、何故ならここに貴方の本来の力も封じられているのですから、そしてこの扉が開いたということは貴方は"始祖の神"に選ばれた訳でもあります」

「始祖の神?」


聞き慣れない単語に首を傾げる。


「始祖の神とはその名の通りこの世界の始まりと理を作った神です」

「アスフィルさんじゃないのか?」

「それは違います、私は創生の神であり始まりの神ではありません、そもそも私も決意の扉を開いた者ですから」

「はっ?」

「優也さんはレベルと決意の扉は何のためにあると思いますか?」

「それはその人の強さを表すためじゃないのか」

「60点です」


アスフィルの質問に答えるとニコッと笑顔で点数を言われる。


「先程言いましたよね、私も決意の扉を開いたものだと、そして決意の扉を開くための条件を」


アスフィルは教え子を諭すような口調でヒントを出してくれる。

それから優也なりうーん、と唸りながら考えて見てこれだと思う答えを言う。


「神の選定?」


何故選定と答えたかと言うとアスフィルも決意の扉を開いた者ということとまずレベルを100にすることが不可能でもあるのだ。


優也は魔従師であった事と従えた魔獣が強かったこともありレベル100になることができたが本来はこれは選定なのかもしれないのだ。


それに対してアスフィルはと言うとニッコリと笑って。


「正解です、ご褒美に何かしてあげましょうか?」


色っぽく優也の頬を撫でてくる。


アスフィルの白く綺麗な指が頬から伝うように顎を撫でてくるので優也はガッチガチに体を固める。


「えっ…えっと…?」


それに狼狽してると。


「ふふっ、優也さんは初心なのですね〜」


アスフィルが手を離してから少女の様ないたずらを成功させたという感じの笑顔を見せる。


その笑顔を見て優也は悟る。


「からかったな」

「すみません、優也さんがあまりにも無防備だったもので、つい…」


悪びれもなく言うので優也も怒る気になれずに先を促す。


「はい、つまりレベルは始祖の神が新たな神を選ぶために作られたものなのです、私も選ばれた人なのですよ」


そういうとアスフィルはどうです、凄いでしょうと言いながら子供の様に屈託無く笑う。


「じゃあ、アスフィルもレベル100を超えたのか?」

「それはこれから見せます」


アスフィルはその手に持つ錫杖をシャンッと音を立てながら床に突く。


すると周りの景色が変わり始める。


白い部屋だったところは次第に景色が変わりそして街の中の景色に変わる。


ガヤガヤと人が行き交い優也の方に子供が走ってきたので避けようとするがその前に優也に当たる。

しかしその子供は優也をすり抜け元気に走り去って行く。


「これは幻覚のようなものなのでそんなに警戒しなくてもいいですよ」


ニコッとアスフィルが微笑みながら言うのでそれを信じる。


「何故私がこのような景色を見せているか疑問に思うでしょうがこれから見せるものに意味があるのでしっかりと見ていてください」


そして景色は再び変わり教会の様な所になる。


その教会は前に見た教会と景色が同じだが何かが違う。


中心には慈愛に満ちた表情をしている像が立っているがそれは"アスフィル"とは違って別の人物だった。


「あなたは疑問に思いでしょうね、何故私ではないと…これはですね私が"神になる前の時代"なのです」


アスフィルの口から告げられた事実に優也はすでに聞いたことなのだが狼狽えてしまう。


「そしてこれは私と言う存在が神になる日でもあるのです」


再び景色は変わり今度は部屋の真ん中に複雑な魔法陣が書かれた儀式場のところに変わる。


魔法陣の真ん中には幼いアスフィルらしき少女が目を瞑り祈る様に手をきつく結んでいる。


その少女が見に纏うものは天女の羽衣と見間違うような神々しいものだ。

いや、アスフィルが着るからこそその魅力が引き出されているのだろう。


しかし、その少女はアスフィルとは違う所が一つある。


それは"髪が金色"なのだ。


今優也の目の前にいるアスフィルの髪は穢れを知らない純白のアルビノに対して魔法陣にいるアスフィルは太陽の光を表したかのような綺麗な絹の様な髪。


「私はある王族の娘でした」


優也が少女を見ているとアスフィルが語り始める。


「その時は王女として生きて王女として死ぬ、それだけだと思ってました」


アスフィルが喋ってる間も儀式場では詠唱のようなものが聞こえ続けてる。


「しかしある日神から神託がありました、生贄を捧げろと…その生贄に選ばれたのが私でした、そして私は導かれるままにこの儀式場へと連れてかれ儀式は始まりました」


今まさに目の前では魔法陣は光を増してアスフィルの姿を包んで行く。


やがてその光が辺りを染めるほどになり光が止むと魔法陣の真ん中にはアスフィルの姿はなかった。


「この儀式は生贄を捧げるものでありました、しかし神の選定でもあったのです」


再び景色は変わりさっきまで優也達がいたところと同じ決意の扉のあるところだった。


「私は生贄として全うすることを決意として固めたことでここに辿り着いて決意の扉を開き全てを知ることになりました、この世界の存在意義、生きる意味、そして始祖の神の事について」


幼いアスフィルの姿が消えアスフィルは優也と向かい合い話を続ける。


「始祖の神とはこの世界を作り、そして見守る始まりの神であり、そしてシステムなのです」

「システム?」

「そう、始祖の神は作り整えるためだけの形だけの存在なのですよ、なので創生の神である私とそしてもう一人、"破壊の神"である神が生まれました」

「ちょっと待て」

「なんですか?」

「その破壊の神って…?」

「その名の通りですよ、創生があるのですから反対に破壊もある、世界の天秤を保つ為に二人の神が存在することになる」

「じゃあこの神の選定なんてもういらないんじゃないのか?」

「これは神の選定のためではありませんよ」


優也がこれまで見てきたものを纏め答えを出すとアスフィルはそれを否定する。


「これは"英雄の選定"の為なのですよ」

アスフィルの内心


(ああ、久しぶりに人と、それも男の人と二人での話すことになりましたが可笑しい所はありませんよね?)


チラッと優也を見る


(まかさこんな短期間で決意の扉を開くなんて、というか優也さん今私に見惚れてましたよね、これはまさか…!)



小さい頃に神になったので案外心は乙女なアスフィルでした。



どんどん話は進展して行きます!

アスフィルを最初はこんなキャラにしようとは思ってなかったのですが案外書いてたら楽しく…

とまあ、これから優也には色んな変化が訪れることになるので想像して見てください。


次の投稿は自分の想像力と気が乗るかですぐに投稿するかもです。

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